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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
勇者の試練編
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試練10

 振り向いた先にいたのはここ数週間で見慣れた男だった。

 ……俺はサボッチャにGPSで管理されているとでもいうのか?何の前触れもなくあらわれる人は最早こいつしかいない。それによく見ると剣と盾に見えたものはほうきとちりとりだった。


「どうしたんだ、バフモッティ。こんなところで?」

 お前がどうした!

 いや、お前が手に持っているものを見れば大方何しに来たかはわかる。雑用お疲れ様です!


「いや、バフモッティのことだ。知りたいのは俺のことだよな!」

 どこから来た!お前のことは一切興味ない。むしろ立ち去れ!

「俺はここの掃除だよ、まったく。まあちょうど仕事したかったところだったからよかったけどよ」

 知ってるよ!掃除以外何するんだって格好だけどな。


 いかんいかん、こいつの相手をしている暇はない。

 わからないのはこの状況……。この部屋は何でこんなに荒らされているんだ……。考えるよりも知っている奴に教えてもらうのが一番早いんだけど、如何せん俺の目の前にいる奴は知っていても無意識的にその話をしないだろうし、するとしても知りたくもない話を延々と繰り返した後ようやくその話を始めるものの本題に入っても内容を必要以上に盛る可能性が極めて高い。こいつの話を最後まで聞いていたら次の行動を起こすまでに最低1時間はかかってしまうに決まっている。誰かさんのように荒らされた部屋の掃除をさせられるほどの暇があればそれでもいいのだがあいにく俺には時間がない。

 何とか物的証拠から犯人の特定と勇者の証の行き先を推理しなければ……。


 城門からまっすぐこの部屋に来たけど、見た感じ他に荒らされている場所はなかった。ここで一番に引っかかるのはこの部屋だけということ。この部屋が勇者の証の試練の準備に使われていたということを知っていた人物が俺と同じようなことを考えて行動を起こした可能性が高い。


「何もしてないと実の母親のことを思い出しちまってよ。まさかね、女王やってるとは夢にも思わなくてさ。俺もうどうしたらいいかわかんない。そう思うだろ、バフモッティ!」

 ちょっと黙ってろ!

 散乱しているものはペン、紙、分厚い本、お菓子、机、椅子。ここまではわかるが床のところどころにこびりついて固まった血痕と粉々に粉砕されたガラスの破片が散らばっている。誰かがここで争ったと考えられる。

 関係ないがサボッチャは雑巾とバケツも用意した方がよいと考えられる。


「まだ育ての親にはこのこと話してないんだ。俺は育ての親にはものすごく感謝してるんだよ。実の親、女王はいまさら俺を引き取りたいとか言わないだろうし、そもそも俺が隠し子であることを誰にも言わないと思う。俺がこのまま黙っていれば今まで通りになるはずなんだ。変に事を荒立たせていらぬ心配をかけたくない。だから、お前もこのことは黙っててくれな!」

 俺はもともと何も言わない。というか言えない。

 だけど、残念ながらそのことは先ほど全国民が知ることとなった。まあ、ドンマイ!


 さてと、ここで人が争う理由があるとすれば何だ?仲間割れ……は考えにくいか。報酬の話でもめることがあってもここではやらない。そんなことはきっとアジトとか隠れ家とかお家に帰ってやるだろう。そうなると、近衛兵あたりが侵入者と争ったと考えるべきだ。そして、サボッチャの異様な落ち着きぶりを見るにこの事件は解決していると考えていいだろう。仮にまだ未解決なら現場を保存しようとするはずだしな。


「そういえば今朝渡した指輪は役に立っただろ!まさかこの国一番の頭脳を持ったブラウザ様が助けに来てくれるとは思わなかっただろ!」

 確かに、助けに来てくれたとはこれっぽちも思ってないな。そう言えば会場においてきてしまったが……、まあ、いいよな。勝手に帰っているだろう。

 さて、俺の推理をまとめると、俺が次に向かうべきは医務室だな。血の量からみて手当てが必要なレベルだ。俺の推理が正しければ必ずここで争った近衛兵がいるはずだ。事情はそいつから聴取しよう。よし考えはまとまった。

 あばよ、サボッチャ!お前にかまってる時間はないんでな!


