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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
魔の森と妖精編
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魔の森10

 本当に大切なことは数字では表せない。

 これは少し違うな。

 数字で表せないものにも大切なことがたくさんある。目の前の数字ばかり見て大切なことを見落としてはいけない。人は一つの物差しで測りきることはできない。大切なのは人を見ること知ること、そして、それを愛すること。


 この世界に来たころは俺は最強だということを疑うことはなかった。この世界で表すことができるすべてのステータスが最高値だし、頭だって悪くないと思っている。自由奔放妖精ファノラに最初何やかんや言われたが、聞いた感じどうとでもなる。それが俺の最初に持った印象だった。


 でも全然違った。俺の能力がいくら高くても物事はうまくいかない。それはそうだ。人は一人では生きていけないのだから。常に誰かを支え、支えられて生きている。一人で勝手に生きているわけではない。一人で勝手に大きくなるのではないのだ。


 俺自身、この世界に来る前の記憶がないからそこはなんと見えないがこの世界に来てからのわずかな期間で性格的な変化を感じる。エゴイスティックなほど理論的で効率的な考えからその中に人間らしい欲望や葛藤が生まれてきている。今の俺の変化が果たして成長なのか……。いや、変わるということはその環境下で必要なものを手に入れるということ、きっと成長しているのだろう……。



 良くも悪くもな!心の成長に現実が全く追いついてきていない。何回ここに飛ばされればいいんだ!?前に進んでいるのは俺の中だけの話で実際には問題まったく進んでいない。


 チェットがどこかでくたばりまた洞窟に戻された。ここに戻されたら試練の部屋につながる扉を開けて数キロ歩くだけ。ただそれだけ。何もしないでただ歩くということがどれだけ苦痛かわかるか!?なあ!チェット!


「ここは……。なんだか懐かしい場所だな。」

 そうだな、もう、なんだか逆に落ち着くな。

「あー!」

 クレサの大きな声が洞窟内に響く。

「ここなら、魔法使えますわ!お食事にします?」

 クレサが氷塊を出して遊んでいる。

 というか飯はさっき食ったじゃん……。


「そうだな……。クレサちゃん、そうしよう!」

 さっき食ったじゃん!!!

 チェットの頭と胃袋には何も蓄積しないらしい。

「あら、そう言えばここには食材がありませんわ。」

 クレサが辺りを見回しながらそう言うと

「あっ!」

というチェットの事態を察した声の後二人は声をそろえて笑った。

 お前ら俺がいて本当によかったな!


 気にしたら負け。俺は何も言わず出口に向かって歩き出した。


 さてと、あの森から出る方法だが……。

 おそらくだが、本来はあの森が魔法を封じたりトラップを仕掛けていたりするのは、この洞窟みたいな勇者関連のことを世間から隠すためだと考えられる。よって本来は侵入者を撃退するためのもの……。出て行こうとする人をこの洞窟に引き留めるためのトラップではないはずだ。それにかかってしまうあたりが……。


 どうしたものか……。そう言えば妖精がいたときは道の上を歩かなかったよな。ということは道自体も参考にはならないとみて間違いないだろう。霧がかかっていて太陽の位置もよくわからない。時間もわからないから方角もわからない。現在位置を知るため、進行方向を決めるため手がかりが何もない。


 現状を打破するためにはどうしてもこの森を知る必要がある。森の中に入ると霧やらでどこを歩いているのかわからなくなる。自分の勘ほどあてにしてはいけないものはない。俺自体は多分トラップに引っかかっても死にはしないだろう。つまり俺がある程度先行して状況を確認しそれに沿って奴らを導くことができればこの森から脱出でき……。

 ……あれ?もしかして今チャンスなんじゃね?

 後ろから来ているであろう二人より先に行ってある程度下見できれば……。

 いや、森を抜けるための方向がわからん。

 いや、今まで考えていなかったが高いところに上って見れば森全体の様子がわかるかもしれない。霧が深いとは言ってもその霧が高さ数十メートルもあるというのも考えにくい。そうと決まれば善は急げだ!


 俺はもうすでに何度も通った道を全力で走り出した。あっという間にチェットとクレサの姿は見えなくなる。

 それにしてもこのハイスペックステータスは戦闘とまったく関係ないところでしか発揮されていないような……。

 1分とかからずに出口に着く。世界記録保持者でもこのタイムは出せまい!あいつらがここまで来るのに走っても30分。歩いて来たら1時間はあるだろう。結構な余裕がある。とりあえず近くの木に登り、それよりも高い木があったらそっちに飛び移って一番高い木に登る。


 木の天辺まで行くと森全体を覆っている霧もはれ遠くの方まではっきりと見える。見たところ近くは青々とした木々が辺りを埋め尽くしている。森は結構広大なようで、直線距離で歩いても森を抜けるのには相当かかりそうだ。俺から見て右の方にはなんで今まで気づかなかったんだというほどの断崖絶壁の山が見える。見た感じ壁と言っても差支えないほどの急こう配で、その頂上は雲に隠れている。俺一人なら好奇心から登りたくなるところだがきっとあの二人がついてこれない。登っている間に例の光に包まれるのがオチだ。

 森の中に入ると自分がどこに向かっているのかわからなくなるものだが、あの山が逆にいい目印になりそうだ。俺の左側には幸い緑しか見えない。時折木に登り山の位置を確認しながらその反対方向に進めばいいということだ。後は森の中を歩いているときにトラップさえ気を付けていれば……。

 森さえ抜ければチェットの魔法でどこでも一飛びだからな。


 ……あれ?何か引っかかったぞ。

 この森は何が原因で魔法が封じられているのだ?

 ここで魔法を封じているその媒体ってなんだ?魔法を封じる魔法……。それは考えにくい。何せ環境に作用しているのだから。自分自身も封じられることになるのではないか?パラドックスと言うやつだろう。

 ということはアイテムか?例の祠みたいな……。魔法を封じることができるなんてこの世界でかなり強力なことじゃないのか?

 それがわかれば魔法という概念ももっと理解できるのではないか?


 あー、逆にこの森にもっといたくなってきちゃった。

 うーん、迷う……。俺はどうするべきか……。

 迷いの森にでようやく迷い始めたな。


 いや、迷うことはない。

 調査一択だ!


 だが問題は俺一人で進んだらすぐに光に包まれて振り出しに戻ることになることだろう。と言うことはあいつらがいきたい方向と魔封じの原因がわかればそこを調べるしかないな。見つかる前に森を抜けちゃったら……、まあ、その時はチェットに……。

 わくわくしてきたぞ!


「おーい!相棒―!」

 下の方からチェットの声が聞こえる。どうやら入口に着いたらしい。思っていたよりかなり早いがそんなことはもういいわ。さてこれからどうなることやら……。

 さっと木を降りると

「あっ、いたいた。」

 と言ってチェットが駆け寄っ――

「ごれで全員だべか?したらばオラの背中さ乗るといいべ」

 そこには四神の一人である青龍がいてその背中にクレサが嬉々として乗っかっている。

「なんかこいつが近くの街まで乗せていってくれるってさ!行こうぜ、相棒!」

 俺が事態を飲み込めず呆然としているとチェットは青龍の背中にまたがりながら言った。


 ちょっと待て……。

 ちょっと待てよ!

 何だその展開!

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