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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
占いババアと孫娘編
33/275

占い1

 色々あったこの街とはもうお別れだ。思い返せば牢屋に入れられたり、王宮に軟禁されたり、なんか知らないうちに有名人と勘違いされて外に出れば衆人環視にさらされて……。

 ……思い返すと不自由な思い出しかないな。

 もういいか。また来るかどうかもわからないし、これからどうなるのかすらまだわからない。だけどもこれだって今後なんかの足しになるかもしれない。これからのことはチェットとの旅を通して何か見つけようと思う。俺がこの世界に来た意味とかは俺をここに連れてきた奴らにはあるだろうけど、俺の生きる意味は世界が変わっても俺自身で見つける。


「おう、バフモッティ、もう行くのか……」

 不意に背後から声がかかる。大した用もないのに俺に話しかけてくるような奴はあいつしかいない。振り返るとそこにいたのはやはりサボッチャだった。

「ああ、お前ともお別れだ!清々するぜ!」

 俺に聞いたはずなんだが間髪入れずにそう答えたチェットの顔には嫌な奴に会っちまったと書かれているようだ。

 サボッチャは俺に聞いたんだし無視すればいいのに……。この先こいつはこうやって面倒なことに巻き込まれていくのだろう。


「お前に言ったじゃねぇんだけどな……、そう言えば勇者になったんだってな、おめでとう……ペッ」

 サボッチャは嫌味ったらしくそう言うと唾を吐いた。お前らは見てるこっちが恥ずかしくなるほど自分の気持ちに正直だな。不便なことにも小賢しく策を考える俺からすればその正直さが少し羨ましくもある。

「なんだよ!文句あんのか!?」

 チェットが今時珍しいヤンキーみたいな絡み方をする。前言撤回だ。精神レベルをここまで下げるのはごめんだ。勇者って幼稚園児でもなれるんだっけ?こいつら見た目は20歳ぐらいなのに中身はもうかれこれ16年ぐらい成長が止まってるんじゃないだろうか。しばらくお互いににらみ合っていたが、サボッチャが俺の方に向き直った。


「バフモッティ、お前も行くのか、寂しくなるぜ。せっかくだから言うけど、ありがとな!いろいろ話聞いてもらって」

 確かにお前には結構世話になったな。少し寂しい気持ちはやっぱり俺にもある。

 ……いや、そんなことないね!正確にはお前には世話にならされたな。どうでもいい話を聞かされたな!そして、その話が大体俺の中で生きてきてない。なんだかんだでお前の自己満に付き合わされてただけだったわ。

 人間ってうまいことできてるな……。


「あーあー、お前の話を聞かされるとか相棒が可哀そうだぜ」

 ……チェット、それ、わざと言ってるんじゃないんだよな?

「うるせえ。お前の話は俺のより面白くねぇじゃねえか!」

 お前らの話が面白いかを決めるのは俺だ!そして、どっちも面白くない!

「は?俺の話に比べたらお前の話なんかその辺の石ころだ!」

 なんだ石ころって?ありふれているという意味か?とりあえず目についたものを言っただけとかじゃねーよな?

「石ころだと?……クソ、ちょっと面白いな」

 はぁ?どこが!?

「わかったか!」

 チェットがいきり立つ。わかったかって何と分からせたかったんだ?石ころだってこと?

「ふん!それで、お前らはこれからどこ行くんだ?」

 確かにそうだ、そう言えばどこ行くのだろう。聞いてなかった、というか聞けなかった、自分のことで精一杯で、あと物理的に……。まあどこでもいいか、とりあえずどこでもついていくよ。それが今の俺のやりたいことだからさ。


「そんなの決まってるだろ!占いババアのところに行くんだよ!」

 あっ、決まってたのね。というか占いババア、どっかで聞いたな……。そうそう、王座の間で壁を修理していた時に嬉々としてチェットが語ってたんだった。確か上手い飯を作る孫娘がいるって言っていたような……。

 ……占いババアに関してなんか言ってたっけ?

