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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
占いババアと孫娘編
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占い7

 クレサが意気揚々と出ていき、俺とババアがこの部屋に取り残された。ババアはさっきから心配しているようで意味もなくしきりに指を動かしたり、目が宙を追っていたりしている。

 孫娘の独り立ちが心配なのはわかるが、まあ、ババアの心配事はこの際どうでもいい。俺も心配していることがある。さっきからチェットの姿が見えない。普通に考えればクレサについていったのだろう。それ自体はかまわない。問題はクレサのいない3日間、俺がこのババアの世話をするのかということだ。もはやそれは俺の試練じゃね?


 それにしても俺のことを見抜く……、いや、あれは見抜いたというよりも俺の左目と同じような能力だろう。この世界にはすごい奴がいたものだ。というか俺のこの左目って別に特別なものじゃなかったんだな……。名前があるということは以前にも誰かが使っていたということだ。俺に特別感はないのね……。せっかく戦闘能力最強でも全然使う場面ないし、勇者にもなれなかったしよ!そして、しゃべれないとか記憶ないとかそういう負の側面だけが今も元気に活躍中だし……。俺ってほんと何なんでしょうね。何しに俺はこの世界に連れてこられたんだ?


 心配でてんやわんやになっているババアを置き去りにして隣の部屋で紅茶を飲むことにした。この紅茶を飲んでいると気分が落ち着く。別に紅茶に詳しくないけど、古来より紅茶が親しまれて来たのは、リラックス効果があるからだろう。

 誰もいない静かで優雅な午後のティータイムを楽しむ。こんな落ち着いた昼下がりはいつ以来だろう。この時が止まったかのような感覚は結構好きだ。王宮で過ごしてたときは王宮のくせにサービスがよくなかったのはよく覚えている。


 しかし、そんな時間も長くは続かなかった。それから間もなくクレサが帰ってきたのだ。最初は忘れ物でもしたのかと思ったが、クレサの手には薬草と思しき草と領収証と思しき紙切れが握られていた。そして、そのままクレサはスキップで隣の部屋に入っていった。クレサの後からチェットが家に入ってくるところを見てようやく納得した。

 あれだな、メロス作戦を無に帰したあの魔法……。歩いていくもんだと思っていたから……。デジャブだ。

 握っているティーカップからはとめどなく湯気が立っている。成功してくれるのは嬉しいんだけども……。優雅なひととき……、それだけは許されない。


 ティーカップ片手にババアの部屋の入り口から中を覗く。ババアの前の机に薬草3コと領収証、そして、まぶしい笑顔を添えている。ババアは何が起こっているのか全く分かっていないようで呆然としたまま表情が固まっている。

 そもそも誰に相談してもいいってルールだったし、チェットが何しようと問題はないはずだ。だがまああの魔法はため息が出るほど便利だよな。今回はルールが文明の発展に追いついていなかっただけだ。というかあの魔法って結構マイナーなのな。


 やがて落ち着きを取り戻したババアが口を開く。

「……う、うむ、よ、よくぞ、この課題をクリアしたのう、クレサよ。どんな手を使ったのか知らぬがわしの時なんかは道が曖昧で街にたどり着くのに2日かかったり、途中でお金を落としてしまい働けるところを探したり、盗賊に襲われたり襲い返したりと大変だったもんじゃ……。わしが帰ってこれたのは1週間後じゃったというのに……。よくやったのう。しかし、それにしても10分とは……」

 ババアはしきりに首をかしげる。盗賊の件は経験談だったのね。

 でも、まあ、俺と発想が近いからかババアの気持ちはわかる。俺も前にあったしな。

もはやこちらの計画をどこから修正すればいいのかわからないレベルだもんな。すべてを度外視する必殺技だ。せっかく自分が1週間かけてできたことを難しくするために3日にしたのにな……。


 ババアはしばらく首をかしげていたが仕方あるまいとつぶやくと真剣なまなざしでクレサを見つめ直した。

「よいかクレサ。第2の試練じゃ。そこの裏山にアンデッドウルフという魔物が住んでおるのは知っておるな。そやつを狩ってくるのじゃ」

 次は狩猟クエストですか。俺が手伝えばこんな試練あってないようなものだからね。クレサが話し相手になるとわかった今、俺はババアの敵だ。はい、楽勝、楽勝。唯一の俺の得意分野だ。

