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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
勇者の試練編
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試練13

 学者風の男ロビンソンがゆっくりこっちに向かってくる。俺は姿が見られないところに身を隠した。今回は自分からあの部屋に向かっているようだから特に俺の助力は必要あるまい。

 これでおそらくすべて終わるな。


「いったいどうしてダメなんだ!唾を反対から読むと○か×かだっていいじゃないか!」

 ダメだろ。それは○×クイズじゃねーよ。ただの二択問題だ。それに引っかかる人いないだろうし……。

「まったくこれだから頭の固い上の連中は!」

 いや、あの問題を考えたのが上の連中かは知らないけど、だいぶ頭が軟らかかったぞ。軟らかすぎて○×クイズになってなかったけどな。

「まったく……、ん!?なんだこれは!」

 大声を上げるロビンソン。部屋の惨状に気付いたに違いない。よし、いいぞ!

「なんでリンダさんが死んでるんですか!そしてなぜコリンさんがここに?いったいどういうことなんですか?説明してください!コリンさん!」

 ……ああ、まあ人が倒れてたら部屋が散らかってることよりも気になるよね……。というかこいつ、前の二人と知り合いだったのね……。同じ職場だしそういうもんか……。

「ロビンソンさんお母さん死んでな――」

「まさかその男がリンダさんを……」


 震え声のロビンソン。ここからじゃ中の様子がわからないから人の声色で脳内映像を補完しなくてはならないのがもどかしいな。サボッチャ茶化したいのに……そんな時間はないか。というかほんと話聞かないやつ多いな!


「俺じゃねーよ、まず死んでねーし、。第一、俺にこの人を傷つける理由もないだろ!」

「お前になくてもコリンさんはどうですかな?僕とリンダさんの結婚を嫌がってましたよね!それでその男に頼んでリンダさんを傷つけ、結婚を阻止しようとたくらんだということも考えられます」

 結婚?ロビンソンとリンダさんはそんな仲だったの?結構年離れてると思うぞ、15くらい……。まあ、ぶっちゃけどうでもいいけど……。


「だから違うって!この人は極端な血液恐怖症なの!勝手に倒れたんだよ!」

 必死な抵抗をするサボッチャ。お前のこと嫌いだけどこう面倒臭くなるとは思ってなかった……なんかごめんな。

「それは知っています。ですが、リンダさんをわざと血痕が付いた部屋に連れてきて精神的ダメージを与えたということも考えられます」

 さっきアホみたいな○×クイズを考えていたとは思えないほど頭が柔軟じゃんか……。


「違う違う!そんなのおかしいだろ!……俺がそんなことするわけない!必要もない!うまく言えないけど俺じゃない」

 がんばれ、サボッチャ。おかしい点はあるぞ!あの親子は仲いいんだから結婚を阻止するためにコリンさんがロビンソンじゃなくてリンダさんを狙ったりしないだろ。落ち着けサボッチャ、お前にかかってる!って前もこんなことあったような……、あの時結局どうなったけ……、確かあの時はチェットが強引に場を収めたんだっけ……大丈夫かな……。


「……うぅ……ひどい……、ロビンソンさん……。私が……、お母さんを……うぐっ……わざと傷つけるなんて……グスッ……そんなこと絶対しないのに……」

 いわれのない疑いに耐えられなかったのか泣き出すコリンさん。……泣き脅しか、その発想はなかった。というか通用するのか?こんなに怒ってるのに涙ひとつで解決とかないだろ。涙ひとつで許すとかないもんな。使えるなら今度使おう……。


「すみません、コリンさん。コリンさんがそんなことするわけなかった……。本当に疑ったりして申し訳ない」

 甘いな!イチコロかよ!急にどうした?未来の義理の娘に嫌われたくないってか!甘いな!俺も今度使おっかな……。いや、男の涙に需要はないか……。


「なんだかずいぶん女に甘いな!さてはお前普段からモテないんだろ!」

 おっ!だよなサボッチャ!後半はこっちに来てからの俺に余裕なさ過ぎて思い浮かばなかったけど。

「いえ、女に甘いわけじゃないです。ただ僕はデブが好きなだけ」


 ……!

