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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
勇者の試練編
24/275

試練7

「正解は×だァァアアアア!現在確認済みの女王様のご子息はサブロ前王のみだから当然一人!」

 言い方よ!現在確認済みって女王を敬う気持ちはちゃんとあるのか?

「よって現在女王様は自分で自分を慰めるしかない人妻未亡人ですが今回の正解は1人で×です」

 この扱いは元平民だからか……。バカにされているように聞こえるけど……。まあ、色々と頑張れ、女王様……。


 仕方ない、切り替えよう……。確か勇者の証をつけた人は深い絶望を与えると死んで勇者の証が消えるんだよな……。この回で手に入れた人につきまとって深い絶望を与えることにするか……。


 そんな俺とは対照にとなりでブラウザはガッツポーズ付きで喜んでいる。

 正解じゃなかったんだよ……。自分の予想が当たったから?そもそもこの人、俺の助っ人で来たんじゃないの?この人一体なんなの?それに女王様とは仕事の都合上それなりに知り合いだったんじゃ?

 もうこいつはどうでもいい。会場の外で優勝者が決まるのを待つか……。


 そう思った矢先、叫びながら壇上に駆けあがる男がいた。チェットだった。

「な……なんですか、あなた。……私また誰かに様付けるの忘れてました?」

 そいつはファンクラブじゃないから大丈夫だよ。というかどんだけ怖いんだよ。もはや新手の新興宗教団体だな。

「様?いや、そうじゃなくてその答えはおかしい!だって、今の女王様の子供はその前王の他にもうひとりいるんだから!」

 さすがチェット!そう来ると思ってたぜ!

 当人たちがあんなに隠したがっていようとお前なら黙っていられないまい!


「いえ、そんなはずは……。我々の調査ではサブロ前王のみです。仮にいたとしてそれは誰ですか!?そのネタはどこから仕入れたんですか!?そして、あなたは誰ですか!?……どこかの誰かのファンクラブの人ではないですよね?」

「お前たちがいつ調べたのかは知らないが最近したんだ。あっ、俺はチェットだ。誰がって言われると名前は出てこないけどファンクは好きだ。おっと、そんなことよりもうひとりの子供の名前だよな。ええっと、サ……、サ……」

 ファンクラブってファンク、ラブじゃねーけどな。

「だからサブロ前王でしょ!」

「違うんだよ。サ……、サ……。ほかのやつからは違う名前で呼ばれてて。ア……、ア……。名前は出てこないけど今日も朝会ったんだ!ムカつくやつで……、そう、母ちゃんがデベソなんだ!」

 サボッチャのことは誰も知らんだろうが母ちゃんのことは国民全員が顔と名前一致するんだから……。結局、女王のことしか言えてねーし。

「仮にそうだったとしてもこの問題の正解が覆ることはないですよ。一般的な知識ではわからない答えですもの。きっとあなたにそれを言った人は結構位の高い人だったんでしょう。誰が言ってたんですか、そんなこと。」

 じゃあ、そもそもそんなアバウトなことを問題にすんな!

「俺の相棒が暴いたんだよ!」

 ここで俺!?

「誰です?相棒って?」

「この国ではなんだっけ……。バフなんちゃらって呼ばれている……あれ……。」

 チェット、お前、人の名前覚えるの苦手だったんだな。それで俺の時も適当に……。

 お前ほもう少し努力しろ!


 それはそれとしてどうにもならないだろ。今初めて知られた真実が正解ですって言われて誰が納得するんだよ。裁判じゃないんだから真実が必ずしも正解になるわけじゃないんだよ。

「もしかしてバフモッティ様ですか?」

「そうそれ!」

 ……まさかね。

「……ゴホン、ファンクラブ会員としてはバフモッティ様の功績は余すとこなく知らなければ!みなさま只今より30分の休憩とさせていただきます。そのあいだにトイレなどはお済ませください」

 そう言い終わるとメイクはチェットの手を握るとチェットは何かをブツブツ言うと光に包まれ高速で飛んでいった。あの魔法!というかここから王宮見えるし走っていけよ!贅沢か!


 これで女王様が認めれば正解が覆るのか……。メイク、バフモッティファンクラブに突然入るような流されやすい奴なのに、あいつに権限与えすぎじゃね?

 休憩時間長いし……。そんなに何度もトイレに行くか。


 30分後、あの2人が走って戻ってきた!そこは飛んでこいよ!

 ゼーゼー息を切らせながらメイクが壇上に上がると大きく深呼吸する。

「ハァハァ……。さっきの……、問題の……、正解は……、○だァァアアアア!、ハァハァ……。異論は認めません!」

 絶対異論ある人多いけどいいんだよな!


 チェットのおしゃべり病がここでも影をひそめないとは恐るべき自己主張野郎だな。頭は悪いが正義感が無駄にあるからな。数少ないあいつのいいところだ。

 それにしても、800人から50人なんて、敵が一気に消えて超ラッキーだ。チェット、お前にはホント頭が下がるよ!


「ところでチェットさん。バフモッティ様はどちらに?」

 おっと、そういう展開?ここで変に動いたら目立つよな。

「この人数だからちょっとわかんないな。俺も来るときはぐれちゃったし……。おーい、相棒!」

 おう、わかってないらしい。これは好都合。

「出てきませんね……」

 出て行くわけねーだろ!

「多分どこかにいると思うんだけど……。まぁ見つけたら言うわ!」

 マジかよ。俺が勇者の証を手に入れたら必然的にばれるじゃん。

「わかりました。ファンである前にこの試練の司会進行をしなくてはいけません。終わったら必ず紹介してください」

 お前、さっきも今も試練の進行よりもファンの方優先してるからな!あと紹介って何?俺と友達になりたいの?