 だがそれくらいはこのババアもわかっているはずだ。ババアの性格から考えてもすんなり終わるようなことはないはずだ。

「とは言ってもわしはついて行けんからのう。ただ倒してもわしにはわからん。そこでアンデッドウルフの飛び出た目玉をここに持ってくることでこの課題をクリアしたことにしようかのう」

 目玉を取って来る?それはぶっ殺してから目玉を切り取って持ってくればいいんだろ?やっぱり楽勝じゃん。

 ……いや待て、魔物って死ぬと消えるんじゃなかったか?と言うことは目玉を切り取るのは生きているうちってことか?……難しすぎるだろ!

 交渉で?そもそも魔物相手に会話って通じんのか?ボスクラスだと話はできていたがそいつがボスクラスじゃなければ終わりだ。眠らせたり麻痺させたりすればできるかもしれないけどそんなことできるの?

 どうすればいい……。難しすぎる。あれだ、難問かつ良問だ。

 ババアは不敵な笑みを浮かべている。腹立つな。それだけババアもクレサの結婚を反対するのに必死なのだろう。結婚する気はないがこの子はなんとしても連れていくからな。俺はもう人間スピーカーのジャンクリスナーではいられないのだ。


「期限は今日中じゃ。それじゃあ、スタートじゃ」

 ババアは元気よくあげた手を下す。

 制限時間が短すぎるだろ!やけを起こしたか、ババア!日が落ちたら真っ暗な森の中で捜索とか戦闘は無理だ。ということはその時点で終わりになるだろう。そうなるとあと3~4時間しかない。だがきっと突破口はあるはずだ。俺はもうあきらめない。今は何も思いつかないけど時間内に何とかするしかない。


 一方で勝手に意気込んでいた俺とは真逆でクレサはババアの話を聞いている最中からずっと黙りこくってしまっていて見るからに元気がない。クレサは少し肩を落としてそのまま何も言わずに外に出た。


「どうしたんだい、クレサちゃん?」

 チェットが心配そうにクレサに声をかける。あの自分本位野郎のチェットが他人を心配するだと?普段から俺にもそのくらいの気配りはしてくれ。

「先ほどおばあさまに出された課題なのですが、私が先ほど襲われていた魔物を狩ることですの。私の力ではおそらく倒せませんもの……」

 クレサは顔を上げ、えくぼを作ってチェットに返事するものの目が笑ってない。明らかな作り笑いを浮かべる。最初に会ったときの粗暴なやり取りは何だったのかと思うほどしおらしい。

「そういうことなら俺も行ってあげるよ。相棒も行くだろ?」

『はい』

 俺ははじめからそのつもりだけども。俺も俺の平穏のために全力を尽くさないと。


 俺の返事を聞くとクレサの顔が本物の笑顔に変わった。まったくかわいいんだから。

「それでは旦那様、チェットさんよろしくお願いします。」

「ああ、それじゃあ行こう!」

 チェットが意気揚々と歩き出し俺とクレサがついていく。クレサはもう自然な表情をしている。元気が出たようでよかった。

 そんな彼女に一つ言いたいことがある。旦那様はやめて、そしてたまには右の耳を塞いで俺の話も聞いて!

 あっ、2つだ。


 実質のリミットは3~4時間。なんとしてもアンデッドウルフとやらから目玉をそぎ落として持ち帰る。その為にはまず出会わなければ!敵はどんな奴なんだ?クレサが先ほど襲われてたとか言っていたが、先ほどと言うとまさかアンデッドウルフっていうのはあのゾンビ犬か!

 うげぇ、ってことはあいつの体の一部を取ってこなくちゃいけないの?あの臭くて汚い体から目玉を?どこに触るのも嫌、というか近寄るのも嫌なのに目玉を切り落とすなんて、それを持ち帰るなんてもっと嫌だ。他の部位じゃダメなのかよ。よりによって目玉って。あの飛び出てている奴だろ。


 今課題の全貌がようやく見えた。これは狩猟クエストではない。嫌がらせだ。

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