 まあ、チェットが牢屋で食事抜きの拷問を受けて苦しんでいる俺を助ける前にわざわざ寄った場所だ。きっと占いババアっていうのはすごい人なのだろう。すごい人に会って、話をすれば俺の幅が広がってやりたいことが見つかるかもしれない。チェットのくせになかなかいいところを選ぶじゃないか!今から会うのが楽しみだ。



「占いババアには何度も世話になったからな。勇者の証の情報をくれただけじゃなくて――」

 何か思い出を語ろうとするチェットだったが、サボッチャはそれを遮るようにわざと声を荒げる。

「あっ、そうそう、聞いてくれよ!俺なんか連続ツボ粉砕事件の犯人として器物破損罪と傷害罪で左遷されることになっちまった。俺何もやってないのに……」

 ああ、あれね。結局言いくるめられちゃったのね……。その件に関しては本当に申し訳ないと思っている。懲戒処分にならなかっただけよかったのかもな。サボッチャ新しい街では幸せにな!


「だからこれからポロロンって街に行かなきゃ――」

「あっ、そうそう、相棒、もう行こうぜ。別れは済んだし」

 あからさまに不機嫌な顔で俺の袖を引っ張るチェット。まったく子供なんだから。意味は分かるけどあっ、そうそうからのもう行こうは変だろ。


「じゃあな、サ……、ア……、……じゃあな!」

 チェットが格好つけて手を挙げるが名前が出てこない。

 あれだけ一緒にいたのに結局名前覚えてないのかよ!こいつ名前2つもあるのに……。


「ケッ!じゃあな!バフモッティも今度会ったらまたよろしくな。ありがとう、楽しかったぜ!」

 笑顔で手を振るサボッチャに俺も手を振り返す。

 この街で最初に仲良くなったのはこいつだったな。確か最初は俺が買い物してる時にだったか。あそこでこいつに出会わなければ店長死んでたな。そう言えば結局カバン買ってねーじゃん!

 それから牢屋で俺の専属看守みたいになって……。断食させられた恨みは今もまだ消えてないけどな。

 そして、偽女王を倒したときは庇ってくれたよな……。こいつが庇ってくれたおかげでウェットンが死なずに済んだ。

 試練当日の朝に王宮で働くものを代表して指輪をプレゼントしてくれたな……。指輪に備わってる効果も、お前らが特別にかけた魔法も何の役にも立たなかったけれどな。

 最後はあの荒らされた部屋の事情を説明してくれたし……。トータル的にはあれで±ゼロってことで、いや、マイナスの方がでかいよな。マジでごめん。

 お前とは本当にいろいろあったけれどなんだかんだで俺も楽しかったよ。言葉にはならないし伝わらないと思うけど俺からも言わせてくれ!

 あり――


 急にガッとチェットに俺の手をつかまれる。チェットを見るとよく聞き取れないが何やらぶつぶつ言っていたが、言い終えると周りが急に光り出した。この感じ……前にも経験したことあるような……、昨日も見たような……。


 光の眩しさが強くなると同時に急に体が浮きあがる。例のあの魔法か……。一度行った街やら城やらに一瞬で行けるっていう……。この街に来たときは歩きだったし、てっきり占いババアのところにも歩いていくもんだと思っていたがこれがあるなら使わない手はないよな。道中チェットのどうでもいい長話を聞かなくて済むのはいいけれどさ。やるなら先に言えよ!


 サボッチャの何が起こっているのかわからずにいる間抜け面は、次の瞬間にはもう見えなくなった。


 周りの景色もよくわからない。これが移動によるものなのか……、いや、違う。これは目眩だ。低血圧だ!普段はない急激で連続的な上下運動をするとすぐに気分が悪くなる。

 ……すっかり忘れてたわ。視界も悪く、腹の底から得体のしれない何かが込み上げる。やばい、何か出そう……。


 こうして俺はお別れも半端なままいろいろあったロクルルエント王国の王都ユーゼンをあとにした。



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