「わかったよ!相棒は恥ずかしがり屋だからな」

 お前に何がわかる!好き勝手言いやがって!


 チェットはそういうと壇上から降りた。それを見届けてメイクは再びマイクを取った。

「さて次にいきますかね!次の問題はこれだァァアアアア!」

 メイクが箱の中から一枚の紙を取り出す。

「第三問!……おっと!これはスペシャル問題です!この方からの出題です。どうぞ!」

 メイクがそう言うと壇上にひとりの男が上る。顔はこの世界に来て何回も見ているワールドスタンダードフェイス。背丈は高くもなく低くもない。体型もデブとは言えないし細身とも言えない中肉中背ではっきり言って特徴がない。この人が出題するのか。外見的な特徴がわかれば、例えば戦士っぽいなら魔物に関する問題とか武器に関する問題とか魔法使いなら魔法に関する問題とか予測ができるが……、どう見ても普通の人だ。

 と言うことは日常生活から出てくる問題か?でもそれならメイクが自分で言えばいい話だ。

 ……わからん。


 そう思っていると男はポケットから何かを取り出す。……なんだろうか。光っているからきっと光沢のある何かだと思うが遠くてはっきりとはわからない。

 次の瞬間、男は空中に右手の親指でそれを弾き上げる。その動作からその何かがコインであることがわかった。コインはその男の上空2mほど上がったあと落ちてくる。男は手を交差させるとそれが落ちてくるタイミングで手を高速で動かし手を両サイドに伸ばす。落ちてくる途中でそれを掴み取ったらしい、下には落ちていない。

……まさかとは思うが次の問題って。


「さて、第三問!この男がコインを掴んだのはー、右手である!○か×かァァアアアア!」

 なんだそれ!?それ知能、関係ないだろうが!その問題を解くのに必要なのは知力じゃなくて視力じゃねぇか!

 見た目が普通すぎて特に注意して見てなかった。というかやる前になんか言えよ!いきなりやられてもわかんねぇよ!

 会場何のポジショニングで結構有利不利あるぞ!

 ここからだとそれがコインだったのかすら視覚的にはわからないのによ!


 近くにいたおっさんが顎に手を当てて頷きながら呟き始めた

「なるほど!こういう趣向か。予備知識はその人の人生に大きく影響を与える。普通に考えれば年を取っている方が人生経験が豊富な分多くを知っていることになる。こういう試練では年齢によって有利不利がわかれる。だがこの問題はある意味答えがわかっている問題だ。よく見てれば誰でもわかる問題。これはいい問題を作ったな~」

 ……本当にそうか?

 いろいろ言っていたが一番聞きたいのは本当にこれはいい問題か?


「こんな大舞台であのコイン投げを一発で成功させてということは十中八九とったのは利き手だろう」

 ……そんなことなくね?利き手でしか取れないなら初めから来なくね?

「つまり、この問題は利き手を判断する問題だ!そして、その利き手は右。なぜなら右手でコインを弾いたからだ!」

 おっさん、安直じゃね?なによりその考察を躊躇なくべらべら喋っちゃうのが一番安直じゃね!?


「いや待て、お前!あの人がコインを出したのは左だぞ。コインを右手で弾いたのはブラフで本当は左利きなのかもしれない。ポケットにものを入れるのは結構無意識だから使いやすい方に入れてしまう」

 何に我慢できなくなったのかは知らないがそのおっさんの隣にいたおっさんがしゃしゃり出てきてはしゃべり出した。

 ……それにしてもよく見てたな。

「だがそれを言うならあの人が壇上に上がった時に右手で前髪を上げていたぞ」

「それを言うなら壇上に上がる時に左足から踏み出していたぞ」

「それを言うなら……」

 お前らは一体どんだけ注意深く見てんだ?俺の気概が足らなかったの!?それが普通なの?

 いや、普通じゃねーよな。コインの行方をまず見ろよ!


 利き手云々ではなくもっと確実に見てた人はいないのか!?

「お悩みのようですな!バフモッティ殿!」

 ブラウザ、こいつ……。お前にはもうなにも期待してない。

「ならば仕方ない。教えて差し上げよう。この問題の答えは90%以上の確率で×じゃよ」

 はいはい……って90%以上!?ちゃんと見てたってことか?100%じゃないのが気になるが……。

「こんな問題、わしにとっては簡単じゃ!」

 マジ、助かります!

「人間の右手が占める人間の体の表面積の割合は数%でしかない。つまり、右手とそれ以外、頭とかお腹とか太ももとか、そういった右手以外の部位の方が圧倒的に多いのじゃ。そう考えればほぼ確実に×じゃ!」

 出たよ!期待した俺が馬鹿だったよ!右手以外って○×問題だからそういっただけで実際は右手か左手かだろうが!動作から見てもさ!

 さっきのが頭で取ったように見えたのか?

 さっきのが背中で取ったように見えたのか?

 

 この世界のやつらバカばっかりだな!

 もういい。落ち着かなくては、いや落ち着いてもわからん。

 いや待て。

 一番前ならもしかしたら見えたんじゃないか?ここはステージから遠めだ。さっきの問題の時チェットが壇上に上がるのを見越してとばっちりを食わないように後ろの方に隠れてたから……。前にいたやつらはどっちに移動した?


「さーて、5分経ちました。」

 メイクの声が会場中に響き渡る。俺は結局○を選んだ。理由は前の方にいたやつらがだいたいこっちにいたから……。

 問題が問題なら回答も回答も……。


「それでは答えを発表させていただきます!答えはドゥルルルルル!」

 三度目の口でのドラムロール……。


 正解を待つ高揚感や期待感よりも疲労感の面から頼む。

 早くしてくれ!


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