バトル4
「それでは次のべローン戦で戦う二人をご紹介します!まずは船に乗り隊のリーダー格である彼から!」
実況席から実況の女はチェットを指差す。
「この方、調査してわかりましたが、とにかくすごい経歴の持ち主です!本当にすごいですよ。私、正直、ここまでの方にお会いするのは初めてです!あの私の母方の祖父よりもです!もらった資料を初めは信じられなくて何回も読み直しました!この人、本当にすごいです!聞いたら驚きますよ!」
早く言えよ!そんだけハードル上げたらチェットが可哀そうだろ!
「解説のカヅワさん、どう思いますか?」
まずは言おう!カヅワさんに振る前にまずはもらった資料を読もう!お前らだけで盛り上がってんじゃねーよ!
「そうですね。私も今までいろんな方を見てきましたが、ここまでの実績を持つ人物を見たことがありません。正直、大物に遭えたショックで少し震えています……」
前ふりはもういいよ!もうわかったよ!最初に言っておく、チェット、ドンマイ。
「それでは紹介させていただきます。彼の名はチェット!」
「チェットですって!?」
観客席から女性の大きな声が聞こえる。名前だけで!?なんだ、あいつ有名なのか?いや、勇者の証の時は別に話題になってなかったし、気のせいだろう。
「彼はなんとあの有名なバイシュテン魔法学院を、ただでさえ卒業できない人が多く、早くても4年はかかると言われるところをわずか2週間で歴代最高の成績で卒業し――」
は?2週間!?4年を?しかも、歴代最高?誰が!?
魔法学院がそもそも何を指導しているのかわからんので何とも言えないが……。いや、マジで魔法学院って何を指導しているんだ?この世界では魔法は普通に使えるものなのではないのか?学校に通っていなさそうなクレサも魔法を使いこなしているし、使い方ってことはないよな?確かあの解説、バイシュテン魔法学院の創立者は魔法を学問としてとらえるとか言ってたよな?ということは上達方法を指導しているのか?いや、どう考えても魔物と戦っていた方が上達は早いけどな。それに卒業の意味がわからない。魔法の研究をしたいなら優秀な魔法使いは学院に残しておきたいはずだし……。というかそもそも何を目的に入学しているのかも……。
まあ、一番分からないのはチェットは4年かかるところを2週間で何を修めたのかってことだが……。
「さらに!魔法の属性は基本的に一人一系統ですが、なんと彼は炎、氷、雷、風の4つの属性を使いこなす世界でも例のない稀有な魔法使いです」
え?あいつ、4つとも使えるの?俺ですら初めて知ったんだけど!あいつが炎を使っているところは見たことあるけどさ!他のを使っているところ……、そういやあいつ、妖精の森で一度ザ・サンダーって叫んでいたような……。でも見たことはない。なんで今まで使わなかったんだよ!
「失礼いたしました。魔法使いではなく現在は魔法剣士ということだそうです、魔法と剣を同時に扱う魔法剣士もまた世界でもあまりいない存在です」
そうだった……。自称剣士だった……。そして、その剣の才能はまったく剣術に精通していない俺の目からでも残念な印象しかないという……。
それにしてもここに来て、まさかチェットにこんなに驚かされるは……。
「しかも!」
まだあるの!?
