大海12
方針の変更だ!
本大会の優勝者であるバンジャローの称号……、確かなことはわからんがおそらくどこかの自治体に海賊行為を認められるということだろうが、そんなものには興味がない。というかまったく興味がないようなやつが参加している時点、根本的にこの大会は問題があるのだが、もうそれはいい。2位の公式バンジャローステッカーに至ってはもはや罰ゲーム以外の何物でもない。しかし、この世界の世界地図をもらえるというのなら、この大会で3位になることには大いに価値がある。
今更ながら勝ちに行く……、正確にはピンポイントで3位狙いだが……。
さて、これからどうするか……。勝ちに行くとなったらやはりこの時間が無駄だな……。あと数時間船に乗っている意外にやることのないこの状況を何とかしなくては……。ここで何人か脱落してもらえれば楽になる、時間的にも、味方の戦力的にも……。
だが問題はルールだ。海に落ちた人が失格だがそれが誰かに落とされた場合は逆に落とした人が失格となるこのルール……。このルールをどうにかしなくては……。
このルールでカギを握るのはやはり落ちたのか、落とされたのかを判断する係員の存在だ。
手っ取り早いのは係員をボコることだが……、まあ、何人かはかまわないだろうが周り一面が完全に海という状況で、係員なしの状態で港まで戻ることは不可能であると言っていい。サードステージに間に合わなければここで脱落者を出す予定が脱落者になってしまう。ルール説明にはなかったが、係員が船乗りの役目を果たしているというのは考えたな。
ということはやはり係員そのものへの攻撃ではなく、係員の目を欺くことが必要になってくる。
まず、考えられるのは係員の見てないところでやるってことだが……、普通に俺の超スピードならいけるのではないか?もしかしたら俺のステータス最強はこの時のために!
いや、甲板には常に数人の係員が監視していて、一人ならまだしも複数となるとなかなかに厳しい。奴らの目を引くような何かが必要となってくる……。
いや、待てよ。何も海に落とすのに甲板から落とす必要はない。俺たちは基本的に船内の移動は自由。船の底じゃなければ別に穴をあけたって航行に問題はないはずだ。穴をあけるのだって普通に俺のパワーなら特別な道具がなくてもいけるのではないか?もしかしたら俺のステータス最強はこの時のために!係員のいない船室のどこかから適当に捕まえた参加者を落とせば……、行ける!
早速、係員のいない船室を探すために船の中を歩き回る。船を歩いていると参加者は思い思いに過ごしている。その中でこのステージでは何もないとタカを括っている奴を探す。しかし、俺を除き総勢39人もの参加者が乗っているが、隙の無い奴なんて……、いなかった……。開会式前のあの殺気だった空気は何だったんだ!?これなら楽勝だな。むしろ楽勝過ぎて俺が今頑張っていることが恥ずかしいくらいだわ!
いやいや油断は禁物。サードステージがクソみたいな内容でどうしようもない結果になるかもしれない。手が打てるうちにできることをやっておかねば……。
船に穴をあけたときの音が気になるから、開けたらすぐに現場を離れなくてはならないだろう。注意点はそのくらいか……。
いや、待て。大事なことを忘れている。係員の判断基準だ。係員が海に落とされているもしくは落ちたという状況から判断するのならば参加者が海に落ちているという状況しか知らない係員は落ちている参加者を失格にするだろう。だが、突き落された奴が拾われてそいつからどうして降りたのかという問答が始まれば自発的に落ちたわけではないことがばれる。俺が犯人とばれなくても脱落しないのならば意味はない。試してみて反応を見るのもいいが……、それで警戒されて係員以外の目が監視の目となってしまうのも問題だ。俺がやったというのがばれないのはあくまでこの緩み切った空気でやったとき、警戒されている状況、もしくは仲間内で見張り合っているような状況になってはさすがに次の手も打ちにくい。
今、どいつもこいつもアホ面でいるうちにもう少し考えてみるか。
さて、どうしたものか……。
何としてもこのしょうもないセカンドステージで脱落者を出してやりたいが……。
いや、待て。落ちた奴が失格になることばかりに気がいっていたがこのルールは落ちた人が落とされた場合、落とした奴が失格となるルール……。頭が固くなりすぎていた。何も隠れてやる必要もない。俺が落とされればいいんだ。
……いや、それは無理か。
落とされる方法ならいくらでもある。すれ違いざまに肩かどっかをぶつけてそのまま海に落ちる。わざと相手の足に引っかかりそのまま海に落ちる。
だけど落ちた後、俺が俺を弁護できない。しゃべれないから……。係員に『はい』と『いいえ』で答えられるような俺にとって都合のいい問いかけをしてもらえればいいがあまりいい想像ができない。係員じゃなくても付き合いの長いあいつらが……、そっちの方がないな。というかチェットやクレサは何やってんのーとか言って笑いそうだ。そっちの想像は簡単にできる。……いや、アミンなら俺の行動の意味をわかってくれるかもしれない。あいつ、どことなく考え方がこの世界のアホな住人とは違うような気がするし……。頼もしい仲間……、泣きたくなる……。
あっ、でもやっぱダメだ。よく考えたら、海の中は冷たそうだし、俺が入るのはなし。
さてどうしたものか……。
というかこれって不慮の事故で落ちた場合はどうなるんだ?自分の足に躓いて落ちたとか、遊んでて落ちたとか……。これは失格の対象になるのか。自分の意思は介在していないが自分が原因だからなりそうな気もするが……。もっとひどい場合、例えば船が大きく揺れて海に放り出された場合はどうなる?これが本当に船適性という名目なら、船から放り出された場合適性がないと判断されて失格扱いになってもおかしくはない。ルールが曖昧で海に落ちてもどうにでも言い逃れができる以上、他者の明らかな介入がなく海に落ちた場合は有無を言わさず失格になってもおかしくはない。
……船を揺らすか!船室にいる連中はどんなに揺れても海に落ちるということはあるまい。幸か不幸か無敵ゾーンがあれば、真っ先に海に放り出されそうなチェットとクレサを守ることができる。アミンは……すぐに理解してくれるだろう。
チェットもクレサも以前として嬉々として甲板の上でそれぞれ遊んでいる。どこにもいかないでいるのは嬉しいが、まったく船室に入りそうな気がしない。俺が抱えて船室に放り込んでもいいが……、すぐに出てきてしまうだろう。俺が言葉を発することができればこんなミッション楽勝なのに……。
これもダメか……。他にも係員流れ弾作戦(本来中立であるはずの係員を投げて参加者にぶつけて落とす作戦)とか人間ビリヤード作戦(参加者を押し、押された参加者がその反動でほかの参加者にぶつかりその参加者が……と続き、玉突き事故の末に海に落とす作戦)とかいろいろ考えはあるが、落とした判定の責任の所在がどこまで及ぶのかという部分がわからないのでチャレンジするのは難しい。ここはおとなしく……。
ちょっと待てよ。俺はあまりに今を考えすぎていないか?もっと広い視野で考えろ……。
海に落ちることが失格の条件だがそれだけじゃない。例えば大会の参加継続が不可能である状態になっているとかね。海に落ちるだの、落とされるだのはあくまでセカンドステージにおける失格の条件であって、体が動かないほどボロボロならそれはもうリタイアするしかない。それはサードステージ以降に参加できないという意味では失格と同義!
そして、参加継続できなくする方法と言えば……、交渉あるのみだな。
この肉体言語によってな!




