5-38.【乙女たちの昇格試験:裏:実験所】
ガルドに乗って目的の場所へと到達した彰弘たちは建物内に足を踏み入れる。
その先にまっていたのは広大な地下施設であった。
「さーて、どうしようかしら?」
薄暗くなった空の下、目的の建物から少し離れたところに身を潜めたサティリアーヌが皆の顔を思案気な顔で見る。
今いる場所は大木があったり、そこそこの大きさの岩があったりで身を隠すに困ることはない。しかし、目的である建物周辺は片付けたのだろう、隠れることのできそうな遮蔽物は見当たらなかった。
「ここから見る限りだと、見張りがいるのは正面? でいいのか? まあ、あの扉の前だけのようだし、少し回り込めばあいつらの死角になってる壁まで行けそうではあるな」
「ですね。どうやら家の周りを見回ってはいないようですし」
サティリアーヌの言葉に応えるように彰弘とウェスターが口を開く。
確かに目的の建物に特殊な細工がなければ見張りがいる扉から続く直角に曲がった先の壁際を見通すことはできないだろう。
だから二人の意見にサティリアーヌ含む、この場にいる他の面々も頷く。
なお、今この場にいるのは六人と一体で、彰弘、サティリアーヌ、リーベンシャータ、マリベル、ウェスター、アカリ。そしてガルドである。
ちなみに彰弘たちをここまで案内してきた司祭は、現在この場を見張っていた仲間たちのところで待機中である。
「とりあえず、こっそりあっちの壁際まで行くのは決定、っと」
「その後、どうするかだな」
「うーん。中にも人はいるだろうし、相手に騒がれずに無力化した方が良いでしょうし……見張りは私とリタで無力化しようかしらね」
「隠密行動ができるとは知らなかった」
「できないわよ? 単純にあの程度の見張りであの距離なら私たちで大丈夫ってだけだもの」
「ああ、そいうことか」
要するに身体能力に物を言わせた力押しである。
彰弘やウェスターも見張りを無力化できないわけではないが、相手の死角から飛び出した瞬間に見つかった場合、無力化可能な距離に近づくまでに仲間を呼ばれる可能性があった。
その点、サティリアーヌとリーベンシャータは、彰弘やウェスターよりも身体能力が高く、仮に同じようなタイミングで見つかったとしても何かをやられるより先に相手を黙らせることが可能だ。
なお、残るマリベルにアカリ、そしてガルドだが、それぞれ理由があり今回の選択肢からは外れる。
マリベルは身体能力は低くないものの攻撃よりも防御に秀でているため、どうしても時間がかかってしまうので、今回のような少し離れたところにいる相手を素早く沈黙させるといった行為には向いていない。
アカリについては相手を殺しても良いというのならば、ある程度の実力を身に付けてきているため候補に挙がる。しかし、目的の相手は黒に限りなく近い灰色だが未だ完全に黒ではなく、問答無用で殺すことは躊躇われた。それ故に奇襲の候補からは外れていた。
最後のガルドだが、この場にいる面々の中で現状彰弘以外が連携するのは難しいという理由がある。一定の範囲内で身体の大きさを自由に変えられるため、見つからずに近づくことはできるし、そこから相手を無力化させることも可能だ。だが、それは相手が一人の場合であって、二人以上となるとどうしても時間がかかってしまうので誰かと連携する必要があった。サティリアーヌやリーベンシャータがある程度の期間、ガルドと一緒にいて多少なりとも意思の疎通ができれば別であったが、そうではないため、個の能力ではなく連携が難しいという理由で今回選択肢とはならなかったのである。
「さてとー。良い感じに日も暮れてきたし動きましょうか」
夕暮れ時から更に時間は進んで夜と呼ばれる時間帯になってきた。
相手に気づかれずに動くには悪くない状況である。
彰弘たちはこの数分後に行動を開始したのであった。
行動開始から少々。彰弘たちの姿は建物の中にあるリビングと思われる一室にあった。
見張りをしていた二人は簀巻きにされて床の上に転がされている。勿論、猿轡付きだ。
