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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
魔の森と妖精編
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魔の森11

 成り行きに身を任せるとは思ったがこれはないだろ……。

 あのふざけた64連戦を終え、こいつらとの縁は完全に切れたと思っていた。少なくとも俺は切っていた。

 それが何だ!近くの街まで乗せて行ってくれるだと!?


 いや、いいことなんだけどさ……。俺に考え付いた方法とは比べ物にならないくらい楽だし早いし確実な方法だけども……。

 なんだこの展開!


 青龍は俺とチェット、クレサの3人を背中に乗せると大空高く飛び立った。その辺の木より高ければよくねと思ったが背中ではしゃいでいるチェットのせいだろう……、青龍はぐんぐん上りそのまま雲と同じ高さまで上がる。まったく馬鹿と煙は高いところが好きとは言ったものだ……。


「いやな、俺とクレサちゃんがまた扉を抜けようと歩き出したらさ。また白虎のやつが現れたんだよ」

 乗っているだけで暇になったのか頼んでもいないのにチェットが話し始めた。青龍に乗って空高く舞い上がるとチェットが青龍の背中に乗るまでの経緯らしい。あまりにも突然だったことよりも、普段どうでもいいことばかり話すチェットが今回はちゃんと説明するということに驚いた。まあ、この悶々とした心が少しでもスッキリすればいいのだが……。


「それでな。お前たち何度ここに戻ってくれば気が済むのだ?って聞いてきたからお前がうんざりするまでさって答えたんだよ。手はこうして指差して」

 チェットが人差し指と中指を俺の方に向ける。どうでもいいわ。

「その時の白虎は面食らったような顔してたぜ。ね、クレサちゃん?」

「……さあ?」

 クレサは機嫌悪そうに雑に答える。こいつの話を聞くということがどういうことなのかクレサにもわかったのだろうか。というかクレサに話振ってないで先に進めろ!クレサは見向きもしない。どうでもいいエピソードだったのだろう。

「んだんだ。白虎のやづ、アホ面しとったべ」

 青龍、お前は入ってくんな!


 チェットが青龍に向かってさっきのように指差し頷く。いいから話進めろよ!

「それでな、相棒。そしたら、なんかごちゃごちゃ言った後いいから本当のことを言えって言われて……」

 じゃあさっきのくだりまるまるいらんわ!

 というかそのごちゃごちゃの部分教えろよ。白虎にはお前のウソを見抜く何らかの根拠があったってことだろ?

 お前が選ぶ面白ポイントはどうでもいいんだよ!


「それで外に出ると森があって気が付くとここにいるって言うとじゃあ森の外まで送ってやるってことになった」

 最後かなり雑だな!実際に俺がその場にいたら話や表情、状況からもっといろんな情報を得られたのだろうが……、今まで聞きたいことを一言も言わなかったチェットの説明ということを考えれば0からの進歩と言えるだろう。

 それでつまり話の流れをまとめると森から抜けられないことを相談したら森の外まで連れて行ってくれることになったってことか。

 いや、これまとめてねぇ。さっきの言い直しただけだ。

 それにしてもそうか……。いいな、相談って……。


「んだ。まあ、そういうことだべ。オラが代表して送っているのはオラに『神の右耳』があるからだべ。」

 『神の右耳』か……。確か現在地から一番近い街の場所がわかるんだったか……。

 確かにこいつが適任ではあるな。


 そうか、この森ともお別れか……。まだやり残したことがある。なんだか名残惜しい。この際俺の思った通りにならなかったのは仕方がない。一度切ったはずの縁でこうして物事が前に進んでいるのだ。この森にまつわる秘密も本当に必要なことならまたどこかで出会えるさ。


 自分で思っていたよりも名残惜しいのか、今はすこしセンチメンタルな気分に……、いや、ものすごく気分が悪い……。

 吐きそう……。


 青龍の奴、体をうならせながら飛ぶもんだから小刻みに何度も揺らされる。チェットの魔法移動の時とは違い体にかかる負荷はそこまで大きくはないが……、完全に酔った……。

 あー、気持ち悪いー。頭がグワングワンするし、胃の中は逆流しそう……。さらに目眩もする始末……。64連戦を超える苦行がまさかこんなところで……。


 それにしてもまだ目的地にはつかないのか?青龍の飛行速度と俺が木に登ってみた森の全容から判断できる森の大きさを考えるととっくに森を抜けているはずのなのだが……。

 不幸にもめまいがしてもはや外の景色を楽しめる状況ではない。一刻も早く不快な空の旅を終わりにしたいのだが……。

 だんだん意識が……。


「ついたべ!」

 青龍の声が聞こえる。気が付くと太陽の光を瞼に感じながら仰向けに寝そべっていた。

 どうやらどこかに降り立ったらしい。

 いや、目を開けずともどこに降り立ったかはわかる。


 チェットとクレサ、そして青龍の楽しそうな声のほかに聞き覚えのある不規則な音が耳を打つ。

 だんだん呼吸も落ちついてきてゆっくり目を開けるとそこは太陽の光が一面の水に眩しいばかりに反射している。

 熱くなった白い砂と波のせせらぎ、体に絡みつくような湿った風と磯の香り。

 俺達は海にいた。


 ……というか何で海なの?見渡す限りに街らしきものはない。

 俺のためにとりあえず休憩を挟んだとか?

 いや、それはないな。

「お、相棒!」

 俺が起きたことに気付いたチェットが遠くから声をかける。

 だって、あいつ海に入ってるし!クレサも入ってるし……。パッと見た感じ二人が青龍に泳ぎを教えているようだ。

 骨格とか違うしそもそも俺たちを送ったら穴倉生活に戻るんじゃないのか?

 絶対海を楽しんでいるだけだ!


「相棒!言い忘れてたんだけど送ってもらう代わりにこいつのお願いを聞かなきゃいけないんだよ」

 そういうことは言い忘れんなよ!大事なことじゃないのか?少なくとも白虎のアホ面よりも。

 まあ、あの洞窟から出たことなかったから羽目を外したくなったのだろう。旅行中はいつもと同じテンションを保てないの法則だな。

 当然と言えば当然か……。

 まあいいわ。付き合ってやるか。泳ぎを教えればいいのか?


「なんかさ。フジツボが見たいんだって!」

 じゃあ、遊んでないで探せよ!岩場に行けばすぐ見つかるだろ!

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