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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
海の覇者への挑戦編
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大海4

 大きな門の先には市民運動会には持ってこいのただの原っぱが広がっていた。

 イベントをするためだろうか。入って右手にはテント、反対側には大きなステージがある。市民運動会にしてはかなり張り切りすぎていると言わざるを得ない。

 ステージの前に大勢の人と言うと……、あのふざけた〇×クイズの記憶がよぎる。嫌な予感しかしない。

 だが、今回は会場にいる参加者と思われる人たちからも気合がみなぎっているように見える。勇者の証のときは参加者の大部分がバフモッティブームによる記念受験みたいな雰囲気だったが今回はどうやら違うようだ。ストレッチをしている者やタオルをかぶって精神統一している者……。

 ……何かに挑むのならこのくらいの雰囲気の方が普通のはずなのに、普通の光景を見ることが救いになるなんて……。


 ただ普通とは言っても気になるのはこれが運動系の大会なのはわかるが何の大会なのかわからないということだ。サッカーの大会だったらボールを蹴っている人がいるだろうし、野球の大会ならキャッチボールや素振りをする人がいるだろう。しかし、これと言って特徴のある動きをしている人はいなさそうだ。

 何やるかわからないのに真剣な表情の人が多い。有無を言わさない緊迫した空気が広場全体に張りつめている。ここに集まっている人たちが何の目的で集まっているのか……。それが謎すぎる……。


 ……まあ、そんなのどうでもいいんだけどな!まったく関係ないし!

 そもそも俺達、大会に参加しねぇし!というか参加資格とかもないんじゃないか?


 困ったとか何とか言っていたから何かと思えばしょうもない。

 きっとこの大会で使う何かを勝手に壊しちゃったとかだったんだよな?

 大会出場のチケットとかでなければ……、だめだだめだ、ネガティブな思考は!

 悪い予感はほとんどの確率じゃなくてほとんど確実で当たるんだから。たまに予想を上回る被害を受けるし……。


 とにかく成り行きに身を任せないためにも直ちにこの場を去るのが先決だ!こんなこと考えてる前にまず行動だ!とにかくここから離れなくては!

 俺が勝手にネガティブなことを考えている間にチェットを見失った。いつの間にか人ごみに紛れてチェットたちとはぐれてしまったようだ。

 考え込んでしまうのは悪い癖だな。こんなに人が多いんじゃ探すの……、あっ、青龍いた!

 人ごみの中で青龍の巨体は明らかに浮いていた。二つの意味で……。

 なんだかんだであいつが俺たちについてきたのは誰かがはぐれたときに集合場所としての役割を果たすため、まさに今この時のためだったのかもしれないな。

 よし、もう帰っていいぞ!


 大会参加者をかき分けて青龍の見える方へ歩いていくと入口から見て右側にあったテントでチェットたちは何やら市民運動会の大会役員みたいな人と話していた。

「――もちろん可能ですよ。どうします?」

 大会役員は紙とペンをチェットの前に差し出しながらそう言った。

 何がもちろん可能なのかなんとなくわかってしまった。

 他にやらなきゃいけないことがあることをチェットもクレサもわかっていないことも……。


 役員の人から紙とペンを受け取ったチェットの表情が眩しい笑顔に変わる。周りの人たちと明らかモチベーションの質が違うのだけど……。聞くまでもなくチェットがなんていうかわかる。こいつとはそれなりの付き合いだからな……。いや、単純だからか……。

「俺はもちろん!クレサちゃんはどう?」

 チェットは屈託ない笑顔でクレサに尋ねるとクレサもまた屈託ない笑顔で

「私は出たいですわ!」

 と叫んだ。そんな元気を前面に出している人が出すような大会ではないと思うのだが……。明らか場違いだろ……。

「青龍は?」

 青龍はいいだろ!帰れ!

「オラも出てーべ」

 青龍、お前は黙ってろ!