「良い魔導具使ってるわね」
周囲の気配を探りつつ、建物に入る前から明かりを放っていた魔導具に近づいたサティリアーヌが素直な感想を口にした。
出来の悪いものだと、明るくなったり少し暗くなったりを繰り返したり、適切な光量を出さなかったりするのだが、この建物内を照らす魔導具は程好い明るさで強弱の変化は見受けられない。ついでに言うと装飾なんかも施されており、いわゆる平民が使うような廉価版の物とは一線を画する造りの魔導具であった。
「それはそれとして、これからどうする? こいつらの話を信じるならば上はともかく、下は相当に時間がかかりそうだが」
拷問……ではなく、軽い色仕掛けであっさりと自分たちの持つ情報を口にした二人を呆れた目で見てから建物内を見回す。
程度の良い調度品が目を引く以外は普通の広さの建物だ。
「とりあえず地上部分のものを根こそぎ回収しちゃいましょうか。地下については実際に見てみないことにはね。この二人の話で何とかリュウとかって名前のやつらが関わっているのは間違いないだから……遅くても明日の昼にはリッカちゃんたちのところに向かいたいわね。グラスウェルを発った日を考えると、野盗のとこには明日の夜に襲撃をかけるだろうかし」
調べは事前に済ませていた。
六花たちのランクE昇格試験の目的地は、この場から直線距離にして五キロメートルほどの距離にある岩山の中腹である。途中には森林がありそれほど高くはないが山などもあり、できるなら明日の昼前にはこの場を発ちたいところであった。
「なら、さっそく始めるか。ああ、一つ念のために言っておくが、ものによっては俺のマジックバングルには入らないかもしれないからな」
「大丈夫。忘れてないわよ。私たちもそこそこの魔法の物入れ持ってきてるから」
「なら良い」
彰弘のマジックバングルは今現在出回っているものとでは性能に雲泥の違いがある。個数と種類の数に制限はあるが、大きさにそれはなく重量については彼が少しでも動かせれば収納することができた。
そんなマジックバングルだが、現在一般的に普及しているものに比べて明らかに劣っている部分もあった。それは誰かが所有権を明確に持っている物は収納できないというところである。
例えば、そこらの商店で売っている商品だが、一般的な魔法の物入れの場合は買うなどしなくても普通に収納することができるのだが、彰弘のマジックバングルはそれができない。
つまり、この建物内にある物を本来の持ち主が所有物として認識している場合、収納できない可能性があった。
ただ、このあたりは不明確な部分でもある。先に述べたように商店に置いてある商品は無理だが、仮にそこから盗み出された商品はどれだけ商店主が主張していたとしてもマジックバングルに収納することができるのだ。
ともかく、彰弘のマジックバングルに入らない物があるかもしれないという、情報を再認識した後、一行は建物内の探索を始めるのであった。
探索を始めてから三十分弱が経ち、彰弘たちは一階のリビングに集まっていた。
リビングにあるテーブルの上には持ち運びが可能な魔導具や本や食器などいろいろなものが山と積まれている。見るとテーブルの下や周りにも集めてきただろう物が所狭しと置かれていた。
「上は特に何もなかったわよ」
「動かせるものは残らず回収してきたけどな……って、また凄い量だな。とりあえず、箱出すからそれに入れてくれ。この量を一つ一つは面倒すぎる」
この建物の二階部分へ向かったのはサティリアーヌと彰弘――肩には当然ガルドが乗っている――で、残りは皆一階である。
一階にも二階にも、自分たちと簀巻きの二人以外の気配を感じなかったので手分けして探索していたのだ。
「じゃあ、箱詰めしながら状況報告会といきましょうか。あ、アキヒロさんはでかいの回収しつつね」
彰弘が取り出した空の箱を見てサティリアーヌが指示を出し、それに異論はないようでそれぞれ動き出す。
物の数が多過ぎると誰もが思ったからだろう。
