四神3
一つ目の部屋で口だけは人一倍うるさい朱雀を倒し、その部屋の奥にあった扉を開くと次は玄武が待っていた。
「よく来たな!朱雀がやられたことには驚いたがお前も驚いたことだろう」
何に?
はじめから勝てると思ってたけど?
「まさかこの俺がキャラづくりのためにあんなしゃべり方をしていたということに!」
それかよ!どうでもいいわ!
「そもそも俺は2枚目キャラであってだな!」
聞いた聞いた!さっき聞いたわ!
もういい!ここもおまえを倒せばいいのか?
それだけが知りたい。
それからいろいろなんか言っていたが、結局ここでやることは玄武を倒すことらしい……。
今は時間が惜しい……、クレサを仲間にするためにも。
いや、時間は大丈夫か。こいつら弱いから。一体につき意味の分からないお話タイムを含めても3分もあれば倒せるしな。
どうやら長ーい前置きが終わったようだ。
ふわふわしていた表情が一変、玄武の目つきが変わる
「我、守を司りし水を操る神、玄武なり!いざ、参る」
そう言うとそのまま猛突進してきた。
なんでタックルなんだよ!一番守りを捨てた攻撃じゃないの、それ!
全然守を司ってねぇじゃん!水操る気配もないし……。
もはや何でもいいけどよ。
「俺の体は何よりも固い!果たして俺にダメージを負わせることができるかな!」
玄武は自信満々にそう言いながら突っ込んでくる。
何よりもってなんか例えろよ。岩とか鉄とかイメージしやすいものがあるじゃん!
最強の攻撃力を持つ朱雀の攻撃があの程度なら最強の防御力を持つこいつの防御力もたかが知れているというものだ。
わざわざ猛スピードで近寄ってきてくれたので、特に考えずに思いっきり蹴り返してやると玄武は反対の壁まで吹っ飛んだ。
何が何よりも固いだよ……。固いのはお前の頭だけだ!
「いったい何が……。俺が吹っ飛んだ?」
玄武は自分のやられっぷりに驚いている。
この試練のシステムがわからないけどそうそうやられる機会がないのだろう。
とは言ってもあいつの茶番に付き合う義理もないので地面で悶えている玄武をそのままタコ殴りにする。
「痛い。痛い……。なんだよ、お前強いな……。あとこの壁固いな!」
玄武はそれだけ言い残すと謎の光に包まれて消えた。
最後自分でツッコんでた……。
それにしてもこの試練は楽勝過ぎるな。
何から楽勝過ぎてなんか逆に不安になってきた。
この先よからぬことが待ってないといいけど……。
いや、弱気になるな、俺!
俺が強すぎるだけだ。あいつらが弱いのではなく、俺が強いんだ。
だから普通はこれも全然ぬるくない。
相対評価はよくない!
玄武を倒し、次の部屋に向かう。次の相手は青龍のようだ。
「おめぇがここまでくっことにはおどろいだが、おめぇもおどろいたべ?まさが、オラがこんなしゃべりがだだってことに」
確かに驚いたよ!お前だけあのとき素だったのかよ!
「オラはもどもど2枚目キャラで――」
もういい、何度も聞いたわ!
お前は2枚目ではない!
……どうしよう。
待ってる時間もったいないし攻撃しちゃおうかな……。
でもそういうのって邪道だよな……。
空気は読みましょうか。
とは言っても話を聞苦のは面倒だし、何よりこいつに関しては何言ってるかわからん。
終わるまで今後の予定でも検討しておくか。
とりあえずあと次の白虎を倒せば終わるだろ。
そうするとおそらく元いた場所に戻れるだろう。
そうするとチェットが魔法で街まで飛ぶ。
パーフェクトプラン(チェット有)に則って計画を実行する。
晴れてクレサが正式に仲間になる。
特に何も問題はなさそうだな。
なんだこの順調さ。こわいこわい。
うまくいっているならそれに越したことはないか。
他に何か考えることあるかな……。
ええっと、そういえば飯はどうするんだろ?
食料なんか調達できそうにないしな……。
まあすぐ出るし心配ないか!
