四神13
馬鹿みたいに眠りこけている二人を両脇に抱え、足で蹴っ飛ばして勇者の試練の最初の扉を開けた。
両手がふさがるのがちょっと嫌だけど、攻撃は跳び蹴りをはじめとした足技があればどうにもなる。
それにたった数分の我慢だ。
俺も魔法が使えれば動かずに勝てるから抱えてる必要はないんだけど……。、
やっぱいいな、魔法……。
まあ、いまさら羨んでもしょうがない。
本音を言えば勇者死亡からのワープ&復活のメカニズムの解明したかったけど、これ以上ここにいたらきっと俺死ぬからな。
ストレス性の病で!
両脇に抱えた荷物の重みに肉体的よりも精神的な疲労を感じつつ、くぐった扉の先に待っていた最後の最初の相手は白虎だった。
そう言えばこいつだけ強さが未知数なままだ。
さっきは敵前逃亡しちゃったからな。
まあ、俺より弱いということはわかっているけども!
白虎は堂々とした姿で部屋の中心に構えていた。
表情やしぐさからはどこか余裕を感じる。
「よくきた――ぐはっ!」
まあ、そもそも話を聞く必要もないし、油断していてくれるならそれでいいし!
白虎の話し出しと同時に跳び蹴りをかましてやった。
タイミングは邪道だが、何と言われようと関係ない!もう会うこともないだろうしな!
早く終わらせたい!
「お……、お前は……、私を苦手に……、してたのでは――ぐほっ!」
まだ倒せてないようなのでさらに蹴り続ける。
何を勘違いしているのか知らないけど俺が苦手にしているのは味方の的外れな自己主張だけだぜ!
「話の最中に攻撃とはひ――ぶべばー!」
強制的にこんな薄暗い洞窟に連れてこられた時点で戦いは始まってるんだよ!
白虎は言葉にならない叫びを上げながら光に包まれて消えた。
感覚的な話だけど、両手がふさがってるとなんか嫌だな。瞬殺する予定だったのに俺の体重のノリが悪いのか無駄に時間がかかった気がする。
まあ、話を聞かなかった分大幅な短縮につながったとは思うけど……。
とは言ってもあと3回戦えば終わりだろう。
この程度のロスは大目に見てやるか。
白虎と同じように特に苦戦することもなくその後の青龍、朱雀、玄武を撃破した。
3人で玄武と戦ったときよりも時間はかかんなかったな。
せっかくのバトル展開、男なら胸が熱くなるようなシチュエーションのはずなんだけど……、いまいち盛り上がりに欠けるんだよな……。なんか弱い者いじめしている気分だ。
まあ、でもそもそもこれが勇者のための試練なら最終的にはあいつらが勇者に負けるのは予定調和なはず。強い勇者を育てるためのシステムなんだから。だからバトルというよりもただのイベントなのかもしれないな。
最後の玄武を文字通り秒殺すると空っぽになった部屋が急に広く感じた。
まあ、この場所にはチェットとクレサのわけわからないコントを皮切りに、考えたこともなかった回復役をやってみたり、この世界の勇者の仕組みや魔法の仕組みを知ったり、チェットが魔法剣士とかわけわからんこと言い始めたりと、結構、思い出深い。
4体目を倒した今、目の前にある扉をくぐればもうここに来ることもないだろう。
俺たちはここを抜けて……、あれ?ここを抜けて……。あれ?俺達の目的ってなんだっけ?
あっ、そうそうクレサを正式な仲間にすることだった。
こんな得体のしれない洞窟で抱えられながら戦闘していることにも一切気付くことなく眠り続けたこの少女はまだ仲間ではなかったんだな。
呑気に感傷に浸っている場合ではなかった。クレサの母親を連れ帰るにも制限時間があったはずだ。あと何日残ってんだ?