「さて。さっきも言ったけど、上は特に目ぼしいものはなかったわね。あえて言えば、売ったら良い金額になりそうな魔導具とか調度品が結構あったくらいかしら」
「それについてはこちらも同様だ。食器なんかも一定以上の貴族が使うような高級品のみだ。外観や間取りはたいしたことないが、中の物は一級品ばかりだな」
「魔導具は分かるけど、こんなとこで使う物にそこまでお金かけるってのは理解できないわねー。ま、いいか。他に何か気づいたこととかある?」
「気づいたというか、あいつらの言葉の証明なら見つけた。奥の部屋に地下への階段があった」
「ほんとだったんだ。あまりにもあっさりと喋ったもんだから嘘かと思ってたわ」
「ああ。階段を見つけたときには、少々驚いた」
色仕掛けといっても本当に軽いものであった。
着衣のまま胸を寄せて作った谷間を近づけてみたり、司祭服のスリットを少し持ち上げてみたりしただけだ。
この程度であっさりと喋られては疑えというようなものである。
「それはそれとして……どんな感じ?」
「光源は確保されていたらから、その面では進むに問題はないだろう。人の気配だが近くにはなかった。気になる点は、奥の方に魔物らしき気配があったことか。まあ、これは実際に下りて自分で確認してくれればいい。私よりもお前の方が気配察知は得意なはずだ」
「ふーむ。回収したら早速向かいましょうか。地下室の広さも知っててくれれば、もう少しサービスしたのに」
不意に簀巻きの二人に視線を向けてそんなことを言うサティリアーヌ。
それを見た簀巻きの二人は身動き取れず猿轡の顔で心底残念そうな顔をするのであった。
「これ、とんでもなく広いんじゃねーか?」
リビングでの回収作業を終え、地下へと下りた彰弘たちの目に映ったのは、ウェスターの大剣は無理でも普通の長剣程度ならば普通に振り回せるだけの広さがある通路だった。
「広い……でしょうねえ。あの奥にちっちゃく見える扉が仮に終点だったとしても相当なもんよ。横にもいくつか扉あるしね。さて。で、リタの言うように確かに魔物っぽい気配が奥の方にあると。ついでに、その手前に何人かの人の気配か。……そういえば聞いてなかったわね。何人いるの?」
何か聞きたいことができるかもしれないと完全な簀巻き状態から、歩いて進むだけはできる状態へと拘束方法を変えた見張りだった二人も連れてきていた。
そんな二人へと組んだ腕で持ち上げた乳房を持ち上げるようにして近づきサティリアーヌが訪ねる。
ちなみに、勿論着衣状態だ。
「一人? 違う。二人? そう二人なのね。ありがと」
二本目の指を立てたところで頷いた半簀巻き状態の耳元で最後の言葉を囁いたサティリアーヌが先頭へと戻る。
そして、奥に意識を向けた。
「他には感じない、か。ええーっと、ひいふーみー……右の五つ目にいるみたいね。まずは確保しちゃいましょうか。ちなみに魔物の気配は一番奥の扉の向こうね」
奥に小さく見える扉まで真っ直ぐな通路だ。そしてその両脇には等間隔で扉が並んでおり、その内の一つをサティリアーヌは指差した。
「やれやれ」
「なに?」
「いや。少し慎みを持てと言うべきなのか、この程度ならと許容するべきなのか。未だに融合後のそのあたりがな」
「あー、そのへんはそっちとこっちよりも個人の感覚な気がするわ。私だったら旦那に知られても問題ないってところが基準ね」
「サティリアーヌの言うとおりかもしれんな。だが、僅かではあるが融合前のそちらよりもこちらの方が緩い部分はあるかもしれん」
そちらよりこちらが緩いというリーベンシャータの言葉の基に明確な理由なんてものはない。あえて言うならば、元地球より元リルヴァーナの方が多種多様な種族がいて、それぞれ倫理観などが違う。それが時の流れの中で集約し、結果的に今になったというだけの話であった。
「なかなか興味深い話ですけど、今はここを何とかしませんか?」
「確かに、この状況で長々と話す話題じゃないな」
「それもそうね。じゃあ、行きましょうか。扉は蹴破って私とリタが突入。アキヒロさんたちは万が一私たちが失敗したときのために用意してて」
