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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
海の覇者への挑戦編
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大海7

 チェットと青龍による騒音がひと段落すると、本来の話の流れであるはずの話に戻した。

「私がこの大会を知ったのは昨日です。この街のパンっていう女性に落し物を届けに行ったときに教えてもらっただけデース。だから残念ながらこの大会の中身のことはほとんど知りまセン……。この大会に参加したかったのもお店の名前を広めるためだけデース。ごめんなさいネ」

 申し訳なさそうにアミンはそう言った。

 下心で参加したのか……。まあ、そっちの方が信用できるし、初戦で負けてもさっぱり別れられそうだ。

 大会に関して何一つわからないままだが、仕方がない。会場にあるステージでは何やら準備が整いつつある。勇者の証の時もそうだったし始まっていくうちにわかるのだろう……。


「みなさーん。お待たせしました!」

 ステージの上から拡声器を通して会場中に響き渡る。いろいろあったがようやく始まるらしい……。ステージ上のお姉さんの声を聞くとざわついていた会場が静まり返り、人々の視線がステージに集中する。

「これから記念すべき『第89回大海賊バンジャローはお前だ!選手権(大会名変更申請中)』を開始します!」

 視界の言葉と共に参加者たちが一斉に歓声を上げ、会場全体のボルテージが上がる。当然のごとく俺のゆかいな仲間たちも歓声を張り上げているのだが……、こいつらこの大会の意味わかってんのか?


 大海賊バンジャローってたしか俺が閉じ込められてた王都の牢獄の一室の先住人だろ……。かくれんぼしてたら捕まって牢屋で舌噛み切って死んだとか言う……。

 それに括弧大会名変更申請中って何?そもそもあと申請は始まる前に終えとけ!大会名を決めるのにどこかの認可が必要なの?そういうどこかの自治体が主催の大会なの?

 と言うかそもそも大会のバンジャロー選手はお前だ!ってどういうことなんだ?選手権ってどういうこと?海賊王バンジャローはお前だ!っていう競技があるの?


 全然自体が呑み込めないんだが?

 全然大会に入りこめないのだが?

 掴みの段階でさっそく使ってきやがったか、混乱魔法……。

 俺のステータス上では最強でMDFも当然のように999だが、混乱魔法に対する耐性はまったくないようだ。俺の最強はなんだかよくわからないうちに手に入れたものだが、彼らの混乱魔法の技術は長い人生経験で培ったもの。俺のにわか仕込みの最強では対応できない。混乱状態を直さなくては……、まずは情報だ。


「本大会の実況を務めるのは、生まれがロクルルエント王国の首都ユーゼン、元近衛兵長の娘で生まれたときから比較的裕福な生活を送り、特に不自由なこともなく生きてきましたが、ある日、買い物に夢中になってしまって門限を破ってしまい、途方に暮れていたところ隣の家に配達に来ていた八百屋の男に助けられ、そのまま恋に落ち、親の反対を押し切って駆け落ちした……、そんな母を持つ、八百屋の娘のキュネです!」

 どうでもいいなげぇー自己紹介だと思ってたら、お前の母親の話かよ!お前の母親がそこにいるならいいけどさ…、いや良くねーけど!そもそもお前の生い立ちもお前の母親の生い立ちもどうでもいいわ!

 早く話進めろ!

「そして、本大会でも解説を務めてくださるのは、『神羅万象は山に通ず』でお馴染みの安定感抜群で様々な現場に引っ張りだこの山の神ことカヅワさんです!」

 聞いたことねぇーし。そもそも大海賊の後継者を探すんじゃねぇの?山の神はあきらか人選ミスだろ!

「実は私、ある病気にかかっておりまして実家にいるときは大丈夫なんですけどね。ちょっと外に出る大変なんですよ。えっ?どんな病気かって?『山いい!(病)』」

 とっとと帰れ!


「どうもカヅワです。本日も経験と勘を駆使してわかりやすく説明していきたいと思います。どうぞよろしく」

 この大会の解説するんだろ?じゃあ、経歴とか紹介しろよ!しかも解説は勘も駆使するらしい……。もうお前の存在まるまるいらねぇじゃん……。


 チェットのアホは隣でげらげら笑っている。お前はどんな気持ちでこの大会に参加しようと思ったんだ?

