1-9.
前話あらすじ
小学校に避難してきた人達は協力して校庭の倉庫へ備蓄されている物資を校舎へと運び込む。
作業が順調に進む中、屋上の見張りからゴブリン襲撃を知らせる声が響く。
彰弘達はその襲撃を何とか撃退したのだった。
日が傾き夜が訪れるまで後幾許もない、というそんな時間に昼から行われていた荷運びは終わろうとしていた。ゴブリンとの戦闘の度に作業が中断していたにも関わらず、当初の予定通りに荷運びが終わるのは避難者の努力のお陰ということか。
ともあれ、残りは後回しにしていた水などの重量のある備蓄品を校舎の四階へと運び上げれば作業は完了となる。校庭と屋上で見張りに就いている人達以外は、この日最後となる肉体労働を幾分晴れやかな顔で行っていた。
見張りをしながら作業を見ていた彰弘は疲れたような声を出した。
「なんか三十八年間生きてきて、今日が一番疲れた気がする」
「本当にお疲れ様です」
彰弘と同じ場所で見張りに就いていた山田は心底労わるように言葉をかけた。
ゴブリンの襲撃は最初の襲撃を含めて荷運びの最中に七回もあった。彰弘の疲れの原因はその七回全てで戦っていたためだ。ただそれは同じ場所で見張りについている山田も同じではないかと思うが、山田が戦ったのは彰弘の半数ほどだった。
理由は見張りのローテーションだ。
校門方向からの襲撃を二回連続で受けた後、見張りについている者同士で話し合いが行われた。それは特定の人物に負荷が重ならないように見張る場所をローテーションするというものだった。当然、校門方向以外からゴブリンが来る可能性もあったが、二回の襲撃から考えてその可能性は低いと判断された。何故ならば二回が二回とも校門方向から来ており、さらに小学校の敷地外を視野に入れた場合でもゴブリンがやって来る方角が一定だったからだ。もっと言うと彰弘が助けた桜井を追いかけていたゴブリンが現れたのも同じ方角だった。
ローテーションする間隔は負荷軽減の観点から襲撃を防ぐ毎に行うこととなった。
しかしそのローテーションから外された人物がいた。それが彰弘だ。
二回の襲撃で相対したゴブリンのほぼ全てを一撃のもと葬りさってきた彰弘は、地上で見張りに立った人達からはゴブリンを退けるという点に関しては相応の信頼を得ていた。
加えて山田がゴブリンと戦っているその姿を見た他の見張りは、自分達では一体、多くても二体を相手取るのが限界と思い込んでしまった。
そのため、彰弘を校門方面に固定する方向で話が進んだ。
その流れに山田は反論した。一回戦うのにどれだけ負担がかかるかを説いて彰弘もローテーションに組み込むべきと諭したが、他の見張りから「なら複数体相手にして凌ぎきれるのか」と言われ口を噤むしかなかった。
彰弘は反論してくれた山田へと感謝をし、半ば仕方ないと諦めて話し合いの結果を受け入れたのだった。
「ああ、山田先生もお疲れ様。先生もなんだかんだで結構戦ってたしな、疲れたんじゃないか?」
「そうですね。ただこれは肉体的というより精神的な疲れというやつでしょうか。身体自体はそれほど疲れた感じがしません。普段から身体を動かしていたからですかね?」
彰弘の言葉に答えた山田は、武器としての棒を持っていない方の手を握ったり開いたりしている。
それを見た彰弘は羨ましそうな顔をする。
「こんなことなら運動でもしておくんだった。だらけきった身体に今日の動きはきつ過ぎる」
そう言って彰弘は自分の身体へ視線を向けた。
そこには返り血に染まったシャツ越しに若干膨らんだ腹部が見て取れる。太りすぎとは言わないが、それでも太っていると言えるラインにため息をつく。