「つい先日ロクルルエント王国の王都にて勇者になったそうです!」
ああ、それは知っている。
「過去のどの書物を読んでも勇者になった者は一度この世界から消失し、魔物たちの洗礼を受けます!」
魔物たちの洗礼っていうのは洞窟に閉じ込められたあれのことか!?あれならこの世界から消失することなく、ここからドラゴンで一飛びのところにあるぞ。
「しかし、今、彼がここにいるということは皆さんお分かりですね。その洗礼を乗り越えたということです!勇者になることやその洗礼での苦労は私には想像つきません」
いや、苦労って……、こいつが勇者になったのは誰でも参加できるクイズ大会だし、その洗礼とやらではこいつはただ寝てただけだ……。チェットが勇者になる前からの付き合いだが、確かに俺にもこいつの苦労は想像つかないね。
しかし、チェットって肩書だけ見ると相当凄い奴なんだなー。
肩書きだけ見ると……な……。
「そんなチェットさんと戦うのは……」
なんか相手が可哀そうだな……。というかチェットのプロフィールがすごいのなら先に紹介してあげろよ……。盛り上がりづらいじゃん……。
「いや、でも彼もまたすごいですよ!」
解説者が実況の言葉を遮ってしゃべり始めた。本当にあいつ解説の仕事しないよな……。
「何と彼もまたバイシュテン魔法学院のOBです」
それはさっき当人同士でそんな話してただろ。
「彼はチェットさんほどではありませんが、1年半というかなり短期間で卒業しています」
4年を一年半か……、それは確かにすごいけども……。それ、逆にチェットの凄さが際立っちゃうわ。
「それだけではありません。彼の炎魔法は通常の倍近い範囲に攻撃が可能ということです」
炎魔法?あのライトニングイナズマで!?あの異名はどこの何をとってつけられたの?
「しかも、なんと彼はあの『神の左手人差し指』の能力を有しています」
でた、神の力!結構持っている人多いんだけど神の能力って本当にすごいのか?
「ここでは敢えて神の能力に関して解説はしませんが……。」
だから、仕事しろって!
「それだけではありません!何と頭も切れるようで魔法学と兵学で博士の学位を習得しています」
あー、それはすごいな。それにその凄さはチェットの凄さとは違うし、やっといい感じであいつの面目を保てたんじゃないか?まあ、この世界の魔法学の博士は、『魔法わっからーん』が名言になるくらいの奴だけど……。
「こんな二人の戦い!どうなるか見ものですね!」
「え~っと、ちょっと待ってください……。カヅワさん、どの資料を読まれたんですか?」
ん?なんだ?
「えっ、これだけど……」
「あ~、通りでおかしいなと思いましたよ。それ、フォルゼさんの資料ですよ。ギャロットさんのはこっちです」
なになに?どういうこと?フォルゼさんって誰?
「えっ、あっ、本当だ!あ~。これは失礼しました。先ほどのプロフィールは今回の審判しているフォルゼさんのものでした」
審判の……。
って!どんな間違いだ!
「カヅワさんが失礼しました。代わって私が。」
紹介が実況に変わる。
「先ほど勝利を収めましたNONAMEの2人目はバイシュテン魔法学院をわずか3年で卒業したという実績を持っているギャロットさんです」
3年かー、4年制の学校を3年はすごいんだろうけどさ……。もう、リアクションが取りずらいわ……。
「しかも、彼はなんと雷魔法を自在に扱うことが可能です。雷属性魔法の破壊力は中級まで使いこなすそうです」
でしょうね!あの異名で雷属性以外の魔法を使っていたらおかしいよな!中級っていうのがどのくらいすごいのかさっぱりわからないけど……。
「しかし、彼の特筆すべき点はそれだけではありません。なんとなんと!字のきれいさは天下一品!書道において師範の資格を持っています!」
確かにそれもすごいけども、なんでそれを今言っちゃったの……。その技能は今関係ないじゃん。今回全く活かせそうにないじゃん……。雷魔法がすごいで止めておけばいいものを……。
「先ほど提出していただいたメンバー表を見させていただきましたがとてもきれいな字でした。読みやすさは今までで一番ですね。解説のカヅワさんはあの字をみてどう思いました」
もうそれ以上掘り下げてやるなよ……。
「ええ。さすがは師範と言ったところでしょうか。よく書けていましたよ」
何で上から!
なんかあるじゃん。他にも戦いに関してさ!
せめて、パッと見て魔法使いには見えないガタイのよさとかさ……。
なんかすごくなさそうだが……。いや、まあ、平均的な人と比べればすごいんだろうよ……。主要戦闘員とか言ってたし……。まあ、きっと、雑魚ではないのだろう……、たぶんな……。
チェット、一応、油断はするなよ……。