「おい、待てよ!まだ話終わってないだろ!」

 明らかに不満な顔をしているサボッチャを後目に俺は風の残り香がするほどの全速力で医務室に向かった。

 牢屋でもないのにお前の話を聞くやつはなんていないんだよ!お前は一生鉄格子とおしゃべりしてろ!1分ぐらい考えていたのに結局この部屋のことは一つも話さなかったしな。まあ、そこは予想通りだったけどな!


 医務室に着くと4人の男が真っ白な包帯に赤い水玉模様のパジャマというコスチュームで身もだえしながらベッドの上に横たわっていた。男達はそのベッドの横に置いてある鎧から察するに近衛兵なのだろう。犯人は近衛兵4人を相手に起き上がれないほどのダメージを負わせられる強さを持っているということなのか。これは間違いなく事件が発生している。

「ぐわー、いてー。」

「ぬわー、ちょーいてー。」

「ぐべばー、いてーよー。」

「まじいてー、ウェットンめー。」

 こいつらアホみたいな叫び声を上げているが、表情を見るに本当に苦しそうだ。まあ、気休めにはならないが犯人を俺が……えっ?今なんて言った、……ウェットン?なんでウェットン?ウェットンが犯人なの?

 そんな馬鹿な。あの律義で真面目なウェットンが仲間を傷つけるなんてありえない!2週間同じ屋根の下で過ごしていたんだぞ、あいつがどういう人なのかわかっている。ウェットンが強盗をはたらくなんてそんなことあるわけがない!


 ……って、いやいや、そんなことはどうでもいいんだった。

 誰が犯人であの部屋で何が起こっていたとしてもそれはまったく関係ない。仮に犯人がウェットンであってもそれは問題ではない。勇者の証の場所、これさえわかればいいんだから。誰か勇者の証の場所を知っている人はいないのか。現場に居合わせていたであろう重症近衛兵ズはさっきから三下みたいなことしか叫ばないし、何より訊きに行ける雰囲気じゃない。というか聞き出せるだけの語彙が俺にはない。


 今までの情報を整理すると勇者の証を持っている可能性が一番高いのはウェットンだ。だけど本当にウェットンが仲間の近衛兵を傷つけ、勇者の証を持ち去ったとは思えない。ウェットンがこの事件に絡んでいるのは間違いないが何かしらの事情があったと考える方が妥当だ。勇者の証の場所を知るには、やはりあの荒らされていた部屋の謎を知ることが一番の近道になりそうだ。


 仮に本当に犯人がウェットンで勇者の証を巡って戦闘になったら1000%勝てるけどその後勇者の証の行方について説明するだけの体力を残してやれるかどうか。

 そういえば異世界に来たというのに戦いらしい戦いをしたのは偽女王を瞬殺した2週間前のあれっきりだ。いやあれは瞬殺だったからこの街に来る前の洞窟か。もうだいぶ昔な気がする。せっかく最強のステータスを持っているのに全然役に立ってない!体張るより頭使うことの方が圧倒的に多いんだけど!俺本当にこの世界に必要だったのかよ!

 ……おっとっと、愚痴ってる場合じゃない。今は時間が惜しいんだった。


 あの部屋の謎を解明するには自分で証拠を探すより知っている人に聞くのが手っ取り早い。サボッチャの様子から見て事件は解決済みだしな。ウェットンがいればいいんだけどどこにいるのかわからないし、会えても俺からこの話を振ることができないから、ウェットンがこの話に触れなかったら終わりだ。いや、これは誰でも一緒か。

 ということはつまり俺が誰かからこの事件の真相を聞き出すには、誰か事情通で引くほどおしゃべりなやつが勝手に話しているのを聞くしかないのか。そうなると真っ先に思い当たるのはチェットだが、あいつは今ここにはいない。となるともう一人……、いるにはいるけどもさっきものすごく後腐れある別れ方したあいつからうまく聞き出せるのだろうか?少なくとも最初はさっき何で急にどっか行ったんだよから始まって……。うん、絶望的だ。その話を聞くころには明日になってる。


 ……このままではいかん。何か策を講じなければ……。


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