「聞いたか、相棒!山の神なのに引っ張りだこだって!アッハハ!」

 どこにツボってんだ!お前の笑い声もなかなか不快だぞ!


 いかん、冷静になれ……。

 この世界には変な奴しかいない。

 変な奴しかいないんだ。

 残念なことだが変な奴しか……、いや、もう少し何とかならねぇのかよ……。


「この大会は私、キュネとカヅワさんでお送りしていきます。では早速ですが大会の説明をさせていただきます」

 早速じゃねぇだろ!だいぶ待たされたわ!

「そもそもこの大会の始まりは――」

 また長くなりそうだな……。

「キュネさん。それはもうみんな知っているんじゃない?」

「それもそうですね。じゃあ次に行きます」

 いや、ごめん。ざっくりでいいから説明して!


 ……。

 もう、いいよ……。

 先行けよ……。


「みんな待たされてうずうずしてきたよね。じゃあ、早速ファーストステージ行くよ!」

 ちょっと待て、ファーストステージって何?なにすんの?

「違うよ、キュネさん。次は大会に関する注意点だよ。皆さん、彼女はまだ実況者としては未熟ですので大目に見てあげてください。熟練解説者の私からのお願いです」

 ミスは仕方ないとして、そんなお願いはいらねーんだよ!普通に進行しろよ!

「そうでした。八百屋の血が流れているもので、ついせっかちに……。」

 八百屋のせいにするな!せっかち関係ないだろ。そこに逃げるなら母親じゃなくて父親の話すればよかったじゃん……。いや、いらねーけど……。


「大会に関する注意事項が5つあります。多いですがよく聞いてください。まず1つ目はお家に帰るまでが大会ですので、大会が終わっても寄り道などせず真っ直ぐ帰りましょう」

 遠足か!というかそれを開会式の一つ目の注意で言うの?

「2つ目は大会本部……、ええっと、ステージと反対側のみなさんが大会参加の受付を行ったテントですね。大会本部では海賊王バンジャローのグッズを販売しております。豊富な品揃えに加え、ここでしか手に入らない限定品もございます。荷物になると思いますので、帰る前にでも軽い気持ちでぜひ一度はお立ち寄りください」

 早速一つ目の注意事項と矛盾してるぞ。というか一つ目もそうだけど、注意ではないよね?


「さて、3つ目はトイレについてです。入口とこのステージの裏側に仮設のトイレがあります。人数も人数ですので時間帯によっては大変な混雑が予想されます。数に限りがありますのでギリギリになるまで待たずにお早めにご利用ください。あっ、大会本部のテントの裏にもありますが、あれらはすべて係員専用となっておりますので皆さんのご利用はご遠慮ください」

 いや、お前らが遠慮しろよ!


「4つ目は大会中は参加者同士の接触などによる事故が発生する危険性がありますが、事故による怪我や死者に対して大会本部は一切の責任をとりません」

 ……ん?

 ちょっと待て!


「5つ目はお家に帰るまでが大会ですので、大会が終わっても寄り道などせず真っ直ぐ帰りましょう」

 それは最初に言ってたやつだろ、なんで2回言った?むしろ2回言うべき大事なことは4つ目だろ……。


 マジかよ。

 これ死者とか出るの?

 だから参加者は妙に神妙な面持ちだったわけか……。


 こいつらはそれを知ってるの?

 皆の表情を見ると……、わかってないみたい。

「アハハ、引っ張りだこって……」

 まだ笑ってんのか?

「もうすぐ始まりますわね、青龍!なんかワクワクしてきましたわ!」

「んだんだ。オラなんが体舞い上がっちまって、宙に浮きっぱなしだべ」

 それは元からだろ。


 俺と青龍は強いから死なんだろ……。チェットは別の意味で死なないし……。心配なのはクレサだな……。狂い出すと無鉄砲に突っ込んでいくからな……。とにかくクレサから目を離さないでおかなくては……。


「ようやくこの日が来ましたカ……」

 小声でそう言うのが聞こえた。男は顔を見ると今までのおどけた雰囲気はなく、大会参加者らしい顔をしていた。

 アミン……、本当にこの大会のことを知ったのは昨日か?

 こいつ何か隠している……、職業以外にも何かを……。


 アミンが何を隠しているのか……。

 まあ、なんでもいいか。どうせファーストステージで何としても負けてやるからな。


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