彰弘と山田がそんな話をしている間にどうやら校舎の中で行われていた作業が終わったようだ。昇降口から作業終了を告げる声が二人の耳に届いてきた。
「さて、終わったようだし戻ろうか、山田先生」
「そうしましょうか。榊さんはその格好もなんとかしなければなりませんしね」
使っている得物の差であろう。彰弘の身体前面はどす黒い赤で染まっているが、山田の方は土埃などで汚れているだけだった。
山田の指摘に再度自分の身体を見た彰弘は、身体を洗う水があるのが救いだなと、そんなことを思いながら山田と一緒に昇降口へと歩き出した。
彰弘と山田の二人が昇降口の直前まで近づいたときだった。
日中何度も響き渡った危機を告げる声が暗くなりはじめた空へと木霊した。
「校門方向! ゴブリン! 数は十一! 六人追われています!」
声が響くのと同じくして校門のところに人影が見えていた。
屋上で見張りについていた女性も緊張が切れていたのかもしれない。日中より警告を出す声が遅れていた。ただ幸いなことに、まだ十分に対処可能な距離であった。
「山田先生! 他の見張りの人達と援護を頼む。俺は先行する」
彰弘は屋上からの声に舌打ちをし校門へと振り向くと、腰からマチェットを外し両の手に持った。そして山田へとそう言うと返事を待たずに駆け出した。
我先にと彰弘のいる方へ向かって来ているのは、二十代前後に見える男三人だった。
その後ろからは少女が二人走ってきている。そしてそのすぐ後ろを少女達を守るように制服を着た警察官らしき人物が走っていた。
「足を止めるな! そのまま走れ!」
男三人を無視した彰弘は走りながら少女達へ声をかける。そしてそのまま進み校庭の中間地点よりやや昇降口側で足を止めた。
ゴブリンの数が今までにない多さだったため、一人で突っ込むのは無謀だと思ったからだ。それに今までと違い全ての個体が一様に追いかけてきているわけではない。二体は少し距離を置いてこちらに向かってきていた。さらに付け加えると距離を置いている二体の内の一体は他の個体より大柄で、手に持つ武器も粗末な棍棒ではなく金属製の剣ということが見て取れた。
「こいつら、今までと違う。油断するな!」
自分の後ろを一瞥した彰弘は、こちらへ走り寄る山田と他の見張り達へと、そう声を張り上げた。
彰弘の目の前で、先ほどまで集団で走ってきていたゴブリンが分かれた。
大柄の個体の声で二体が彰弘に向かい、残りの七体は彰弘を避けるように迂回した。
その動きに彰弘は先ほど発した自分の言葉が正しかったことを悟る。
「まず、二体!」
確認するようにそう声を発した彰弘は、自分へと向かってきたゴブリンへと左右のマチェットを一閃した。
すでに今日だけで何度もゴブリンの首を裂いてきたそれは、今回も狙い違わず首を斬り裂き二体のゴブリンに致命傷を与える。
首を斬り裂かれ倒れるゴブリンには目もくれず彰弘は次の攻撃対象を探した。
彰弘の後方では山田達が七体のゴブリンと死闘と演じていた。一対一ならば心配のない山田達だったが、今までと違い連携を取る上に自分達より数の多いゴブリンに苦戦している様子だった。
集団から遅れてこの場に到着した二体のゴブリンは何を考えているのか、少し離れたところで止まってこちらを見ているだけだった。
見ているだけなら後回しにする、と山田達の援護に向かおうとした彰弘だったが妙な悪寒を感じ駆け出そうとしていた足を止めた。
そして離れた場所で立っていたゴブリン二体に目をやった。
大柄なゴブリンのせいで彰弘の認識から外れていた、通常のゴブリンよりもさらに小柄なゴブリンが何か枝のようなものを振り上げているのが目に映った。