洞窟の中で太陽が見えないし、時計もないから時間がわからん。
今の時間はわからないけど、少なくともわかっているのは急いだ方がいいということだ。
最後の扉を蹴り開けて急いで先に向かう。
しかし、その扉の先に広がっていたのは……、さっき戦ってた場所とほとんど変わらない空間だった。
洞窟から抜けてはいないらしい。
広間の中央には玄武と白虎の2体がいた。
そうか、あれか!
卒業証書授与式的なあれね!
別にお祝いとかそういうのは別にいらないけどな!
俺達……、俺は急いでるからさ!
「待っていたぞ!」
俺……、俺達を見て、白虎はわくわくしたような声で言った。
待ってなくていいんだけどな!
「ああ、待っていた!」
玄武は白虎に続いてそう言った。
いや、お前はそんなに待たせてないだろ!
お前倒したの最後なんだから別れてからまだ1分もたってない!
「よく来たな!勇者とその仲間たちよ!」
その言葉に違和感があるのは俺だけか?
「ああ、よく来た!」
うるせーよ!
そもそも一方通行なんだから必然的に来るだろ!
「我々はお前たちに問いたい。お前たちは戦いに負けたことがあるか?」
白虎がよくわからん質問をしてきた。
何を改まって……、自分たちに勝ったからといって慢心するなっていう話をするの?
大丈夫だよ!こいつらにはその記憶もないんだから!
「私はある」
それは知ってるよ!
何なの?何が言いたいの?
「前に一組だけこの試練を突破した者どもがいるという話をしたな。」
……されたようなされてないような、覚えてないし、どうでもいい。
「あれは1000年前のことだ……。」
まさかの回想!?
こっちは急いでるのに!
いっそもう一度負かしてやろうか?
「あの時の勇者は4人組だった」
人数の情報は別にどうでもいいんだけど!
「名前は……あー……。我々はそいつらに負けたことが何より悔しかった」
絶対名前覚えてないだろ!
悔しさが伝わってこないんだよな!
「この場所自体が勇者の踏み台になるためのものであることは我々もわかっている。わかってはいるのだ……。それでも我々は悔しかった」
これ、何の話?
「そこで我々は考えた。どうしたら勝てるのかを……」
……勝っちゃダメなんじゃないの?
「そして、一つの結論にたどり着いた!一人で勝てない相手なら二人で戦えばいいと」
……は?
なに言ってんだ、こいつ?
えーっと、つまり白虎と玄武を同時に相手にしろってこと?
何が戦えばいいだ!
こっちの身にもなれ!
「我々も最初は悩んだ……」
そりゃそうだろ!話の途中で攻撃するより邪道だと思うぞ!ボスっぽく登場しといて負けたら手を組むなんて、お前らにプライドはねぇのかよ!
最初人気がどうとか言ってたくせに、卑怯すぎるだろ!
「部屋の数が足りないと」
えっ、物理的な話!?
わかった、お前らにプライドはないんだな!
「だが、それは我々の1000年の努力で何とか部屋を増設することに成功した」
いや、勝ちたいならその時間をトレーニングに使えよ!
というかそれやるならはじめから2体でかかって来いよ!
お前らは復活して元気かもしれないけどこっちは連戦で大変なんだぞ!
荷物の管理とか!
「お前らが一度勝っ――」
「一度勝ったからと言ってその先も同じようになると思うなよ!」
ほとんど語っていた白虎だが最後の最後で玄武にセリフを盗られ、ため息をつく。
「ハァー、あー、なんか、文句があるなら、かかって来なー……」
だからめんどくさくなるなって!
というかこの場合、文句あるなしにかかわらずかかっていくことになるだろうが!
いや、そんなことはどうでもいい。
ただ簡単に想像つくのがこいつらを倒したら残りの朱雀と青龍が出てくるってこと……。
いやもしかしたら……、さらにその先に行ったら2人で勝てなければ3人でとかって可能性も……。
倒すこと自体は大した問題じゃないんだけど……。
なんか疲れた。




