大海14
結果的にセカンドステージで他の参加者どもを一掃するという計画は叶ったのだが……、なんか腑に落ちない。俺自身が頑張ってないからか、あまりに俺に都合のいい展開だったからか、展開の内容が突飛すぎるからか……、なんにせよ、損な性格しているな、俺……。こいつらのように現状を手放しで喜べるようにならないといけないな。
チェットとクレサは船楽しかったと笑顔で語り合っている。すぐ飽きて、海にまったく興味を示さずに一人で遊んでいたくせに……。
「ここで一旦お昼休憩です。次のステージは午後から開始します」
会場内にアナウンスが流れる。これでわかるのは次のステージが始まるころは午後であるということくらいだ。
ステージを2つクリアしたのにまったく大会のことがわかっていない俺だが、やることは一つ、この大会で3位になること。3位であってそれ以上でもそれ以下でもダメだ。
そこで今後の展開について考える必要がある。
今までのステージと同様なステージはあると思うが、最後のステージではファーストステージやセカンドステージのようにそのグループの基本的な能力(?)によって大会側にふるい分けされるような内容ではなく、1位、2位、3位と順位づけされるはず……。ということは必然的に参加者同士で競わされるということになるはずだ。今残っているのはセカンドステージの開始時点で40組、そのうち俺たちが乗っていた船で脱落したの9組……。でも、それだけ落ちるような内容とは……、何とも言えない。他の船に乗っていた連中はどうだったのだろうか。俺たちの後に到着した船に乗っていた連中の降りてくる様子を見た感じだとかなり充実していそうだったが……、何にかはわからない。
わからないことを考えても仕方ない。最後のステージ以外でやることは残り3組になるまで肉体言語による交渉のみ。考慮するべきは最後のステージ。最後のステージの内容として考えられるのは、
①バトルロイヤル
②レース
③複数の競技
④クイズ大会
と言ったところか。
①バトルロイヤルは普通に考えれば海賊ならまず、最初にやれよ!って感じの内容だ。だが、まずないだろうな。このセカンドステージのかなりバトルロイヤル向きのステージでそれができない仕様となっていたのは、この世界の海賊が戦闘を必要としていないからだと考えられる。こんな大会を開いているというのに警察や警備隊のような奴らが現れる様子もなければ、セカンドステージで同乗していた参加者たちは戦闘向きとはいいがたかった。そもそもこんなふうに公で海賊を決める大会が存在している時点で根本的におかしい。このことから海賊とは略奪などはせず、ただ船に乗っている人以外の何物でもない存在だと考えられる。
それに大会運営側の立場に立ってみてもバトルロイヤルやるのは結構面倒だ。最初に会場をきれいにしましょうとか言っていたし、動けない負傷者、もしくは死者なんてものが出たら片づけが大変になるだろう。
②レースはかなり可能性が高いと思う。走るということはないだろうが船でのレースならあるのではないだろうか……。まあ、こっちには青龍もいるし、魔法で風を起こせばどんな競走にも負けないだろう。それに海賊の戦いなら妨害もクソもないはず……。そうすれば俺の独壇場だ。適当に2組残して潰し、その後チームの足を全力で引っ張る。これで3位は確実だ。それに運営の立場に立ってみても海なら後始末の心配もないし、会場も汚されることはない。問題があるとすればレースで使えそうな船が港にないということくらいだが……。もしかしたら、それを造るところから始まるとか?もしそうだったら……、まあ、他の組がつくった船を交渉して譲っていただこう、もちろん肉体言語で交渉する。
③これからさらに複数の競技を行ってその時の順位でポイントを割り振るということも……。これならこの大会が4人組というか複数人によるグループ制である意味も分かる。一人一つの種目に参加してその総合結果で判断するということは十分にある。ただ、問題なのはその内容が全く想像つかない点だ。ファーストステージのようにフライングが可能なクソ競技なら早いうちに手を打っておきたいが……、マジで想像つかない。
④クイズ大会……。これはほぼない。本来なら……。ここで候補に挙がっていること自体わけがわからない……。本来なら……。トラウマになっているな、クイズ大会……。クイズ大会になったらそれこそ経験と勘だけだ。
……結局、次の展開を予想できない。手が打てることと言えば、このお昼休憩の間に今勝ち残っている参加者だけでも戦闘不能にしておきたいが、俺と一緒に船に乗っていたやつらは全滅だし、ほかの船に乗っていたやつは顔を見てもわからん。
八方ふさがりだ。
「おい、相棒!何難しい顔してるんだ?早く食おうぜ!これかなりうまいんだぜ!」
海に向かって仁王立ちで考え事をしていた俺にチェットが後ろから声をかけてきた。
……それもそうだな。まずは英気を養うことが……、ってなんだこれ!
振り返るとチェットはでっかい尾頭付きの船盛を食っていた。どうしたのそれ!?どこで釣ってきたんだ、これ!不意に魚の目を見る……、どうやら充血も濁ってもいないようだ……、ってこの知識、すっかりリスナーになってしまっている。この世界でリスナーしかやってこなかったからか。
「旦那様の分は最初に作っておきましたわ!」
と言ってクレサは頭の目は濁っている尾頭付きの船盛を差し出す。
「どうぞ召し上がってください。それにしてもよかったですわ、ジョニーの冒険の第78巻~ジョニー、釣りにはまるの巻、その77~で魚捌き方知っていて……。初めてなのにそんなに驚きませんでしたわ」
初巻が確か船が沈没して借金が増えただけだよな?それからずっと釣りにはまっていたの!?ジョニーの冒険ってほとんど釣りしかしてね―じゃん!冒険しろよ!とてもネタ切れで最終巻を迎えた作品とは思えないんだが……。
いや、ジョニーのことはどうでもいい。それにしてもこれをクレサが……。かなりすごいな……。癇癪持ちの情緒不安定ババアと二人暮らしだったから生きるための苦労が絶えなかったのだろう……。
促されるまま一切れ口に入れると魚特有の生臭さが口いっぱいに広がる。新鮮なら何もつけなくてもいけるのだろうが刺身なら醤油だけでも欲しいところだ。
「私が捌いた魚はどうデスカ、アイボーサン。」
って!クレサが捌いたわけじゃないんかい!
アミンが興味深そうに俺にそう尋ねてきた。
「一番最初のは旦那様にと私が誰にも取られないようにこうやって守ってましたの!」
とクレサが船盛に覆いかぶさる。だから俺のだけ目が濁っているのか。生暖かいし……。余計な真似を……。
それにしても今までの鬱屈したアミンからは想像つかないほど表情が生き生きしている。だけどどうと言われても残念ながらその質問には答えられない。とりあえず適当に親指を立てる。生臭すぎて残りを食べる気はないけどな。
「オウ、それはよかったデス。ここにきてようやく親方に弟子入りしたかいがありマシタ」
そう言うとアミンはせっせとほかの魚をさばきだした。
……親方?何の?板前?板前に弟子入りしてたのか?板前ね……。刺身の概念はジョニーの冒険の話を聞く限りではこの世界に昔からありそうだし、そう言う人がいてもおかしくない。だけど、この人、なんだか引っかかる。
「ふ~、疲れマシタ。これで終わりデス」
アミンが最後に自分の分を作ると食べ始めた。
しばらくしてアナウンスが流れる。
「現在勝ち残っている参加者の皆様に連絡です。5秒以内にステージ前にお集まりください。ファイナルステージの概要説明を始めます」
そう言って5からカウントダウンし始めた。小学校か!
というかもうファイナルステージ?
これからどうなることやら……。




