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融合した世界  作者: 安藤ふじやす
4.それぞれの三年間
100/265

4-13.

 前話あらすじ

 市民ホールの屋上で討伐した野盗たちの消却をする彰弘。

 その最中に自らの行いを謝罪するために、アカリとシズクが屋上に現れる。

 二人の謝罪も終わり、ようやくランクE昇格試験である野盗討伐は一日目を終えるのであった。




 野盗を討伐した――依頼という面では完了ではないが――日の翌日の朝、彰弘は市民ホールの四階会議室扉前で、ウェスターとともに朝食を取っていた。二人が食べているのは全て市民ホールの地下倉庫に保管されていた缶詰製品だ。缶詰に入ったパンにスープ、デザート用なのかミカンの缶詰もある。加えて、食べ合わせとしてどうなのかという、鯖のみそ煮やさんまの蒲焼の缶詰まであった。

「量を食べるには、少し面倒だな」

 缶詰のスープを飲み干した彰弘は、空となったそれをアルケミースライムの側に置くと、鯖のみそ煮に手を伸ばす。

「否定はしませんが、仕方ないのでは? あまりに大きかったら不便ですし。……それにしても本当に便利ですね、それ」

 口の中のパンを飲み込んだウェスターは彰弘に言葉を返しつつ、空となった缶詰の缶を次々と綺麗にしていくアルケミースライムに目を向けた。

 空となり、その役割を終えた缶詰だが当然再利用が可能だ。勿論、そのままでは利用価値はないに等しいが、街にある業者はそれを買取り、また缶詰や別の何かへと加工するために鋳潰し再生地金とする。

 なお、空となった金属容器は汚れたままでも業者に買い取ってもらえるが、綺麗であればその方が買い取り価格は良い。そのこともあり、彰弘は食事させることも兼ねて、アルケミースライムに空の缶詰を綺麗にさせているのである。

「便利だろ? まあ、それはいいとして、相談と頼み事ってルナルに聞いたんだが?」

 デザートとしてミカンの缶詰を完食した彰弘は、元ペットボトルだった容器に入った水を一口飲んでから、目の前で同じように水を口にするウェスターへ問いかけた。

 それを受けたウェスターは、水の容器の蓋を閉めてから口を開く。

「ええ。相談というのは、どうやってグラスウェルへ帰るか。頼みというのは、この建物にある有用そうなものを、あなたが持つ魔法の物入れに入れて、持って帰ってもらえないかということです。後半は図々しい頼みだと理解していますから、とりあえず置いておきますが、グラスウェルへの帰り方は重要です。できれば、今日中に帰れるのが望ましい」

 今、彰弘たちがいる市民ホールからグラスウェルまでの距離は四十キロメートルほどある。地面剥き出しで舗装されているわけではない場所を多く歩くことになるが、世界融合の影響で一日の長さも倍となっており、人種(ひとしゅ)の感覚や体力なども、それに合わされたため、健康な大人であれば一日で進むことができない距離というわけではない。

 だが、連れて行かなければならない人たちの中に、まだ十にも満たない子供がいる。普通に歩きで帰る場合、間違いなく途中で夜を明かす危険を冒すことになる。

 勿論、野営ができないわけではないし、事によったら今いる市民ホールよりも快適で安全な建物の中で一夜を過ごすことができる可能性はある。しかし、危険を伴う野営をしないに越したことはないし、道中快適安全な建物を見つけることができるとは限らないのだ。

 やはり今日中にグラスウェルへ着けれることが最適であった。

「そうだな。一つ確認なんだが、帰りのルートはどうするんだ? ここに来たときのように最短ルートを使うわけじゃないんだろ?」

「はい。少し距離は長くなりますが、最近整備が完了したグラスウェルとファムクリツを繋ぐ街道まで南下して、そこを使う予定です。舗装などがされていないとはいえ、地面はある程度ならされていますし、森の近くを通るよりも安全度は高い」

