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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
勇者の墓場編
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四神12

「早速作戦変更だー!おーい、クレサちゃん!作戦替えるから聞いてー!」

 チェットは満面の笑みでクレサに駆け寄っていく。

 なんだそのテンション?さっきまでとの温度差は一体何なの?


 呆れつつもその新しい作戦とやらを聞くために俺も渋々ついて行く。

「クレサちゃん、クレサちゃん!俺さ!魔法剣士になるから!」

 いつもは一緒になってわけわからん方向に展開を持っていくクレサだが、今回はなんだかチェットとは真逆で妙に落ち着いていた。

「……チェットさんは勇者では?」

 チェットのばかばかしい提案にも動揺することなくクレサはそのままのテンションで小さい声で呟く。

 まあ、それは別によくね?

「あっ!?どうしよう、俺勇者だった!」

 何をいまさら!それは両立できるだろ!


「どうしよう……、俺、勇者やめようかな……」

 そっちを!?死んでも死ねないのに?

 というかそれができたらこんなところにいないわけだけど。まあ、間違いなくそれがベストな選択だけどね。


 悩むこと30分、とりあえず勇者兼魔法剣士という形で落ち着くことになった。

 普通逆だろ!

 本当に意味のない会話が多いな。

 しかも長い。


 チェットが落ち込んでたから冷静に考えてなかったけど、別にチェットの魔法もすごいかどうかわからないんだよな。

 昔、なんとかファイアを使ってたけどあれ以来見てないし、その時の敵も雑魚だったし……。

 まあ、考えても仕方ないな……。

 チェットが何であれ戦力にはカウントされないしな。


「それでね、俺これから魔法剣士だし、物理攻撃担当と魔法攻撃担当を両立させるから!」

 戦力外のくせに急に何を言い出すんだ!?

 チェットはこれまで数々の愚策を弄してきたが、それほどまでのものは初めてだわ。

 誰が倒すんだよ!


「クレサちゃん、魔法攻撃担当だったじゃん。魔法攻撃担当は2人はいらないから――」

「私、回復役、交代しましたの。」

 チェットの言葉をさえぎってクレサがぼそぼそとしゃべる。


 会話をさえぎることができるのがいいんだよな。話せるって!

 ……と羨ましがっている場合ではない。

 俺をどうする気だ?

 まさか回復役にする気じゃないよな。2人もいらないだろうし!


「そうか、相棒が魔法攻撃担当になったのか!じゃあ相棒は次から特に役割とかないからとりあえず俺の熱い戦闘を見ていてくれ!何でもできる相棒には簡単すぎるかな?」

 逆に難しすぎるだろ!

 こんな愚策聞いたことない!


 しゃべれないってことだけで何度苦汁をなめていることか……。

 いや、一番の問題はこいつがいつまでたってもしゃべれないことに気付かないことじゃないか?

 何で気づかねぇんだ!

 俺が『はい』とか『いいえ』とかたまにしゃべってるのがいけないのかな……。

 それで勘違いして……。


 もう何も言わない方がいいのかも……。

 早くその事実に気付いてもらった方がいい!

 そもそも俺の情報源は大部分が人間ラジオことチェットの垂れ流し放送で得ている。

 今はクレサがいるから二人で話しているのを盗み聞ぎすれば情報が全く入って来ないということもあるまい。

 全く問題ないな!


「なぁ、相棒!聞いているか?」

 目の前でチェットが手を振っているところでようやく我に返る。

 とりあえずもう何も言わないからな!

 それと俺はこんなところにいつまでも居たくないから熱い戦いを見てるっていうのは絶対無理という意味でとりあえず両手で×をつくる。


「相棒、さっきのは笑うところだぞ!」

 ……何が?どこが?

 とりあえず熱い戦いを見ていてくれって言ったこと?

 いや、魔法剣士になるって言ったことか?

 さっきっていうのが何を差したのかは知らんがお前の自称ギャグがわからないという理由で俺を笑いのわからないやつ扱いするのはやめてくれ!


「まあ、相棒は役割にとらわれないで好きにやってくれ!」

 まあ、いつも好きにやってるけどな!


 チェットはにやついた表情でよし、やるぞ!と大声をあげ、大きく伸びをする。

 これからまた性懲りもなくやられにいくらしい……。

 俺今回、祠の分別などがあるから不参加で!

 早速好きにやらせていただきますんで!


「あの、すみません……。私、今日はもう、眠いですわ。次の戦いは明日にしてくださらない?」

 やる気満々のチェットの横でさっきから口数も覇気もないクレサが小さい声で言った。

 眠かったのね。

「うん、わかるけど、あと一回だけ!一回だけな!いいでしょ!一回だけ!魔法剣士として生まれ変わった俺の真の実力が見れるんだぜ!」

 チェットは興奮気味に何とか説得を試みている。

 お前の魔法剣士としての実力なんてすでにたかが知れてるけどな!

 まあその気持ちはわからんでもない。

 新しいことは早いうちに試してみたいよな。


「だめですわ。今日はもう寝ます!チェットさんも寝てください!うるさいです!」

 しかし、クレサに付け入るスキはなかった。

 どうするチェット?

 俺は全然眠くないから付き合ってもいいけど?


「そっか、クレサちゃんがそう言うなら今日はもう寝よう!明日朝一で出発します!おやすみなさい!」

 そう言うとチェットは瞬く間に横になる。

 こいつの切り替え!


 数秒もしないうちに二人してすっかり寝息を立てている。

 マジかよ……。俺、全然眠くないのに……。


 まあいいか。さてうるさいのが消えたところで作業を……。

 いや、ちょっと待て。

 

 瓦礫の量とその材質の判断、マークの有無、そして、穴掘り。これらの作業が完了するのにかかる時間はおそらく10時間くらいはかかるか……。

 それもぶっ通しでやった場合だ。ということは休憩や作業効率など、現実的に考えるともっとかかる。


 それに対してこの試練をクリアするのにかかる時間。

 今は足手まといどもが寝てるから味方の予想外の動きに翻弄されるということもない。

 少なくともチェットは寝相とか別に悪くないし……。

 だからそこに攻撃がいかないようにしながら戦えばいける。

 朱雀の全体攻撃もクレサ一人なら守れた、けどそれは二人が離れた場所にいたからであって同じ場所にいれば二人とも守ることが可能だ。

 というか俺が攻撃すれば敵に攻撃させる隙も与えずに倒すことが可能……。


 だいたい一体倒すのに3秒、そして、×4で12秒……。

 二人を担いで扉から次の扉まで移動させることを考慮しても全体でかかるのは3分、遅くとも5分あれば終わる。


 今までの苦労がなんだったんだ。

 初めから正攻法を考えるべきだったのか。

 いや、攻撃が解禁された今だからこそだな。


 ……そういや、さっきの計算はあいつらの長い無駄話の時間を考慮してなかったな。

 まあ、聞かなくていいか。出会い頭に一発かまして……。

 うん、そうだ。

 人道だの暗黙のルールだのどうでもいいわ。

 とっとと攻撃してとっとと終わらせよう!

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