意識を切り替えたサティリアーヌが次ぎの行動を示す。
特に反対意見があるわけでもなく、一行は気負うことなく人の気配がある部屋へと向かうのであった。
部屋へ突入し中の人物を無力化拘束するまでは何の問題はなかった。
問題だったのは、その部屋の中にあった各種資料の内容である。
「キメラ……ね」
「それも人種と魔物のな」
この建物で行われていたのは、人種と魔物を組み合わせて強力な戦力を造る実験であった。
初めの内は志願した仲間に対してだけ行われていた。しかし魔物との合成は激しい拒絶反応があり、元々多くなかった志願者は短い期間で全員が死亡してしまった。
だが、ここを管轄する者は実験を止めなかった。野盗や仲間を使い、街の中から言葉巧みに防壁の外へと人を連れ出し実験に使ったのである。
それでもなかなか実験が実を結ぶことはなかったが、あるとき二つのことが発覚した。それは魔物の種族ごとではなく、同じ種族でも個体ごとに人種との相性というものがあることが一つ。もう一つは少量では判別することができなかった人種と魔物の相性が、一定量以上の体液を合わせることにより高い確率で拒絶反応が少ない組み合わせを探ることができるというものだ。
そこからは順調であった。
相性を確認し、合成しても拒絶反応が少ない組み合わせを見つけ合成。それにより多くの実験体を造り出すことに成功していく。
しかし、まだ問題がないわけではない。魔物との合成は人種側の意思を極端に低下させたのである。簡単な命令なら実行可能であったが少しでも複雑になると実行できないのだ。
ここでの最終目標は強く従順で命令を遂行できる存在を造り出すこと。まだまだ実験は続けられるはずだった。
「実験の途中で俺らが来た……というわけか」
この部屋で捕らえた研究者風の二人を鋭い視線で彰弘が睨みつける。
多少、程度の差はあれ、彰弘以外の面々の顔も厳しいものがあった。そしてそれは外で見張りをしていた二人も同じである。
彼らは人種を強化する実験が行われていたこと自体は知っていたが、その内容が魔物との合成であり、非道といえるこの内容を知りはしなかったのである。
「多分。いえ、間違いなく奥の魔物の気配は、実験の結果よ」
「資料を見る限り、私たちなら殲滅は可能な強さだ。だが、万が一この資料にある数が全てクラツなどに向かった場合、相当の被害が出ることは確実だ」
実験がまだ途中であったからだろう。この部屋にあった資料によると、キメラの強さは上限がオークのロード級を多少超える程度のようであった。
どうやら、強さについては一旦保留し、手駒とするに必要な能力を持たせる実験をここ最近はしていたようである。
「私も殲滅に賛成です。この地下施設はどうやらあの岩山に繋がっているようですので」
サティリアーヌとリーベンシャータに続いて発言したマリベルが、自らが手に持っていた資料を彰弘へと手渡した。
それはこの地下施設の構造図である。
岩山が表記されているわけではないが、施設の通路が延びている方角は正しく六花たちが向かう試験場所である岩山の方角だ。そして驚くべきことに、施設は彰弘たちが足を踏み入れた建物から始まり岩山を抜けて更に一キロメートル程度先まであるらしかった。
「造ったというよりも改修して使ってたということですか」
「こんなのすぐ造れませんもんね」
厳しい顔のまま彰弘が見る資料を覗き込んだウェスターに続いて、実験内容に気分を悪くしていたアカリも構造図を見る。
実際、はっきりと描かれているのは、今いるこの付近と岩山の辺りの一部。それからその間を繋ぐ直線だけであった。
「アキヒロさん、どうする? 私もリタやマリベルの意見に賛成よ。戻せるなら別の方法を考えるのだけど」
「ああ。異論はない。あの岩山に続いているようだしな。問題はこの施設とこいつらをどうするかだ。特にこの部屋にいた奴らをだな」
見張りだった二人に関しては、まず問題はないだろう。