彰弘はその動きが理解できず、身体から腕、腕から手、そして枝へと視線を移動させる。
そして彰弘は見た。枝の先の空間に人の頭ほどの大きさの火球のようなものが浮かんでいるのを。
彰弘が身体を動かすのと小柄なゴブリンが言葉と共に枝を振り下ろしたのは同時だった。
数秒後、彰弘の立っていた場所の一メートルほど後ろの地面に『ドムッ』という音を立てて火球は激突し、そこへ焦げ後を残した。
外した小柄なゴブリンは悔しがるように地団駄を踏むが、隣の大柄なゴブリンに何かを言われ再度枝を振り上げた。
咄嗟の判断で横に跳び危機を免れた彰弘だったが、火球を放つという攻撃に思考が停滞する。そして今の状況では陥ってはいけない状態へと陥っていた。
それは恐怖だった。
小柄なゴブリンの放った火球はそれほど攻撃力があるようには見えない。しかし衣服に燃え移りでもしたら大変なことになる。仮に即消したとしても火傷は負うことは間違いないだろう。そしてそんな状態ではその後の動きに支障が出ることは明らかだった。そんな状態でゴブリンと戦えるのか? 無理なのではないだろうか。
彰弘は戦えずそして自分が殺されるかもしれないという、その恐怖に身体を硬直させていた。
彰弘が硬直していたのは僅かな時間だ。
それでも小柄なゴブリンが再度火球を創り出すまでには十分な時間であった。
「ゲルギッ、ゴブル!」
彰弘の理解できない言葉を放ち、小柄なゴブリンは枝を振り下ろした。
枝から放たれた火球は、片膝を地面に着いて硬直する彰弘の顔面を狙っていた。
火球が迫り来る数秒を長く感じていた彰弘に声が届く。
「「彰弘さん!」」
自分の名前を叫ぶ二人の少女の声が彰弘の硬直を解いた。
目前に迫った火球に対し彰弘は両腕を顔の前で交差させる。そして火球が当たる圧力を感じた瞬間、交差させた腕を左右に振り切った。
その絶妙なタイミングで振り払われた火球は火の欠片を当たりに撒き散らす。
火の欠片は彰弘にも襲い掛かったがほとんど傷を与えることはなかった。火球を受けたはずのその両腕は僅かに赤くなっているのみだ。腕がそうなった現場を見ていなければ、少し熱いお湯がかかったとしか思えない。身体に降りかかった火の欠片も傷を負わせることはできなかったようだ。ゴブリンの返り血で濡れていたそこを乾かすにとどまった。
火球に耐えた彰弘はおもむろに立ち上がると、小柄なゴブリンに対して右半身で構えた。そして腰を落し十二分に力を溜め込むと、それを一気に爆発させた。
自身を一時とはいえ蝕んだ恐怖を断ち切るように雄叫びを上げた彰弘は、五メートルは離れていたであろう小柄なゴブリンへと一度の跳躍で肉薄する。
小柄なゴブリンの左斜め前に左足を叩きつけるようにして着地した彰弘は、跳躍中に左上に振り上げていた右手のマチェットを突進の勢いと共に、狩り取るべき首へと向けて一閃した。
雄叫びを上げ、その跳躍と言うにはあまりにも速くそして低い位置を飛んできた彰弘に小柄なゴブリンは何もできずにいた。唯一動いた眼球は、倒れ行く自分の身体を映すのみであった。
小柄なゴブリンの首を断ち次の攻撃に移るため、彰弘は短く呼吸をした。
それを隙と見たか、小柄なゴブリンの首が落ちるのをただ見ていた大柄なゴブリンは奇声を発してその手に持つ剣を彰弘へと振り下ろした。
彰弘はその剣を左のマチェットで横に弾き、そして体勢を崩した大柄なゴブリンに向けて右のマチェットを叩きつける。そのまま骨まで断つかという勢いであったその刃はビキッという鈍い音と共に根元から折れてしまう。
刀身が薄い上に本来の使い方をされなかったマチェットは、先の小柄なゴブリンを屠った際にすでに限界を迎えていたのだった。
