四神2
おかしな方向に本気を見せたあいつらを待っていても仕方ないので、2人を放っておいて俺は先に進む。
洞窟内は見渡す限り岩でできているが白虎が言っていた扉は正確にはわからないけどたぶん鉄でできている。
ノブに手をかけゆっくりと扉を開くと扉の先にはさっきなんか楽しそうに話していた4体のうちの1体である朱雀が待っていた。他にはどうやらいないみたいだ。
扉の先は一つのフロアになっていて結構広い。
ここでクイズ大会と言うことはさすがになさそうだ。
ここで朱雀が1体で待っているということはもしかして戦闘か?
「フハハハ、驚いたか!」
俺が完全に部屋の中に入ったのを見届けると朱雀はそう言って高笑いした。
朱雀はそう言うがもはや俺自身何に驚いていいのかよくわからない。
驚くなって人間の一番素直な反応の一つのはずなのに、もはや驚くことが多すぎてどうしていいのやら……。
確かにさっきまでいた場所からは考えられないような広さだけどもうその程度では驚かない。
「さっきの喋り方が作られたものであることに!」
……は?喋り方?
確かになんちゃって関西弁みたいなので話してたけどそんなことで高笑いしてたのか。
今驚いたわ!
「そもそも俺様たちは思春期の少年少女が一度は羨む2枚目キャラだ。俺様たちをモチーフにした像、本、話などはこの世に腐るほどある。3枚目キャラなんぞやらなくてもよいのだ!」
何の解説だよ!お前とここで楽しくおしゃべりする気はない。
そんなことよりここで俺は何をすれば先に進めるんだ?
それだけを説明してくれ!
「パンピーであるお前ごときが俺様に謁見できたことを光栄に思うんだな!」
パンピーって……。
まあいいや。それで?何すればいいの?
「ところでお前一人か?」
驚いたか!俺、一人だ!
「前の勇者は300人も仲間を連れて来て相手にするのが大変だったんだぞ」
300人も入れるの、ここに?
じゃなくてお前の思い出話はどうでもいい。
前置き長いんだよ!早く本題に入れ!
「何を言ってもだんまりか!つまらん奴め!」
好きで黙ってるわけじゃねーよ!
俺が話せたらお前のくだらない話は言葉でねじ伏せてやってたわ!
「さてとそれでは始めようか。お前の地獄の試練をな!」
俺の地獄なの?勇者の試練なのに?
「この試練のクリア条件は単純明快!俺様を倒せたら次の試練への扉が開く。それだけだ!」
確かに俺が入ってきた扉とは別の扉が朱雀の背後に見える。
さっきの扉には別にカギとかかかってなかったし、俺なら壊せるんじゃないか?
「まあ、それができればだがな!」
お前がその言葉を最初に言っていたらお前はもうここにいないからな!
「我、攻を司りし火を操る神、朱雀なり!いざ、参る」
朱雀が何だかよくわからない口上に続いて雄叫びを上げる。
どうやらこの試練は奴を倒せばいいらしい。
別にこいつを倒す必要もないんだが、急に環境が変わってストレスが溜まっているからな!
まったく俺に戦いで挑むとは愚かな奴よ……。
というか今までいろんな試練をこなしてきたが初めてまともなの来たんじゃね?
さてそれではいたぶってやろうか!
朱雀はと言うと何かぶつぶつ言っている。もう始まってんだよな?
独り言を言っていたと思えばその直後に朱雀は大きく息を吸いこんで叫んだ。
「くらえ。ダッシュファイア!」
そう叫んだ朱雀の目の前に突如として大きな炎が現れる。
チェットが前に使っていた炎とは比べ物にならないほど規模がでかい。
奴が出した炎は瞬く間にこの空間を支配した。
この炎から逃れる術があるとすれば空中だがそこは当然奴が狙っているのだろう。
朱雀は天井スレスレを飛んでいる。でかい図体で天井スレスレを飛んでいるのが……、なんとも哀れだ。
「残念だったな、俺様が一番で!俺様は四神の中で最も攻撃力が高い。もう始まった時からお前の終わりは決まっていたんだよ!哀れ、名もなきパンピーよ!」
名前はあるんだよ!わかんないだけで!