「相棒は……、聞くまでもねーか。長い付き合いだ。何も言わなくてもわかるぜ!」

 いや、聞けよ!わかってねーよ!

「相棒から伝わる抑えきれない熱情が気持ちを隠しきれてない!やろうぜ、みんな!俺達ならきっと優勝できる!」

 聞けよ!そんな熱情ねぇよ!俺の気持ちのどこ探したんだよ!

 お前が思っている相棒は実在する相棒と異なっていますよ!


「みんなの心は一つ!参加します!」

 チェットはやる気に満ちた面持ちで受付に向き直り言った。

 結局こうなるのか……。

 もういいわ。どうにでもなれ!何の大会か未だわかんないけど……。

 多くの種目を総合点で争う運動会みたいな大会だったら厄介だが、参加者がこの人数……、1000人はかたい、これをグループ戦とはいえポイント制にしたら運営側が管理しきれないだろう。

 となるとトーナメント方式かステージごとにふるいにかけられる方式だろう。それなら、俺の頑張り次第ですぐに終わるから問題あるまい。

 2人のこの眩い笑顔がすぐに消えてしまうと思うと少し胸が痛むが……、いや、別に痛まないな。


 チェットはのほほんとした顔で受付からの説明を受けている。

「ではここに参加者のお名前をお願いします。出場資格は四人組であることですからね」

 4人組か……。……4人?えっ、何するんだろう?

「青龍はさすがにこの枠に名前書けねーだろ?俺が皆の分書いておくよ」

 俺もこの世界の文字は書けないしな。自筆のみなら大会は終了なんだがな。

「ええっと、俺だろ。それに相棒だろ」

 相棒は名前じゃねぇよ。

「あと、クレサちゃんに青龍っと」

 どうでもいいけど、青龍って名前なの?種族名じゃないの?自分のこと人って書いてるのと同じじゃない?まあ、どうでもいいけど……。

「お待ちください!」

 受付の人がチェットにストップをかける。

 あっ、やっぱり青龍は名前じゃなかった?それなら相棒の時点で止めてほしかったけども……。

「残念ながらドラゴンはペットととして扱われ、一人とは数えることができません。ですので出場なさる場合はもう一人チームに加えていただかないといけません。」

 ……ん、なんだ?参加資格を満たしてないってことか?

 チェット、ざまあみろってことか?それとも青龍、ざまあみろってことか?

 まあ、どっちにしろ、クレサドンマイ!

 今日はいい日だ!


 チェットは手を止めて振り返り、俺達みんなに問いかける。

「どうする、みんな。俺が思うにこれはもう一人を探しに行くしかないと思うんだよね?どう、みんな?」

 探すって言ったってこの町自体初めてでしょ?人脈とかないし参加したい人は参加してんじゃないのか?

「探すべきですわ!ここまで来て引き下がるなんて考えられませんわ!」

 クレサ、壺割って数百メートル歩いただけだよね?それでそこまでこの大会に思い入れあるの?

「んだな。これば参加しねーでオラのこのパッションば消化できねーべ!」

 パッションじゃねーよ。お前は帰れ!

「相棒は……、こういうときこそ燃える男だもんな、聞くだけ野暮だよな。よし、決まりだな」

 俺は諦める方に燃えてんだけどね?


 受付の人が声をかける。

「今から探しに行くのはいいですけど、参加締切はあと30分ですからね!」

 30分か……、まあ、無理だろ。参加したい人はすでに参加しているだろうし、当日の30分前に言ってもな。

「よし行こう!俺に心当たりがある」

 えっ?なんで?俺たちさっきここに来たばかりだろ?

「私も考えがありますわ!」

 クレサまで!?何をしでかす気なの、この子……。

「オラにも!……いんや、ながったわ。」

 青龍、余計な見栄張んな!


 30分の勝負、誰を妨害すれば俺はこの大会に参加しなくて済むんだ? 

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