決闘1
張り付く空気、漂う緊張感……。
そんなものが全くない大会もいよいよ大詰めを迎える。
どうやら一回戦の相手は女性4人組のようだ。女性とは言っても侮れはしない。その中で一際目立つ人は俺達の誰よりも戦士に見える。鎧を身にまとってはいるが腕まわりや足腰はチェットのそれとは比べ物にならないほど太いことが見てわかる。背中に背負っている大剣は並の人間では振り回せないだろう。見た目だけで言ったらおそらく俺より強そうだ。他の3人もそこまでとは行かないが、鍛えていることは間違いない。というか魔法とか使えたら戦闘力なんて見た目では判断できないか……。
まあ、なんにせよ、俺は相手が女だろうと子供だろうと関係なく3位になるために全力を尽くすだけだ。これに勝つとベスト4になるのか、ベスト8になるのかはわからんが、いずれにせよ初戦は勝たなくてはならない。アルメナスの悲劇とやらがどんな方式なのか知らんが戦いにおいてわざと以外で俺が負けることは決してない!
問題は……、これが1対1だということだ。
純粋な戦闘で1対1で俺が負けるわけないのはわかっているがほかの奴らは勝てるのか?4人で団体戦というのがいまいちピンとこないが3勝、少なくとも2勝は必要だ。チェットもクレサは戦えはするが強いのかはわからない、アミンは見た目強そうだけど実際のところはわからん。青龍は強いけど4人組には入ってないし……。
……大丈夫か?1勝3敗で初戦敗退なんてことにならないよな?
……まあ、例えばだけど試合会場に突然隕石が落ちてきて偶然対戦相手に当たって倒れた場合は仕方ないよな……。天災は仕方ない。誰も悪くない。不可抗力だ。
誰かが戦っている間にメテオインパクトに最適な岩を探しておくか……。
「それでは代表者の方はメンバー表を3分以内に各会場の審判に提出してください!」
スピーカーから会場全体に実況者の声が響き渡る。メンバーってもう決まっているだろ……。ああ、先鋒とか大将とか決めるやつか……。
「俺が決めていいか?昔、アルメナスの悲劇方式の10コインルールの大会で優勝したことがあるからこういうの得意なんだ」
そう言うとチェットは当然のように紙とペンを取り出す。10コインルールってなんだ?今回はアルメナスの悲劇方式までは聞いたけど何とかルールは聞いてないんだが……。何かローカルルールとかあるの、これ?最初に説明してほしいんだが……。
「実績があるのなら仕方ないですわね。私が決めたかったのですけどいいですわ。今回はお譲りします」
チェットの独断専行にちょっと不満げになっていたが、クレサは割り切った表情でチェットに言った。
「ああ、任せておけ!今回もうまくいく気がしてならない」
どこから来たポジティブかは知らんが誰と当たったって俺が負けるわけないから好きにすればいい。ただ、先鋒だけはやめてほしい。ルールわかんないから……。
チェットは腕を組み、眉間にしわを寄せて考えだす。
「自分で言いだしたとはいえ実際に考えると……、これは難しい……。対戦順で勝敗が決まるとは言っても過言ではないからな……。これはどうしたものか……。うーん、迷うな……」
うるせーな!さっきの自信はどうした?早く決めろ!
メンバー表提出1分前のコールがされたときようやくチェットはようやく決めたらしい。
「まず、クレサちゃんはクリッパーやって!」
「エイムがいいです」
「クリッパーは試合結果を左右するかもしれない大事なところなんだ。考えたけどクレサちゃんが一番適任なんだよ!お願い!」
「嫌ですわ。私最初はエイムがいいですわ。それ以外はやりたくありません」
「……そっか。じゃあ、クレサちゃんはエイムな!」
「次にアミンがべローンでどうだ!」
「……べローンデスカ?」
「ちょっと待ってください、チェットさん。この街の人はアーナムがいいと思いますわ。私の勘がそう言ってますの!」
「言われればそうだね、アミンはアーナムだ!いいか?」
「いいですけど、私いまいちルールがわかっていないのですけど大丈夫デスカネ?」
「そんなに複雑じゃないから大丈夫だよ!やりながらわかると思う」
「わかりマシタ」
「よし、そして、相棒はクリッパーでいいか?」
「ええっ!クリッパーはチェットさん、べローンを旦那様にするべきですわ!」
「確かにね。じゃあ、相棒はべローンで頼む!」
……。いろいろ聞きなれない単語が飛び交っていたが結局何がどうなったって?何一つわからん!
とりあえず俺がべローンとやらでメンバーはなんだかんだですべてクレサが決めたということはわかった。
「じゃあ、これでメンバー表を出してくるわ!」
そう言ってチェットは紙に何やら書いて審判のところに持って行った。
……まったく専門用語やめろよな。でもまあ、話の流れからしてメンバー表が対戦順を決めるものであるのは間違いないはず……。そして、アーナムだのべローンだのは先鋒とか大将とかの意味があるはず……。まあ、それが何かはわからないが……。というか1番手、2番手とかじゃダメなの?
そして、結局俺は何番目なんだよ……。
こういう何だかよくわからずに話が進んでいく場合、俺の経験上間違いなく俺の最悪の想像の通りになる。
……先鋒か。
ルールは複雑じゃないとは言っていたけど、そんなのやってみないとわからないじゃんか……。剣道だってしないと防具を持っていれば試合になるわけじゃないし、柔道なんて背中がついているかで勝敗を分けるなんて分かりっこない。
というかさっきは理解も推測もできない専門用語に思考が止まってしまったが、アミン、ルールわかってねーのかよ!いや分からないのはいいんだが、なんで説明しねぇんだ、チェット!
不親切な奴だな!なんでこんなやつらしかいないんだ……。
いや、ネガティブになるな俺。まずは観察だ。対戦相手が何をしようとしているかを見極めて同じことをすればいいんだ。どんなことになってもまずは慌てないこと……。
「それではメンバー表が揃いましたのでチームああああ対船に乗り隊の試合を行います!」
両手を天にかざして審判が叫ぶ。
どうなってんだ、チーム名!
なんだよ、チームああああって!やる気ないなら出んな!
船乗り隊は即刻帰れ!
というか俺はどっちかの所属なんだよな!
ダサい……。恥ずかしい……。
……さっそく乱されてるな。落ち着け、俺。
「それでは両チームのアーナムは前へ!」
では行くか。
「おい、相棒、どこ行くんだ?べローンは次だぞ!」
というチェットの声でふと気づく。
……ん!?俺、先鋒じゃねぇーのかよ!
いや、乱されるな……。
いや、大会の使用を観察できるから先鋒じゃなきゃ別に乱されてもいいのか……。
いや、いいんだよな?
あれ?
俺、翻弄されまくってるな……。