 彰弘は顎に手を当て僅かに視線を下にした状態で思考を巡らす。

 それから暫らくして、彰弘が顔を上げる。

「この周辺にあるかどうかは分からないが、リヤカーを使う手もある」

「リヤカー?」

「知らないか? 自転車などに引かせる荷車だ」

「自転車と荷車は記憶にありますが、リヤカーという単語は初めて聞きました」

 一瞬、和製英語だから分からなかったのかと考えた彰弘だが、それにしてはメリットやデメリット、それにアパートなんかは、以前元リルヴァーナに住んでいた人たちに、日本的な意味で通じていたと思い出し、何とも言えない微妙さを顔に表した。

 しかし、今はそんなことを気にしている場合ではないと、彰弘は言葉を続ける。

「今朝、何気なく屋上から周囲を見ていて気が付いたんだが、この辺りはグラスウェル周辺と違い、元日本の土地にあったゴムがなくなっていない。舗装されていない道を自転車に引かせて走らせるのに不安はあるが、最悪自転車が使えなくても、野盗とそれに協力してた者に荷車を引かせればいい。それでも、子供が歩くよりは速くグラスウェルに着けると思う」

「子供の数は六人。その内、成人に近いのは二人で、残りはまだ十歳未満。大きさ次第ですが、二台は欲しいところですね」

「途中で故障した場合を考えると、多ければ多いほどいいな。幸いにもリヤカー程度なら、問題なく収納できる」

 彰弘は自らの左腕の腕輪へと目を向けた。

 それは、メアルリアの平穏と安らぎを司る破壊神であるアンヌから送られた、お詫びの品であるマジックバングルだ。一万種の物を各三万個まで収納できるそれは、現存する魔法の物入れとしては間違いなく最高峰である。仮にリヤカーが数百台見つかったとしても、その全てを余裕で収納可能であった。

 なお、今現在彰弘のマジックバングルに入っているものは、最初から入っていた多量の飲食類に、最初の避難先で倒したゴブリンが持っていた小剣五本。冒険者用具一式――今回用意した普通の背嚢に入れてある物と同じ――と、繰り返し使用可能な様々な大きさの魔石が計十四個。それに知人となった人たちの家にあった各種様々な物。それから昨日野盗から剥ぎ取った有用そうな武具数点である。

「帰るための方法については、こんなとこか?」

「ええ、この後で探しに行かなければなりませんが」

 グラスウェルへ帰るための方針を決めた彰弘とウェスターは、それぞれ水を一口飲んだのであった。









 さて、ここでランクE昇格試験を受けている最中の他のメンバーと、冒険者ギルド職員のタリクが、今現在何をやっているのかを簡単に説明する。

 まずウェスターに頼まれて彰弘を呼びに屋上へと上がったルナルは、そのままオーリと一緒に屋上での見張りについていた。今はまだ恋人とは言えない状態の二人であるが、その仲はとても良い。それぞれ片手に持ったパンを食べつつ、軽く談笑しながら周囲の警戒を行っていた。

 なお、屋上で見張りについているのはオーリとルナルの二人だけだ。夜の間、彰弘とオーリの二人と同じ屋上の見張り役であったシズクは、現在屋上から四階へ下りる階段の一番下の段に腰掛け、今はまだ同じパーティーである二人と無言の対話をしていた。

 シズクたち三人は異様にギスギスした空気の中で朝食の缶詰に手すら付けず、無言で至極真面目な顔をしている。

 昨日、自分を見つめ直す切っ掛けを得たシズクは、自分の気持ちが変に揺れない内に、とりあえずパーティー解散のことだけでも早く決めてしまおうと思い、そのことをアカリに相談していた。これには元々今回の試験の結果が合格になろうが不合格になろうが、パーティーを離脱しようと考えていたアカリだ、迷ううことなく賛成をする。そして早速とばかりに、今日のこのときに残る一人のパーティーメンバーであるキリトへと、その話をぶつけたのだ。

