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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
魔の森と妖精編
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魔の森3

 一つの部屋が30m四方で部屋と部屋の間の通路が100m程度、しかもすべて登り……。これだけでちょっとしたトレーニングになる距離を一気に駆け抜けた。

 時短のためにチェットとクレサを抱えていたからか……、いや、抱えていた二人がアホみたいに無邪気だったからだろう、かなり疲れた。


 最後の扉を抜けるとどうやらさっきと同じ場所のようでやはりそこは霧の深い森の中だった……。出るたびに違う場所に出るということはないらしい。これなら迷子になることもあるまい……って!そもそもここがどこだかわからん!

 現在地がわかる地図があればいいのに……。いや、そこまで欲張らなくてもさ。欲張らなくてもせめて案内板とかさ……。良いじゃんそのくらい親切にしてくれてもさ……。


 ええい!甘えるな。この世界はどうせ俺に不親切だよ!ゲームのようにはいかないんだよ!少し息が上がっているせいかテンションも高いな。一旦落ち着こう。

 ここからはこの見通しの悪い森の中をどうにか抜けなければならない。

 チェットの魔法がベストだが……、待ってはいられない。


「相棒、もう終わりか?超特急」

 うるせぇよ!

「あ……、あの……、抱きしめるときはもっと優しくそして……。これ以上は恥ずかしくて言えませんわ……」

 何が言いたいかはわからんがお前ら黙っとけ!


 いや、こいつらに構ってはいられない。とにかく前に進まなければ……。この辺りは深い霧に覆われていて全体はまったく見えない。

 いきなり霧の深い森の中にポンと放り出されていったいどうしろっていうんだ……。というか今までの人はどうしたんだ……。

 そう言えばあの洞窟を抜けたのは一組だけとか言っていたような……。

 その後どうなったか聞いておけばよかった……、聞けないけど……。


 そう、どうしようもなかった。現状を整理しよう。

 その辺を適当に歩いた感じ……勾配はないただの深い森か。

 霧が発生している以上このあたりに水はあるはずだ。この森全体が湿地帯のようだが川の流れる音は聞こえない。川があれば海まで通じているはずだから森はいつか抜けられると思うのだが……。こんな深い森だと川と言ってもちょろちょろした水が流れている程度だろう。この深い霧の中探し出すのは難しそうだ。

 いや、霧がその辺に発生するか?街中で霧が発生することなんてそうそうない。霧が発生したということはここは盆地か谷か……。


 ……だから何だ?

 別に冒険家でも何でもないただの人なんだからこれ以上どうすればいいのやら……。視界が晴れていれば山を越えるなり高い山と反対側に行くなり方法はあるがこれではどうしようもない。

 ここがどこか見当もつかない場所にいきなり連れていかれて何とかできる人間の方がすごいというものだ。せめて街がある方向でもわかれば何とかなるというのに……。

 青龍がそんな能力を持っていなかったか?……あの時はバカにしてごめんな。人間窮地に立たないとそのすごさがわからないものなんだわ……。


 というかあいつらどこ行った?いつの間にか姿が見えない。

 しまった!これでチェットに死なれでもしたら面倒だ。

「おい、相棒!いつまでもこんなところにいても仕方ねぇよ!そんなところふらふらしてないで早く帰ろうぜ!クレサちゃんが道を見つけてくれた!」

 俺の心配をよそにチェットの元気な声が背後から聞こえてくる。

 良かった、あいつ生きている。目を離したのは数秒だと思うが心配でしょうがない。さらにクレサがちゃんとした道を見つけたとは今回は役に立つな。


 チェットの後を追って、洞窟の扉から草をかき分け岩を飛び越えたところに確かに道があった。

 よくこんなところに道を見つけたな 。


 先に進んでいたクレサに俺とチェットが追いつく。

「あら旦那様。お待ちしておりましたわ」

 お待ちしてないで進む前に呼べよ!

 しかし、それにしてもクレサはどうやって道を見つけたんだ?

 女の勘……、いや、女と呼ぶほどの年齢では……。

 野生の勘……、たまに乱心モードになるけど今は違うしな……。

 子供だから視点が地面に近いとかか?


「この道はこの子が教えてくれましたの」

 そう言ってクレサは何もない地面を指差す。

 ……栄養失調とかからくる幻覚か?

 そう言えばあの洞窟の中にいるときはろくなもん食ってないしな。育ち盛りにはきつかったか……。


「妖精さん、ええっと、私の名前はクレサですわ。そしてこちらが私の旦那様でこちらがチェットさんですわ」

 クレサが何もないところに向かって俺とチェットの紹介をする。

 ……痛い、じゃなくてそうか、ここに妖精がいるのか。

 というかクレサ……、自己紹介もまだだったの?