マチェットが折れたことで一瞬動きを止めた彰弘へと体勢を戻した大柄なゴブリンが横薙ぎに剣を振るった。
彰弘はその一撃を何とか身体ごと倒れ込むことで回避する。そしてそのまま一回転して起き上がった。
柄のみとなった右のマチェットを一瞥した彰弘はそれを捨て去り、左手のマチェットを右手に移し大柄なゴブリンに対しても右半身に構えた。
肩を傷つけられた大柄なゴブリンは我を失ったのか、大声を上げて真っ直ぐ彰弘に向かって剣を叩きつけにきた。
その斬撃は激しくはあったものの、フェイントも何もない単純なものであった。
彰弘は大柄なゴブリンの動きに合わせ自身の身体を右前方へと素早く移動させその斬撃を躱した。そして前のめりとなり晒された首へとマチェットを振り下ろした。
小柄なゴブリンのときとは違い、斬り裂くように振るわれたマチェットは首を切断することなかったが、その首筋から大量の血を噴出させた。
何が起こったか理解できなかったのか大柄なゴブリンは体勢を戻そうとする。しかし一瞬の内に大量の血を失った大柄なゴブリンの身体は、その意思を遂行できず自分の作った血の池に沈みこんだ。
ゴブリン二体の死亡を確認した彰弘はまだ戦いの音が聞こえるその場所へと目を向けた。
そこでは校庭で見張りについていた人達と先ほどゴブリンに追われ逃げてきていた警察官が協力して、必死の形相でゴブリンと戦っていた。
彰弘はすぐさま援護に駆けつける。
山田達に集中していたゴブリンは背後から迫る彰弘に気付かずに無防備に斬り捨てられていった。中には彰弘に気が付いたゴブリンもいたが、それらはその隙を山田達につかれて殴り殺された。
彰弘が参戦して数分、山田達と戦っていたゴブリンは全てもの言わぬ死体と成り果てていた。
暗くなり始めた校庭をゴブリンを焼き尽くす炎が照らしていた。
その炎の前で彰弘は、戦闘中に動きを止めた自分を心配する六花と紫苑に、そのときの説明をし、また言葉をかけてくれたことへの感謝の言葉を述べていた。
説明といっても馬鹿正直に事実を言ってはいない。そのまま言ったら心配させるだけなのが目に見えていたからだ。だから、ただ疲れが一気に出て動けなかったとだけ説明をした。
幸い感謝の言葉で照れたように頬を染めた少女二人は、彰弘が隠した部分について気が付つかなかったようだった。
鷲塚と山田は警察官である脇谷と話をしていた。
脇谷がどういった経緯でこの避難所へ来たのか外の様子はどうだったのか、などを鷲塚が質問する形で聞いていた。
「榊さん。少々よろしいでしょうか?」
脇谷と話していた鷲塚が彰弘へと声をかけた。
少女二人と話していた彰弘は疲れの残る声でそれに答える。
「そっちはもういいのか? んじゃ、わざわざ他の人を戻してまでしたかったであろう話を聞こうか」
今この場にいるのは、彰弘と六花に紫苑、鷲塚と山田。そして山田達の戦いに途中から加わっていた脇谷の六人だけだ。
他の見張りに就いていた人と、戦闘が終わった後に駆けつけて来たその家族や知り合いは鷲塚の言葉で先に校舎へと戻っている。
鷲塚はゴブリンの後始末にはそれほど人数は必要ないからなどと、もっともらしい理由を話して戻したのだった。
「わかっていましたか」
「そりゃ誰だってちょっと考えればわかるさ。いくら後始末に人手はいらないといっても、わざわざ疲労度が高い山田先生や俺を残して他を戻したんだ。そりゃ何かあると思うだろ?」
「少々露骨でしたか。まあ、特に何も言われませんでしたし、それにもし仮に戻った人達に聞かれても問題ない内容なので良しとしましょう」