 その内容はキリトにとっては寝耳に水のことであり賛同できるものではない。当然、反対の意志を表した。だが、それに返ってきたのはシズクが今まで目を背けてきた(おり)のように心の底に溜まっていた気持ちと、アカリからの客観的な指摘である。

 キリトは二の句が継げなかった。それだけシズクとアカリの言葉は、彼にとって衝撃的だったのである。

 シズクとアカリは自分たちの伝えるべきことは伝えたので口を閉ざす。

 キリトは衝撃から立ち直ることができずに声が出せない。

 その結果、無言の三人の間に流れる空気は、異様にギスギスしたものとなっていたのである。

 そんな三人のとばっちりを受けたのは、柱に括り付けられたまま食事をしていた野盗二人と、元日本人で野盗の手助けをしていた三人だ。

 生命を拾った野盗二人は比較的まとも――野盗の中では――であった。元日本人の三人も野盗の手助けをしていたが、それは殺されるかもしれないという恐怖に負けた結果で、平時であれば普通の人と言える。

 だから会議室の扉から少し離れた屋上へ上がる階段近くの柱に括り付けられた五人は、すぐ近くで居心地の悪い空気が流れ始め耐え難くなると、何事もないような調子で朝食を食べる彰弘とウェスターへと、何とかしてくれと視線を送っていた。

 しかし、当然ながらその視線は無視される。

 そもそもの話、今するには適していないパーティー解散についてを話をしたいと言ってきたシズクとアカリに、野盗たちに聞かれても問題ないと判断したウェスターが五人の監視を条件に許可したのだ。

 事情を知らないならまだしも、ウェスターが野盗たちの懇願を聞き入れるわけがない。

 ちなみに、彰弘は自分と一緒に四階に下りたシズクに事情を聞いていたので、彼も野盗二人と元日本人三人のことは無視である。

 さて、最後になったが彰弘とウェスターの近くにある扉の向こう側、野盗に捕らわれていた人たちと冒険者ギルドの職員で今回のランクE昇格試験の試験官であるタリクはどうなっているかと言うと、別段語ることがない。

 怪我をしていた男たちはルナルの魔法で癒されていたし、数日前ぶりに全員が一晩ぐっすりと眠れていた。

 加えてタリクがいる。元ランクB冒険者であった彼は実力は勿論のこと、人の不安を和らげる術を多少なりとも知っていた。

 そのお蔭で野盗に捕らわれていた人たちは、過度な緊張をすることなく朝の時間を過ごせていたのである。









 市民ホールの地下倉庫に保管されていた残り少なくなっていた物資類。一階と二階にあった椅子や机、それに調度品など。それらをマジックバングルに収めた彰弘は、ウェスターと一緒に大ホールの舞台裏へと来ていた。

 現在、彰弘とウェスターの二人は市民ホールの中にある有用そうな物を回収している最中である。

 今日中にグラスウェルへ帰りたいなどと言っておきながら余計な時間とも取れる行動をしているが、彰弘のマジックバングルのお蔭で普通の魔法の物入れに回収するよりも、ずっと早く事を終わらせることができるのだ。

 問題のない時間で犯罪でもなければ、利益となる可能性のある物を手に入れることは今の世界であれば決して忌避されるものではない。

 なお、タリクやギスギスした空気を作り出しているパーティー解散が決定した三人、それと屋上で見張りをしているオーリとルナルの二人にも、この回収のことは伝えられていた。

 タリクあたりは回収をするという行為を止めそうなものだが、回収にかかる時間は三十分程度。それにリヤカーのことも伝えられていたので、グラスウェルへ到達するには影響ないと、回収行為を止めなかったのである。

