四神1
勇者の墓場だと?じゃあ、なんで俺がここにいるんだ?
俺、関係ないじゃん……。
そもそも俺の近くにチェットいなかったし……。
なんで俺がここにいるんだ?
……わかっていることはなんかのとばっちりを受けたってことだ。
まあ、黙ってればあの珍獣4体が勝手に状況を説明してくれるだろう。
この状況を理解していないのは俺だけじゃないしな。
「説明しよう。ここは――」
「いやいや、白虎はん、ちゃいますやろ。この前この場所の呼び名は4神の園に変わったやんけ」
白い虎が話し出始めるとすぐに赤い鳥が言葉をさえぎるように言った。
なんだこの内輪のノリ……。全然面白くないから端的に話してくれ!
「うるさい、ここは――」
「いや、ちゃいまんねん、朱雀やん。ここの呼び名は玄武とゆかいな仲間たちに決まったがな」
今度は黒いのがさえぎる。
普通に困っているように見えるんだけど……、こいつら何をしたいんだ?
「いんやーっ、ここば青龍とゆかいな仲間たちじゃながったっぺか?」
なんか龍だけ癖の方向性が違う!?
「青龍はん、玄武はんとネタ被りしとんじゃろい」
ネタ被り?
こっちはいきなりわけのわからないところに連れてこられて、わりと緊張してるんだけどあんまり気にしなくていいのか?
「んだ、やっちまったっべ」
「どうもありがとうございました」
最後は朱雀、玄武、青龍が声をそろえて言った。
なんなのこいつら!全然話が進まないんだけど!
呼び名なんてどうでもいいだろ。ここはどこで何をすればいいんだ!
こっちは忙しいんだぞ!あと3日しかなんだから!
というか途中からやってた意味不明な漫才止めろ!
面白くないだけじゃなくウザい!特ににわか方言がうぜぇ……。
何で今ので笑えるのか、後ろで腹を抱えているチェットとクレサが一番わからない。
再びいらいらした様子の白虎が語りだす。
すべてがネタと言うわけではないようだ。
「ここは勇者の証を持つものが転送される、真の意味での勇者の試練の場である」
勇者の証を持つ者が転送される?
俺もクレサも持ってないぞ?
「勇者の証を手に入れたものとその仲間はここに特殊送還される」
俺は仲間枠ってことか。
……俺はともかくクレサはとばっちりだな。
「一度入ったらここの試練をすべてクリアするまで外に出ることはできない。云わば――。」
「んだ、オラ岩場で思い出したんだどもー、海に生えてるフジツボあるべ?」
青い龍が急に話し始めた。急に何の話だ?
「あれさ、上に膝ばつぐど膝にびっしりフジツボ生えるって話知ってかー?オラ、聞いた時から海の岩場さ近寄ったことねーんだ!」
本当になんの話!?
「いや、青龍はん、あんた普段から浮いとるやろ!」
いや、ツッコむところそこ!?
「その前にここ海がないがな」
それも違うだろ!
「どうもありがとうございました。」
お礼をするな!
まったく!ちょいちょいしょうもないコントはさんでくるな!
緊張感がなくなるだろ!
「今のはいいな!」
「本当ですわね!」
緊張感がなくなる一番の原因はチェットとクレサの笑い声だけども!
「――あー、うん。まあいいわ。」
白虎が再び口を開いたと思ったらなんか疲れてた。
可哀そうに……。俺には言いたいことが言えないお前の気持ちがよくわかる……。
「ええっと、次なんだっけ?そうそう試練の内容なんだけど、あそこに扉があるだろ。とりあえずあそこに行けばいいから!その先は感覚で察してな。以上説明終わり。それじゃまた会おう。さいなら。」
白虎がだいぶ早口でそう言うと姿を消した。
その後、他の3体もいわれのないお礼を言ってから目の前から消えた。
白虎、お前のイライラした気持ちはわかるとは言ったけども雑にやんなよ!
