試練6
メイクは大きく深呼吸すると呼吸を止める。
何の情報もなく正解か不正解かを問われる2択でも正解発表前は緊張する。
メイクは溜めていた息を一気に吐き出しながら叫ぶ。
「正解は×だァァアアアア!」
よっしゃあ!当たった!この小学生のレクレーションみたいなふざけた回答形式に万歳!でも結構ドキドキしてた自分……。
「よっしゃ!」
となりでガッツポーズ付きで喜ぶブラウザ……。あなたの予想は当たってないよ!正解の方にいるから?
それにしてもこの人一体なんなの?
ちょっとさめた。
メイクが解説を始める。
「オオキナ宮殿はアルカジア王国の宮殿ですね。これは当然違います」
当然違うって……、じゃあ、問題にすんなよ!
「ヒロイ宮殿は確かにこの国の宮殿の名前でしたが、2週間前に改築されたことをきっかけに名前も3日前に変わりました」
えっ!じゃあ結構な引掛け問題だったの?2週間前に改築って最近じゃん!2週間前はちょうど牢屋にいたときか、それとも軟禁状態のときか……。でも、なんか工事しているような音が聞こえてきたことはなかったけどな……。もしかして、俺たちがこの街に来る直前か?
いや、工事よりも名前が3日前に変わった?そんな話、聞いてないけどな。
「現在の宮殿の名前はバフモッピロイ宮殿です」
……バフモッピロイってなんだ!?ただでさえダサかったのにさらにダサいぞ!しかも、バフモッピロイの「バフモッ」ってバフモッティの「バフモッ」だろ!
宮殿の名前に世間の動きを機敏に取り入れるなよ。もっと歴史を大事にしろ!
「今話題のバフモッティが……、ゴホン……、バフモッティ様が王座の間の壁を改築なさってくれたのです!それを経て、ここ数日人が変わったように働かれている女王様に我々バフモッティ様ファンクラブの提案した改名案を採用していただき、現在の名前となりました」
……まさかとは思うがあの偽女王を倒したときに壊れた壁のことを言ってんの?暇だったから仕方なくやらされてただけだし……。
「感激のあまり涙が……」
そして、メイクの洗脳が……。お前さっき入ったんだよな、そのファンクラブに……。
いやでも、こんなんで名前を変えてたら今頃ものすごい長い名前になってんじゃねぇの。変更から施行までの期間も短いし。国民はこの国に対して何か思うところはないの?
「俺新聞読んでないけど楽勝だよな、この問題。簡単すぎてやる意味あったのかって感じだわ」
「バフモッピロイってなんか響きがいいよね!バフモッピロイ宮殿、最高!」
「王座の間を少しでいいから一般開放していただけないかしらねぇ」
「この国に生まれてホント良かった」
周りの人々の声に耳を傾けるとさまざまな意見が聞こえてきた。
どんだけだよ。何、この適応力の高さ!
こんな簡単に改名しちゃっていいの!ロクルルエントの歴史はどうなってんの?
「そうだった。俺、ロクルルエント王国民失格だ……。」
「3日前に改名したんじゃしょうがないな……。」
不正解だった人々でさえこの反応……。3日前はしょうがなくない。怒っていいぞ!失格じゃないぞ!
わかったことはこの世界の人たちの許容力の高さがパナイ。
「さて、バフモッティ様の偉大さが伝わったところで次にいきますかね!次の問題はこれだァァアアアア!」
全然伝わってないけど……、もういいわ。次の問題に集中しよう。一問目がこれではこの先何が起こるかわからんからな。
再びメイクが箱の中から一枚の紙を取り出す。
「第二問!現ロクルルエント王国国王、メーレス女王陛下のご子息は2人である。○か×かァァアアアア!」
……痛いとこついてきやがる。ピンポイントで痛いとこついてきやがる……。何でこんな問題作った?