 ちなみに、今回回収された物品はグラスウェルへ帰るまでの間、救出した元日本人を護衛することになるタリクにも分配される運びだ。

 ともかく、このような流れがあり、彰弘とウェスターは回収行為をしているのであった。

「いや、助かります」

「俺にも利益があることだしな。それにしても、ここまで根こそぎだとは思わなかった」

 ウェスターの感謝に返した彰弘の言葉は事実だ。

 今、市民ホールの地下倉庫は空となっていた。一階と二階の大ホール以外の部屋の中も同様だ。建物に備え付けられているようなカウンターや戸棚などは持ち出していないが、それ以外の物は壊れていたりしなければ、ほぼ全てが彰弘のマジックバングルの中に入れられている。

「武具にしろ道具にしろ、良い物を身に着ければそれだけ生存率は上がります。そのためには何だかんだ言っても、やはり金銭は必要なんです」

「まあ、分からなくはない」

 魔石発見に関するあれこれで懐が潤って溢れている彰弘は冒険者となってからこれまで、そこまで金銭を稼ぐことを考えたことはなかった。しかし、ウェスターの言うことが分からないわけではない。

 ランクが低い冒険者の場合、大抵が余裕のない日々を過ごす。ある程度の実力となれば痛手とはならない武具の維持費も、最初の内は悩んだ末に他を節約して捻り出すものだ。彰弘のように冒険者になったばかりで維持に金銭のかからない魔剣を手に入れ、尚且つその金銭自体を大量に手に入れることができるできる人など、そうそういるものではない。

「さてと、捕らえた野盗の話ですと、ここのはずです」

 ウェスターは舞台裏を見渡した後、目的の物と思しき木製の箱が積まれた場所に歩み寄り、その内の一つの蓋を開けた。

「どうだ?」

 その彰弘の問いかけに頷いたウェスターは箱の中を物色し始める。

 見事、箱の中には野盗が溜め込んだ金銭を含む様々な戦利品が入っていたのだ。

「そこそこ、と言ったところでしょうか? 街に持ち帰ってギルドで鑑定してもらわないと正確には分からないですね。見たところ貴族が何が何でも取り戻したいといったような物はなさそうですが……とりあえず、これは箱ごとお願いします」

 彰弘は頷きつつ、マジックバングルへと言われた木箱を入れた。

 野盗などの賊が溜め込んだ物は、基本それを発見し持ち帰った者に所有権がある。しかし、中には身分が高い者が大事にしていた物などが紛れ込んでいることがあるために、大抵は一度冒険者ギルドに預け、問題がないことを確認してから分配という流れを踏む。

 ともかく、この後も彰弘とウェスターは回収を続けた。その結果、彼のマジックバングルの中には大量の物品が収納されることになったのである。









 市民ホールの側面を通る片側一車線の道路に六台のリヤカーが並んでいた。珍しいことにその内の四台が三輪車の後輪部分の間に荷を乗せる部分がある一体型だ。

 なお、今現在彰弘のマジックバングルの中には普通のリヤカーと自転車が、それぞれ五台ずつ収納されていた。道中壊れたときのための予備である。

 ちなみに、タイヤがパンクしたときの修理用具も回収済だ。

「思ったより良い物が良い状態であったな。三輪車型の三台の荷台には、とりあえず子供を二人ずつ乗せて、残る一台には須藤さんを乗せようか。普通のやつには疲れた大人が交互で乗ればいいだろ」

 十歳以下の子供でも二人合わせると、元日本の各都道府県の条例などによる積載量制限の三十キログラムを超える。しかし、世界が融合した今ではそのようなものはない。多少重かろうがリヤカーの動きに支障がなければ良いのである。