特に表情を崩すことなく鷲塚はそう言ってから話を続けた。
「さて、肝心の話なんですが、今日の戦いを経て移動に関しての意見をもう一度榊さんに聞きたかったのです」
「ん? 俺の意見は変わらないな。というより、あんな火球を撃ってくるのとか、デカいのもいることが分かったんだ。救助に来てくれるのを待つのが得策だろ」
当然だろ? と言う彰弘の言葉に鷲塚は「そうですよね」と呟いた後、わざわざ意見を聞いた理由を話した。
「実は今日の襲撃の多さに、ここにいるのは危険なんではないかと思う人達が出てきているのです。そしてその人達が移動を主張していた人達へと同調し始めたのです。ですから榊さんの意見を再度聞きたかったのですよ」
長いため息をついた彰弘は疲れたように声を出す。
「確かに八回は多いと思うが、その内の六回は屋上の声に気が付いた奴らが襲ってきていたんだぞ。実質襲撃は二回と考えていい。それで多いって何考えてるんだ、そいつらは」
山田はその言葉に頷いていたが、鷲塚は顔に疑問を浮かべていた。
彰弘が両脇の少女を見ると、その二人も疑問顔だった。
「もしかして気が付いていなかったか? 脇谷さんはともかく、他の人は気が付いてると思ってたんだが……」
鷲塚と紫苑はその場で彰弘の言葉を考え込み始めた。
だがそれは――考えるより聞いた方が早いと思ったかどうかは分からないが――早々に声を出した六花により中断される。
「どゆことなの?」
「難しいことじゃないさ、六花。最初とさっきのゴブリンはこの小学校に逃げてきた人達を追ってきていたんだが、それ以外は屋上の声に引かれて来てたんだ。証拠が残っているわけじゃないが、ゴブリンの顔の向きを見ていれば分かることさ。でなけりゃ毎回毎回、俺が先頭のゴブリンを一撃で葬れるわけがない」
彰弘の言うとおり、先ほどの襲撃を除いて彼は校庭に入ってきた先頭のゴブリンを全て一撃のもとに葬ってきた。
それは、襲撃してきたゴブリンの全てが屋上の見張りへと顔を向け、結果彰弘の前にその喉元を晒していたからだ。
彰弘はただそこへと刃を打ち込めばよかったのだ。
「そうだったのですか……。ちなみにそれは、見張りの方全員知っていることなのでしょうか?」
彰弘の答えに何かを見出したのか鷲塚が確認の声を出す。
「どうだろうな。鷲塚教頭の反応を見る限りじゃ、気が付いていないかもしれないな」
日中襲撃してきたゴブリンの数は一回に多くても五体だった。そのため彰弘ともう一人が戦っている間、残りの見張りは万が一を考え昇降口の入り口を守る位置に陣取っていた。つまり彰弘と山田以外の見張りは、昇降口付近で荷運びの指揮を執っていた鷲塚とそれほど変わらない状況であったと言ってもいい。
山田のように何回かゴブリンと交戦したのならまだしも、他の見張りは先ほどの戦闘を除くと、それぞれ一回ずつしか戦っていないのだ。
「そうですか。見張りに就いていた人が、その事実を話してくれれば襲撃が多いという内容を払拭できると思ったのですが……」
「悩んだところで仕方ないさ。俺達はできることをやるしかない。ここに残るも残らないも最終的には個人の判断だ。親と離れている子供が移動したいと言ってる場合は根気よく説得するしかないが、大人については自己責任だ、割り切るしかない。子持ちの親については、ここに来たときにも言ったが脅してでも止める方がいいだろうな」
すでに炎どころか灰さえも消え去った校庭を見ながら、彰弘は悩む鷲塚に自分の意見を伝えた。
少しの間、考えに伏していた鷲塚だが悩みを振り払うように一度頭を左右に振り顔を上げた。そして「戻りましょうか」と一言言葉を出すと校舎へ向かい歩き出した。