「オラはほかのみんなど違って特別すごいステータスはねえ。だげどオラには<神の右耳>がある」
ふと青龍の長話の一部が耳に止まった。
何だ、神の右耳って……。
他の奴の特別なステータスっていうのはきっと攻とか守を司るとか何とか言ってたやつだろう。
まあ、俺相手にはカス同然だったから気にしてなかったけど、こいつは神の力を持っているのか……。
俺の左目然り、ババアの右目と左耳然り、神の力はとんでもなくチートだからな。
これは結構用心した方がいいか……。
まあ、そういう俺の左目は全然使ってないんだけどね。
自分の能力が最強なら別に敵の能力を分析する必要はないんだよね。
この目、人を探す時ぐらいしか役に立ってねぇ。
チートが全然活かせなさすぎだろ!
そんなこと言っても始まらない。
神の力の具体的な内容はわからんからとにかく青龍に限っては相手の出方をうかがうべきか、それとも能力を使われる前にとっとと始末するか。
……断然後者だな。
神の力は基本的にサポート系の能力だ。戦闘ステータスとはまた別だろう。
何かされる前に片そう。それが十分にできる相手だし。
「我、神の力を授かりし風を操――ぐはーーッ」
しゃべっている最中に思いっきりみぞおちあたりに蹴りを入れてやった。
この際、美学何かどうでもいい。とりあえず勝つこと!それに尽きる。
さらに、奴に体勢を立て直す隙を与えず連続攻撃を放ち、葬り去ってやった。
これで残すは白虎のみ……。
次の部屋に行くと予想に反することなくそこには白虎がいた。
「まさかここまでくる人間がいるとはな!」
俺も驚いてるよ。ここまで瞬殺なのにまだお前が試練をやる気なのがな!
「ここまで来たお前に特別に教えてやろう。なぜここが勇者の墓場と呼ばれるのかを!」
いや、いいんだけど!全然興味ないし。
というかその名前って……、あっ、あれはネタか……。
結局それなのね。
「勇者は基本的には死なないことは噂程度に聞いたことがあるだろう」
そう言えばそんな噂を聞いたことはあるな。ここに勇者いないけどな!
いや、ちょっと待て。
じゃあ、墓場っていうのはおかしくね?
みんなこの試練を突破して外に出ているってことか?
いや、あいつらが負けたことに驚いていることを考えるにそれは可能性が低い。
けど俺達とこいつら以外にはここに誰もいなかったな。
あれ?どういうことだ?
「正確にはそれは違う。HPが0になると勇者は死ぬ。しかし、そのあと生き返るのだ。死んだ場所から最も近い勇者の祠の前で!」
ふーん、そういうシステムか。はいはい。気が付いたら死んでしまうとはなにごとかっていてる人の前にいるあのパターンね。その祠がこの洞窟のどこか、おそらく始まりの場所にあって何度も挑戦させられるということか。
「勇者が死ぬ条件は最高の幸せか最低の不幸を味わったときだ。ここに仲間も一緒に召喚するのは、次々に仲間が死んでいくことで勇者に絶望を与えるためだ」
嫌なシステムだな……。
まあ、そんなこと言われてもおまえで最後だから関係ないけどね!勇者は今漫才をつくるのに忙しくてここまで来れないから!
「あと今まで達成できたものは一組しかいないが、ここから抜けれる条件は最後の試練をクリアしたときその部屋にいたものだけだ。その時最後の部屋にいなかったものはここに取り残される。」
……ということはこいつを倒しちまうとあいつらはここでずっとコントのネタを作り続けることになるということか。
それでもかまわ……、いや、やはりそういうわけにはいかない。
仕方ない戻って連れてくるか……。面倒臭いなー。
「一度戻った試練は最初からになる。また一からやり直す羽目になるのだ。やられた我々の仲間も皆生き返る。それでもかまわぬのならここから立ち去られよ」
最初からになるのか……。
ということは一度倒したあいつらもまた生き返るのか?
んー、面倒臭いけど仕方ないか。作業量的には問題ないし。
仕方なくもと来た道を引き返そうとすると、白虎が声を張り上げる。
「待て、我、素早さを司りし雷を操りし神、白虎なり。俺から逃げられると思うなよ!」
なんだよ!戦いたいならさっきの黙ってればいいのに!
なんか追いかけるそぶりを見せていたけど全力で走ったら余裕で振り切れた。
フィジカル面では俺に敵うやつはいないということが再確認できた。
このときの俺はこのまま楽勝で終わると思っていた。
しかし、俺はもっと考えておくべきだった。
白虎の言った言葉の意味を……。




