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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
勇者の試練編
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試練11

 わざとにしろ無意識にしろサボッチャがすぐにあの部屋の惨事を語りだすとは考えにくい。

 サボッチャから端的に欲しい情報を聞き出す方法として考えられるのは3つか……。


①片づけを手伝いながら適当なものをつかんで首をかしげる。

 そこでサボッチャがそれはここで何とかがあって、その時に使われたんだよとか言い出せばすべてが芋蔓方式で情報を引き出せるというもの。

 いや、リアクション系の成功率は極めて低い。サボッチャにしろ、チェットにしろ、俺の演技に気付けた奴はいまだかつていない……。俺の演技が下手なのかもしれないけどそれを差し引いてもあいつら自分本位すぎるだろ。


②部屋で暴れる

 あの散らかりっぷりから推測するに誰かが争ったのは確実だ。つまり俺が暴れることでサボッチャがあの事件を再現しようとしてるのかとか言いだせばすべてが芋蔓方式で情報を引き出せるというもの。

 ……いや普通に怒られる。掃除している人の横で散らかしたらそりゃあ怒られるだろう。もしかしたらあいつなら仕事が増えたぜとか言って喜ぶかもしれないがそれが部屋の惨事を語りだすきっかけにはなりにくい。


③会話の中で聞き出す

 俺の使える言葉は『はい』と『いいえ』と肉体言語のみ……。いやいや、これで行けるなら初めから苦労はないわ!


 いい方法が全然思いつかない。まずいぞ、早くしないと試練が終わっちまう。誰かが使っちまえば次に手に入れるのに相当時間がかかるだろう。なんとしてもこの機会に手に入れたい。

 何かないか、要はこっちからサボッチャに質問できれば一発OKなんだけど……。


 あっ!その一瞬の閃きが全身に電流が流れたように背筋を伸ばす。

 そうだ、別に俺が直接やらなてもいいんだ! 誰かに質問させてその返答を聞ければ結局同じことだ!

 普通の人が何も知らずにいきなりあんなに散らかされた部屋に連れてこられたら、どうしてこうなったか聞きたくなるのが普通だろう。そこに人がいれば自然と質問するはずだ!それが一方通行おしゃべり野郎だったとしても!


 そうなると人選だな……。

 条件としてはこの事件について知らない人だな。まあ近衛兵と医療班以外は知らないだろう。この城に入ってきたときの様子からどこかあわただしい雰囲気は感じられなかったし、噂話をしている雰囲気もなかった。それでいてちゃんと質問する人だサボッチャに質問しなければ何も始まらない。幸い、王宮勤めの人の特徴は大体わかる。誰かさんが子守歌とモーニングコールの代わりに毎日毎日飽きもせずに何も言わない俺に語っていたからな。

 そして、その人選で最も大事な条件は『はい』と『いいえ』以外の言葉を発声できる人。

 ……まあ、これは大丈夫か。


 よし、これで行こう!さっそく俺は王宮内の人気のないところを見回る。誰でもいいからエンカウントしないかな……。

 そう思った矢先におばさんが通路の前を歩いているところが見えた。周りには誰もいない。どうやらまだこちらには気づいていないようだ。なんか廊下の壁沿いに飾られている高級そうなツボをせっせと磨いている。 


 あの人は……確か

 リンダさん(54)

 職業:家政婦

 趣味:日光浴

 特技:リンボーダンス

 外見:白髪混じりの茶髪ポニーテールに体型は肥満体質。王宮内にいるときは常に白いエプロンをつけている。

 特徴:性格は陽気だがスイッチが入ると仕事に取り組む姿勢は誰よりも真剣に誰よりも手際よくこなす。娘も同じ職場で働いているのが親として誇らしいらしい。血が苦手。

 (※チェット情報まとめ)

 

 この人は結構頻繁に出てきて結構情報があるから印象に残っている。

 ……というかどういう話し方をしたらこういうことを聞き出せるんだ?あいつ、このことに関しては天才だよ。


 まあ、いい。なんにせよ、あの人は事件のことを知らないはずだ。王宮の一室が荒らされているという面白そうな話題を誰にも話さずに仕事に取り組むなんて普通のおばさんには絶対に無理だ。誰かとおしゃべりするに決まっている。

 この人を連れて行こう!

 どうやって連れていくか……。口で説明すんのは無理だし……、手を引いていくのはサボッチャに俺の姿を見られるとたぶん俺の方に来るからそれは避けたいし……。ちょっと重そうだけど担ぎ上げて部屋に放り投げるか。誰かに姿を見られなければ担いだり投げたりしても何も問題ない。


 俺はスッとリンダさんの背後をとるとそのまま左手で目を、右手で口を抑え、リンダさんの腰を俺の肩にかけ、てこの原理で担ぎ上げる。逆エビのような体勢のまま担ぎ上げ颯爽とあの部屋に走った。じたばた暴れるたびに肩に衝撃が走る。この世界に来て一番痛い。魔物との戦闘以上のダメージだ。部屋に着くと足から降ろし部屋の中に向かって背中を押した。さすがに投げ飛ばすのは俺の良心が痛んだ。俺はすぐさま部屋のドアの裏に姿を隠し中の様子に耳を傾ける。


「いたたた……。今のは何かしら、もう!……ってここどこよ!」

「ここは――」

 ものすごく早口でしゃべりだすリンダさんに対して自分の言いたいことを完全に遮られるサボッチャ。

「ここ、会議室じゃないの!なんでこんなに散らかってるの!」

 いい質問だ、それを待っていた。

「それは――」

「あなたがここの掃除の人?」

 言わせろよ!

「はい、そう――」

「掃除はちんたらやってたら駄目よ!手伝ってあげるからチャッチャと終らせなさい!」

 聞けよ!

「……ありが――」

「しっかし、なんでこんなに散らかってるの!ん、何かしらこの赤いの全然汚れ落ちないんだけど……って血じゃない!ここにもあそこにも……、ああ……」

 という言葉が放たれた直後ドサッという音がする。体は隠したまま恐る恐る中をのぞいてみるとリンダさんが倒れていた。失神しているようだ。片づけなきゃいけないものが増えちまったみたいでごめんな、サボッチャ……。


 なんか一瞬で嵐が過ぎ去ったって感じだな。いやいや、そんなのんきなこと言ってる場合じゃねー、聞きたい情報は一つも手に入らなかったじゃねーか!それにチェットがリンダさんは血が苦手って言ってたけど失神するほどだったの!


 チェットが話していたリンダさんの情報がやけに多かった理由もなんとなくわかった。現場にいたら俺は退屈しないだろうな。普通に話せる人だったらストレスを思いっきりためることになるだろうけど。あのサボッチャが手も足も出ないなんて……。いや、口か。


 次だ次!リンダさんの反応を見るに王宮内にあまり広まってないという推測は間違いないだろう。

 とにかく血を見ても失神しない人を探さなければ!そんな人いっぱいいると思うけど……。

 勇者の証の所在探しに時間はかけられない。当たりが出るまでポンポン連れてくるぞ!


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