まあ、はじめからグダグダな感じはあったけども!
この不親切さから試練は始まっているのか?
でもまあ、要するに扉の先にある試練を一つ一つクリアしていけばいいんだろう。
どんな試練かわからんが他に脱出する方法もわからないし、とにかくやるしかないだろう。
俺の平穏な日々のために!そして、脱人間スピーカーのために!
それにしても試練ってなんなんだろうか。
この世界はわけがわからないからな。そもそもこの試練とやらが勇者の何を向上させるための試練なのかもわからん。
普通に考えたら戦いだよな。こういうときって。
戦うことで肉体的にも精神的にも成長するからな。
それに戦いなら俺は負けないしな。
またクイズなんてこともあるかもしれない。普通はないだろうけど、普通じゃないからな、この世界は。
前は問題も解答も意味不明だったから途中まで何とかなったけど。いや、今回はチーム戦だからそこまで厄介じゃないか。何よりチェットはそのクイズ大会で優勝できたから今、ここにいるわけだし。
そうだよ。そもそもこれは一人で何とかしないといけないわけじゃなくてわからないことがあれば助け合いながら進んでいけばいいんだ!
チェットには……、えーっと、あのー……、なんだろう、……話術とか?まあ、奴にもなんか長所の一つや二つくらいあるだろう。
クレサは……、え~と、クレサは……、はっ!そうだ!家事全般が得意だった!そうだそうだ。
皆の個性が発揮されればこの先どんな試練が待っていても何も怖くない!
……ってそんなわけあるか!
恐ろしいほど不安要素しかないな。
頼むから今挙がったやつのどれかが活かせる内容にしてくれー……。
どうにもならないお願いをしているとニタニタしながらチェットが近寄ってくる。
「さっきの奴ら面白かったな!相棒!」
あれに面白さを感じられるお前の余裕がうらやましいよ。
というか今朝の体調悪そうだったのは何だったの?
「俺もコントの台本書こうかなー」
どこで何するための台本だよ!?
絶対つまらないからやめろ!曖昧に言葉を濁したりしない、やめろ!
「相棒!一緒にやろうぜ!」
やるわけねーだろ!というかやれないし!
『いいえ』
俺のしゃべれる数少ない言葉の中に拒否する言葉があってよかった……、本当によかった。
ってそんなちっぽけなことに安心感を覚えている場合じゃない!
説明は受けてないけどここから出るためには試練を突破する必要があるはずだ。
と言うことは今すべきは試練の突破!
チェットを扉の前まで連れて行こうと振り返った時にはすでにチェットはクレサに話しかけていた。
「クレサちゃん!一緒にコントやろう!」
変わり身が早いな!
「……いやですわ」
そうだ!もっときっぱり言ってやれ!
「えー、でもさっきクレサちゃん笑ってたじゃん!」
俺のときはあっさり引いたのになんでクレサには粘るの?
「だって今はそんなことしている場合じゃありませんもの……」
その通りだ!
「ちょっとだけだよ!」
ちょっとでできるものじゃないだろ!
「本当ですかー?まあ、ちょっとだけならいいですけど……」
……ん?やるの!?
俺のことは完全に蚊帳の外で二人は本気でネタ合わせを始めた。
だって二人の目が笑ってなんだもん……。
チェットはなんかしきりに腕を振っている、おそらく突っ込みの練習だろう。
ド突き漫才やるの?少女相手に?
というかそもそも本気でネタを作っている場合か!
この試練がどのくらいの難しさなのかどのくらい続くものなのか
まったくわからないというのになんなんだこいつらのこの余裕は!
まあ、クレサの母親がいるという街に着きさえすれば一瞬で終わるからまだ大丈夫といえば大丈夫なんだけど、ギリギリと言うのも性に合わない。
こんな試練、速攻で終わらせてやる!
こいつらが試練にやる気を出すのを待つ必要もない。
試練の様子見もかねて俺は一人で先に進むことにした。
これ、勇者の試練なのに……。