 なんだそのカミングアウト!いらない衝撃第二弾だな……。そしてもうちょいオブラートに言おう……ぽっちゃりとかさ。本人いる前でデブってストレートすぎるだろ!


「というかそんなことは今はどうだっていいんですよ!そんなことよりあなたの話は何一つ信用できません。ん!というかそこにある粉々になったガラスの破片は何ですか?もしかしてツボを割った破片ですか?なるほど、ここ数日宮殿内を騒がしている連続ツボ粉砕事件の犯人はあなただったんですね。つまり、ツボを割ろうとした現場をリンダさんに目撃され口封じのために……といった感じですか。きっとそうだ。これならデブ二人は容疑者じゃないし、もっとも都合がいいシナリオだ」

 お前にとって都合がいいシナリオな……。

 そして、ごめん。その連続ツボ割り事件の犯人は俺でした……。結構問題視されてたのね……。なんかごめんなさい、そしてさっきも一個やっちゃいました……。


「違うその事件も俺じゃない!このガラスもツボじゃなくて酒瓶の破片だから!」

「酒?あなたまだ日も沈まないこんな時間からお酒を飲んでたとでもいうのですか?職務怠慢です!そういえば最近入った看守がよく持ち場を離れるせいで仕事にならないと看守長が頭を抱えていましたがあなたのことだったのですね」

 それは俺じゃありませんね。

「いや違う!その看守は俺のことかもしれないけど俺は今まで仕事中に酒を飲んだことはない!これを飲んでたのはウェットン近衛兵団長はじめ一部の近衛兵だけだ」

「よくもまあそんなにポンポンと嘘が並べられますね。」

「ほんとだって。ウェットンさんの先輩の近衛兵4人がウェットンさんの顔とかスピード出世とかが気に入らないとかでここで昼間から酔わせて仕事に支障を生み、失墜させようとしたんだけど、ウェットンさんの酒癖が思っていたより悪くて酔うとその場で剣を抜いて暴れだしたらしいんだ。まずいと思って取り押さえようとして返り討ちにあった4人の近衛兵は今も医務室で包帯グルグル巻きにされ、ウェットンさんは今事情聴取ということで王座の間で女王はじめ権力者に質問攻めにあってるんだ。」


 ああ!あの近衛兵たちが医務室で三流っぽいことしか叫んでなかったのはやってることが三流だったからか!納得!

 ……ってあれ?勇者の証は?


「この部屋で何があったかの話をしてるんじゃない!リンダさんがなぜ、ここで倒れているのか!その話をしているんです!今はデブに関すること以外の話をしないでいただきたい!」


 デブに関することはどうでもいい!勇者の証は?


「俺は知らない!その人は気づいたら勝手に入ってきて勝手に倒れたんだよ!何もしてない!」

「リンダさんのような家政婦がこの部屋に来るわけないでしょう!この先には関係者以外立ち入り禁止の研究室しかないしこのあたりの装飾は毎日我々研究班で掃除しているのですから!」

「ほんとだって!そういえばこの人もそんな感じで入ってきたぞ!」

「本当ですか?コリンさん?」

「……ええ、本当です」

「どうやって入ってきたんですか?」

「廊下で何か割れる音がしたから、きっと連続ツボ粉砕事件の犯人だと思って音がした方へ走っていたら突然誰かに視界を奪われて体を担がれて、そして、視界が戻ったと思ったらここにいました」

「その時リンダさんは?」

「この状態でした……」

「つまりあなたが気づいた時に意識があった人はこの男しかいなかったということですね」

「ええ、まあ」

「なるほどわかりました。ありがとうございます」

そう言うとロビンソンは不気味な笑い声をあげた。そして今までの丁寧な口調が一変、強い口調になって叫ぶ。

「つまりツボを割ったのを目撃され口封じのためにリンダさんを気絶させた。そのあと何を思ったかもう一度犯行に及んだ。そしてその割れた時の音を聞きつけたコリンさんから逃げきれないと思ったあなたは逆に彼女を連れ去りリンダさんと同じようにしようと……この屑野郎!」

 ロビンソンは上の連中に提案する前にもう少し考えたらよかったね。


「待て待て!お前の勝手な論理で俺を屑野郎呼ばわりとはずいぶんじゃないか!」

 声色から察するにサボッチャ地味に追い込まれてる?