 なんて言って案内させるに至ったの?

 ……なんとなく予想はつくけどね。


 えーっと、クレサが道を見つけたというのはつまり妖精がこの道を教えてくれたとことか?

 ……案内ができるということはつまり妖精はこの辺に住んでいる?少なくともこの辺りには詳しいとみていいのか?

 俺には全く見えないが妖精がここの案内人と言うことか……。

 本当に不親切な案内人だこと……。

 クレサに見えたことがせめてもの救いだ。

 クレサしか見えないのが残念だけどこの際一人でも見えればいいか……。


「じゃあ、妖精さんも自己紹介をお願いしますわ。」

 少しの沈黙、……何も聞こえない。むしろこれで聞こえるようなら今まで何で何も話さないんだって感じだし。見えもしないし話もできない妖精の案内で俺たちはこの森から脱出を図らなくてはならないのか。完全にクレサ頼みだな。

 もっとも、一番いいのはチェットが瞬間移動魔法を使うことだけどな!


 妖精の自己紹介は終わったかな?

 早くナビして欲しいんだけどと思った矢先、

「おい!てめぇ!何してんだ!こら!」

 とクレサが急に怒鳴り声をあげる。

 なんだよ、どうしたんだよ、まだ慣れねぇな……。


「謝ってんじゃねーよ!旦那様にケツ向けたまま挨拶する奴がどこの世界にいるっていうんだよ!ふざけるな!これが謝って済む問題か!?」

 ちょっと待て、この世界で大小かなりの無礼を振る舞われてきた俺は寛容になったから多少の粗相は謝れば許してやるが問題はそこじゃない。

 ……もしかして妖精も俺たちのこと見えてないのか?

 万が一離れたらクレサが見つけない限り妖精のサポートは受けられない。

 ここには魔物も出るし、何より視界が悪いという状況ではぐれたら終わりというこの仕様……。万が一に備えて道を覚えておく必要が……、いや、霧が深すぎる上にどこを見ても大きな違いがない。覚えておくのは難しい。クレサ頼みということだ。


「この妖精!ぶっ殺してやる!」

 やめてー!

「クレサちゃん、クレサちゃん。何をそんなに怒ってるの?おままごとなら周りに迷惑がかからないようにしないとダメだよ。急に大声出したりしちゃダーメッ!」

 チェットは子供を諭すような無駄に優しい声を上げる。

 こいつは今置かれた現状を何一つわかっていないようだ。

「あら、私としたことが……、すみません、チェットさん」

 クレサが正気に戻る。これでここから案内人なしの状況は避けられたようだ。

 クレサが一方的に認識している……、いや、俺達が見えないのはわかったが妖精はクレサの姿は見えているのかもしれない。それならまだ何とかなりそうだ。

「怒鳴ってしまってごめんなさい。妖精さん」

 クレサが何もないところに頭を下げる。怒鳴ったことよりもその内容に問題があった気がするが……、素直に謝れるところは彼女のいいところだろう。


「……いいの、いいのって言ってますけど、あの……、私はここですわよ」

 ん?妖精はクレサのことも見えてないのかよ!妖精からするとクレサの声が聞こえているだけ?

 思っていたよりもやばいな!


「クレサちゃんはさっきから何を言っているんだい?」

 チェットがようやくクレサの行動に疑問を持った。

「ええっとですわね。ここに妖精がいるのですが……。え?何?ふんふん。へぇー。そうだったんですの」

 クレサが何かを理解したらしい。

「どうしたんだい、クレサちゃん?」

「何でももともとこの辺りは人間界と妖精界を繋がりやすい場所らしいのですけど、お互いの姿が見えたり声が聞こえたりできるのは幼力の高い者だけらしいですわ」

 なんだ?幼力って……。

 つまり、人間同様、妖精も幼い奴しか人間を見たり話したりできないってことか……。

 じゃあ、なんでクレサの声は聞こえるんだ?


「この妖精、この前悪いことをしてしまって鼓膜破りの刑に処されてしまったそうですわ。それで今はかろうじて人間の子供の声は聞こえるみたいですわ。鼓膜だけ幼力が高いらしいんですの」


 今までの話を整理すると俺とチェットとクレサのパーティーの前に妖精が一匹いる。

 その妖精が見えたり、会話したりできるのはクレサだけ。

 その妖精はクレサの言うことは聞こえるが、見ることはできない。


 それにしても鼓膜破りの刑って……。

 えげつな!思っていた以上に妖精界も大変なんだな……。


 それは知りたくなかった。

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