「そうしましょうか。子供が乗るリヤカーは野盗に従わなかった人にお願いしましょう」

「乗っているのが子供だからといって、逃げるとか危害を加えるとかはないだろうが、念のためにだな」

「ええ。では皆さん乗ってください。アキヒロ、この帰りはグラスウェルまで先頭をお願いします。スドウという人が乗るリヤカーと、残る野盗の一人と一緒にです」

「分かった」

 彰弘はウェスターにそう返すと、須藤を乗せた三輪リヤカーのサドルに座る野盗だった男と、徒歩で行くことになった野盗の一人を促し数メートル前へと移動した。

 それを確認し、ウェスターは次の指示を出す。

「あなたたち二人は普通のリアカーを引く自転車に乗ってください。位置はアキヒロの後ろ、子供たちが乗るリヤカーの前です。オーリとキリトは、それぞれに付いてください」

 特に文句を言うわけでもなく、野盗に従っていた二人の元日本人の男はリヤカーを前に進める。

「タリクさんは子供が乗るリヤカーの右側を、アカリとシズクは左側です。ルナルは子供たちの後ろを歩いてください。私は最後尾を行きます。大人の皆さんは、私たちが歩く中を進んでください。歩くのに疲れたら言ってください。空いているリヤカーに乗ってもらいます。何か質問のある方はいますか?」

 指示を出し終えたウェスターが最後に確認の声を出した。

 すると一番前を歩くことになった野盗が口を開く。

「なあ、今更逃げようとか何かしようとかは思わないから、この紐は外してくれねぇか? これじゃ魔物に襲われても逃げれねぇよ」

 彰弘が見据えているためか、そう言う野盗の声は少し震えていた。

 確かに何かに襲われたら逃げることは難しい状態だ。両脚は歩くに支障はないが走ることができない長さの丈夫な縄でそれぞれを繋がれていた。腰からは、両脚を繋いでいるのと同じ種類の縄が三本伸びている。一本は野盗から見てリヤカーの遠い方の手すりに結び付けられており、残る二本はそれぞれ歩くのに邪魔にならない長さをもって両腕へと伸びていた。

 ちなみに、骨折で動きの鈍い須藤も、彼を乗せた三輪リヤカーを運転する野盗も、また今は誰も乗っていないリヤカーを弾いている自転車に乗っている二人も、役割を邪魔しない程度ではあるが縄で縛られている。

「心配無用だ」

 震えた声で魔物に襲われると発言したことで元日本人を不安がらせた野盗に向かって彰弘はそう言い、笑みを浮かべた。

「ゴブリンなら百匹いても俺一人でどうとでもなる。オークにしたってそうは変わらん。ウェスターだって同じようなもんだ。それにな、そんな俺らよりも格段に強いタリクさんがいる。心配するだけ損だ。そんなこと考えるより、グラスウェルへ歩くことを考えろ」

 幾分、誇張のあるその言葉にウェスターとタリクは内心で困ったような笑みを浮かべるも、自分たちを見る元日本人へと自信のある笑みを返した。

 下手にここで萎縮でもされて動きが鈍ったら、危険を呼び込みかねない。油断や慢心は以ての外だが、多少の誇張で物事が問題なく進むならば、それは悪いことではない。

「そういうことです。では、出発します。アキヒロ!」

「了解だ! おい、行くぞ。しっかり歩けよ」

 ウェスターの合図で、まず彰弘たちが行動を開始した。

 そして、その少し後で後続も前進する。

 ウェスターは自分の前のリヤカーと人が進むのを確認すると、軽く己に気合を入れてから歩き出した。









 グラスウェルへ向かう一行は、何度かの休憩を挟みつつ順調に歩みを進めた。

 途中、魔物の姿を見かけることもなく進み続ける一行の目に、やがてグラスウェルの防壁が見えてくる。

 思わず誰かが吐き出した安堵の息に、皆の表情が僅かに緩んだ。

 ランクE昇格試験を受けていた彰弘たち七名とその試験官であるタリク、そして助け出された元日本人十八名。それから捕らえた野盗二名とそれに加担していた元日本人の三名。門を出て行ったときよりも倍以上の数となった彰弘たちは、こうして誰一人として道中怪我をすることもなく、予定通りグラスウェルの北西門を通ることができたのであった。

お読みいただき、ありがとうございます。



日を跨いでしまった。眠い。

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