一般的に周知されているのはサブロ前王の一人で×だっただろう。だが、実は隠し子であるサボッチャがいる。問題はサボッチャの存在が世間にどの程度認知されているのかってことだ?3日前に改名された宮殿の問題で正解が変わったぐらいだからおそらく誰かが一度でも言っていたら○だ。
そして、残念なことにこの宮殿の名前が変わったことも知らない俺の情弱っぷりではそれを聞いたことはない。
だけどあの二人はそのことを忘れたくて仕事に熱中してたからな……。その影響が宮殿の名前とか残念な方に出ちゃってるが……、いくらおしゃべりなサボッチャでもさすがに自分からこのことは言うまい。
となると○でいいような気もするが問題はもうひとりの伏兵……チェット。
そういえばあいつ寝る前と起きた時に話してたのは全部あいつが聞いた話であいつが何を話したかを話してなかったな……、適当に聞いてたから覚えてないだけかもしれないけど……。この問題でこんなに迷ってんのは俺だけじゃね……。
チェットが見つかればわかるんだけどまだ800人ぐらいいてチェットがどこにいるのかわからない。
……いや待てよ。確かにこの問題で困っているとすれば俺だけ。
周りの人にとっては簡単なんじゃ……。
「女王様に子供っていたっけ?」
「いたじゃない!サ……サ……。いたじゃない!」
「いたいた。サ……サ……。いたわ、いたいた」
「問題は女王様が若くして未亡人になったってことよね……。2人と言わず4人も5人もってことも……。う~ん、この問題も難問かつ良問よね……」
サブロ前王の認知度……。
サボッチャの存在は知らないっぽいな。知ってたら話題騒然だもんな。サボッチャのことは考えなくてもいいっぽい。
そして、新たに生まれたのが問題は……2人より多い可能性もあるってこと!
「お悩みのようですな!バフモッティ殿!」
……ってブラウザ!待ちくたびれたみたいな顔をしてその爺さんは声を掛けてきた。
さっきので存在を無視していたけど、ブラウザってこの国で昔大臣やってたんだっけ。
なら簡単じゃん!普通に考えて出産前は外見的に大きな特徴がある。魔物じゃきっと染色体の数が違うから子供を産めないだろう。偽物事件前までの女王がサブロ前王以外に産んだかわかるはず!
「ならば仕方ない。教えて差し上げよう。この問題の答えは×じゃよ」
へぇ!2人以上、もしくは産んでないってことか
「こんな問題、わしにとっては簡単じゃ!」
マジ助かります!
まさか実は頼りになる人材を送り込んでくれるなんて……。
あいつらほんのちょっと見直した!
「わしが大臣をやってる時にロクルルエント王国の出産率のデータを見たことがあるのじゃ。ロクルルエント王国の成人女性の出生率は0人が20%、1人が25%、2人が27%、3人以上が28%、つまり73%の確率で×じゃ!」
出た!また確率論!一般論は今関係ないんだよ!女王の話なの!何言ってんだこいつは!同じところで仕事してたんじゃないのかよ!
……結局あてにならん。
……どうしよう。落ち着かなくては、いや落ち着いてもわからん。
いや、待て。牢屋にいるときあの人サボッチャの心配しかしてなかったな……。サブロ前王は既に亡くなっているからともかく昔生き別れになったサボッチャだけを……。そんな人がほかに何人も子供を産んでるとは思えない。つまり2人ってことになる。
……○にしよう。
サボッチャが本物の子供だと世間に認知されていなくてもそれを知っている俺だけはそれを否定してはいけない気がする。これで負けたら……仕方ない。ほかの方法を考えるか……。
ブラウザが言ったほうと違うほうに向かう俺を見てその爺さんはキョトンとしているが何も気にせず○サイドへ向かう。
「さーて、5分経ちました。」
メイクの声が会場中に響き渡る。
ほとんどが×サイドにいて、○サイドにいるのはせいぜい50人くらい。探すとチェットもこっちにいた。
正解が×で問題の答えとして外れでもあんたらは親子だ!それは絶対だ。
「それでは答えを発表させていただきます!答えはドゥルルルルル!」
口でドラムロール……、2度目だがダサい。どうにでもなっただろ……。
さあ、正解はどっちだ!?