「どう考えてもお前が怪しいだろ!」

「一番怪しいのはその人がここに来るまでの経緯じゃないのか?」

「そんなことはない!私はコリンさんの言うことは無条件で信じてますから。なぜなら彼女がデブだから」

「お前、私情が混じりすぎだろ!埒あかない。すみません、コリンさんこの人黙らせてもらえませんか?」

「ロビンソンさん、私もアイットバスさんがやったとは思えません。もうこのくらいでいいじゃないですか。やめましょう」

「デブは黙ってろ!続きは出るとこ出てやるぞ!罪の報いを受けるがいい!」


 ……すごい掌返しだ。


「さっきのはお前のために言ったんだが、そっちがその気ならいいだろう!赤っ恥かかせて二度と外を歩けないようにしてやる!」

 胸を張って部屋を出る二人。それを心配そうに見守るコリンさん。そして本人含め誰の意識もない可哀そうなリンダさん……。


 いやいや、人を憐れんでる時間は俺にはなかった。

 ええっと、さっきの話を要約するとこの部屋が散らかっている理由はウェットンが酒飲んで暴れたせい……。やっぱり勇者の「ゆ」の字も出てこなかったぞ!それじゃあ試練が始まった時にすでに持って行っていたというのか?

 もしくは王宮内にまだあるか……。でもこの王宮内は4日もかけて隅々まで探索したのにまだ探してない場所があるとは思えない。そうなるとそれは考えにくい。

 ウェットンが酔ってる時に使ったとか……。それもないか。そんなことしたら誰かが会場に来てそのことを報告するだろうし……。朝ここ出る前に立ち寄っておけばよかった……。

 ここで考えても仕方ない、あまり目立たずに盗むには保管場所を抑えるのが一番なんだが……、ここではないとなると……見当がつかない。とりあえず一旦試練会場に戻るか……。確実にあそこで渡すだろうし……。事前に盗んでおければよかったけど、ここまで来たら仕方ないな。

 足早に散らかった部屋を後にする。


 それにしてもさっきのはすごい超展開だったな。なるほどこれが冤罪か。俺が自白できればサボッチャもきっと無罪放免になるのに……、俺は『はい』と『いいえ』しか話せないからな。俺に尋問とかしてもきっと『はい』でも『いいえ』でも答えられない質問しかして来なくて結局黙秘状態になってサボッチャが不利になるというオチが見える。

 ……お前のこと嫌いだけどこの件はほんとごめん、そして、自分で何とかしてくれ。まあでも実際に何もしてないんだからきっと何とかなるだろう。上司が庇ってくれたり……、そういやいつも仕事サボってて上司に看守にクズ呼ばわりされてたような……。さっきも看守長が頭抱えてるとか言ってたし……。

 でも元上司のウェットンあたりが何とか……、聞いてた話じゃあいつ問題起こしたばかりだ。あの事件にウェットンの非がなくても酒飲んで暴れたって聞いたらきっと周りの目は厳しいものになるだろう……。照れ屋なウェットンには厳しい状況だな……

 でもあいつこの国の最高権力者と実は親子だし……単純に仲悪いんだった……。

 自分で自分を弁護して……、偽女王を倒してウェットンが斬りつけてきたとき結局サボッチャは口では何の役に立ってなかったな……。

 ……俺から言えることは、サボッチャ幸せにな!


 そうこう考えてるうちに会場にたどり着いた。


 はい、懺悔終了!悪いが俺の戦いはまだ終わってない!

 最後まであきらめないぞ!


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