「俺様の炎に耐えられる奴はいない!ほんじょそこらのパンピーが!勇者の仲間であったことを後悔するんだな!」
奴の言う通り、俺にはこの炎は耐えられなかった。
ただ何もせずいつまでも炎の中にいるなんて苦痛以外のなにものでもない。
炎なのに熱くもなければ息も苦しくならない。
炎の中にいるのにあいつの言葉にいちいちツッコみを入れられるくらいには余裕だ。
あとパンピーやめろ!
まったく時間の無駄だろ、これ。
今自分がどのくらいダメージを負っているかはわからないがこの攻撃で死ぬよりも先に寿命が来るだろう。
王宮であのデブたちを背負ったときの方がダメージがあったぞ!
有頂天に飛んでいる朱雀まで特に助走もつけずにジャンプする。
「なっなんで!俺様の炎が……効いていない?」
急に目の前に俺が現れて朱雀は驚いているようだ。こいつ鳥類のくせに表情がわかりやすい。
お前の炎は結構効いているぞ!
お前の炎が俺の怒りに火をつけた!
あとお前はパンピーを言いすぎだ!その点にも少し怒ってる!
必殺技とかもないしとりあえず思いっきりぶん殴ると朱雀は吹っ飛んだ。
地面に叩きつけられてうめき声を上げる。まだ息があるようだ。
最近一撃で倒せる相手がめっきり少なくなってきたな……。
というか戦闘回数そのものが少ない。
まあ、単にボスクラスはHPが高いのだろう。ちょっと寂しい。
声にならない叫びを上げながら俺におびえる朱雀をただひたすら殴りまくる。
だって倒さないと次にいけないからね。
向こうが言いだしたことだし、こっちだって好きでやっているわけじゃない。
……というのは建前で、普段のどこにも発散できないイライラが拳を通して外に出ていくこの感覚がたまらない!
朱雀が光に包まれ出す。
この光は魔物が倒れたときに出る奴だ。
どうやら倒したらしい。
「お前……、いったい……何者だ?」
消えかかった朱雀が声を振り絞って聞いてきた。
俺からは答えられないからあとでチェットかクレサに聞いてくれ!
まあ、あいつらも答えられないと思うけどな。
「名も名乗らないとは所詮はパンピーが!何もわかってねぇ。戦いに勝ったら名乗りを上げるのが常識だろうが!クズが!次会ったら真っ先に潰してやる。」
急にそう声を荒げると朱雀は目の前から消えた。
胸糞悪いな!
俺だって好きで黙ってたわけじゃねぇのになんて言われようだ。
こっちにも事情ってもんがあんだよ!
まあいいか、どうせもう会うこともないだろうしな。
奴の消滅とともに奴の出した炎も消えた。
術者が消えると魔法は消えるのか……。
いまいち魔法って概念がよくわかってないんだよな。
戦闘は基本一瞬で方がつくし、チェットは戦闘じゃ魔法使ってくれないし……。
俺からは何も聞けないしな……。
この試練中は魔法でダメージを負うことはないだろう。だってあいつの攻撃が一番強いらしいし。
HPは1億年くらい回復しなくても大丈夫なくらいあるし魔法防御力も最強だしな。
俺が魔法を使えるようになることはきっと無理だろう。
魔法を叫ぶ前にぶつぶつ言ってるのって詠唱だろ、きっと。
さすがに今まで旅していればそういうことは嫌でも気づいちゃうもんだ。
俺にはまず詠唱ができないからな。
たとえ魔法攻撃力が最強だったとしても……。
ハァー、魔法、何でもいいから使ってみたいな……。
来た方と反対側にある扉にとぼとぼと向かう。
まあ、気を取り直してさ!
魔法のことは仕方ないけど試練なら簡単だ。
この試練がこの調子で残りの奴らと戦うだけなら楽勝だろ。