だがこの部屋にいた二人については、今すぐ殺してしまった方が良いのではないかとさえ思える。
「とりあえず施設に関しては大丈夫だと思うわ。封鎖の命令書が出てたみたいね」
サティリアーヌはそう言うと、封筒に三つ折で入れられていた紙を彰弘へと手渡した。
確かに封鎖することに加えて帰還の命令が出されているようだ。
「こいつらは命令を無視して、この場にいたということか」
「これは聞かないと分からないわね」
喚いてたこともあり猿轡で黙らせていたが、事実確認のために、この部屋にいた二人の内の一人の口を自由にする。
するとその者はそのとおりだと話し出した。
「何が理由かは知らんがいきなり封鎖とか言い出しやがって。あいつらの事情なんて知ったこっちゃない。こっちは実験が出来ればそれでいいんだ。纏めた資料を回収すりゃ諦めるとでも思ったんだろうが、実験に必要な知識は頭の中にあるんだよ!」
「ああ、それでこれきったない字なわけ。ま、とりあえず必要なことは聞けたし黙ってて。声聞くだけでも胸糞悪いから」
まだまだ喋りそうな雰囲気であったが、サティリアーヌは有無を言わさず猿轡を咥えさせ固定した。
「まあ、嘘ではないでしょ。で、この四人だけど、とりあえずうちの子に回収させるわ。処遇は上に任せましょ。キメラを殲滅するにしても今日のところは休むべきだし」
戦闘をしたわけではないが、今日という一日は長時間獣車で移動したり、高速で走るガルドに乗ったりと、相応に体力を消耗している事実はある。それに明るく照らされた地下にいるために忘れがちだが、今は夜中であった。
無理にこれから戦おうとしたら、思わぬ不覚をとる恐れがある。
そしてそのことは、彰弘含む皆が認識していることであった。
「そうだな。休んで明日の朝から始めるが吉か。ところで回収はどうするんだ?」
「走れば数分の距離だし、ちょっと行ってくるわ。美味しいごはん用意して待ってて」
「最高級を用意しておく」
屈伸などの準備運動をするサティリアーヌに彰弘が応える。
すると、ニッと笑った彼女は駆け足で地上に続く階段まで行き昇っていった。
「さて。サティーが戻ってくるまでにここを片付けておくか」
「ああ。料理は……その中のものか?」
「何か作る気力はないし、悲しいことに今はそれが一番美味いものが出せるからな」
「了解した」
この後、メアルリアの司祭数人を伴って戻ってきたサティリアーヌを迎え入れ、諸々を話し合い食事をした後、彰弘たちは順番に休息をとる。
安全に見える施設内であるが、見張りを立てないわけにはいかないのだ。
なお、ここで捕らえた四人を連行するためにサティリアーヌとともに来た司祭たちは、彰弘たちと一緒に食事をとった後、土産と簀巻きの四人を持たされ待機場所へと戻っていった。
時計ではなく時間を計る魔導具により、早朝と呼べる時間帯に彰弘たちは行動を開始する。
「施設のことは昨日の子たちに頼んだし問題はないはず。さあ、天に還してあげないとね」
「ああ。さて、昨日話したとおり、まずガルドを岩山付近まで様子見で先行させる。ガルドの全力なら多少の障害はあっても三十分はかからないはずだ」
「(うむ。任せよ、主よ)」
「俺らはキメラをここから順番に潰していく」
「問題はないわね。じゃあ、行動開始!」
「よし。ガルド、行け!」
「(心得た!)」
サティリアーヌが合図を出し、それを受けて彰弘がガルドを動かす。
猛烈な勢いで遠ざかっていくガルドの後を彰弘たちは進む。
本当に全てのキメラを殺すことは、総数も居場所も完全に把握できていないために不可能である。しかし、もしキメラが外に出た場合に、許容できない被害を出さないようにすることは可能であるはずだった。
要はこの周辺にいる魔物以上の強さを持つキメラを倒せばよいのだ。
彰弘たちは魔物の気配を頼りに進む。そして目の前に現れたブラックファングの足と牙を持つキメラを天に還すのであった。
お読みいただき、ありがとうございます。
サブタイトルの数字が半角だったの全角に即直ししました。