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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
勇者の試練編
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試練3

 盛大なお見送りをされ、決戦の場所へと向かう。

 それにしてもなんだかこそばゆいな……。右手の小指にはめたダサい指輪をさすりながらそう思った。今までいいことなさすぎからのこれだからといって油断はいけない。ここで勇者の証を手に入れてやっとスタートラインだからな……。


 会場の場所はわからないがチェットの歩いていった方向となんか強そうな人が歩いていく方向が同じだし、適当にそれっぽい人についていけばたどり着けるだろう。だが、そんなことよりも会場に向かう途中チラチラと目に留まる人たちがいる。……気になる。

 会場に近づくにつれてそういう人が増えていく。……かなり気になる。

 会場に着くとそこにいる人の約半分以上がなぜか俺と同じ格好をしていた。いったいどういうことなんだ?この茶緑色のローブってもしかしてこの世界のトレンドなのか!?

いや、それまでこのダサいローブを見にまとまっていた奴は俺以外にいなかった。


 とはいってもワケを聞こうにも聞けないしな。気になってしょうがない。あれをおしゃれと思って着ている奴はいないだろう……。仮にそうだったらこの国のファッション誌を見て笑ってやりたい。

 安売りでもしていたのか?汚れてもいい服をこの街で買ったら他の連中と被ったとか?いや、それはないか……。


 俺が王宮内にとどまっていたあいだに何があったのか……。

 すでに会場と思しき場所には着いた。大きなステージがあるし、照明とか大掛かりなセッティングもあるし間違いないだろう。後は進行の人が現れれば勝手に話は進んでいくだろう。


 開始時刻もわからないが何だか無駄に人が多い場所が窮屈だったのでとりあえず会場の近くにある公園に移動した。本気で走れば10秒もかからないだろうし、何か事が起きてから駆けつけても大丈夫だろう。

 特にやることもないので公園のベンチに腰をかけていると不意に後ろから声を掛けられた。

「おう、あんた!」

 振り返るとダサいローブの男がいた。よく見ても知らないお兄さんだった。というかなんで後ろから声かけるの!ベンチなんだから正面からずれるとしてもせめて90度だろ

「あんたもバフモッティ様のファンでコスプレしてんのか?」

 ……こいつ、何をわけのわからんことを。というか様ってなんだ?サボッチャは完全に呼び捨てだったけど……。


「俺はバフモッティ様ファンクラブ会員No.01001だ。スゲェだろ!1000番台だぜ!」

 なんだファンクラブって!

 というか1000番台ってどういうこと?1000人以上いるの?というか1000番台で自慢になんの!?

 そもそもバフモッティって盗賊だろ!?お前もつかまれ!罪状は騒音罪!


「おい、お前、何やってんだ!会員証を出されたら自分の会員証を出すのがバフモッティ様ファンクラブ界の常識だろ!」

 持ってねぇよ!なんで俺が持ってんだよ!そもそもいらねぇよ!どこの世界の常識だよ!

「おい、もしかして持ってないのか?」

 急に心配そうな声のトーンになる。

 心配すんなよ!放っておけよ!

『はい』

「ま、まさかどこかで落としたとか?」

『いいえ』

 なにがまさかなのかは知らんがそっとしておいて欲しい。

「家に置いてきたとか?」

『いいえ』

 ぐいぐい来るな……。

「えっ、もしかしてまだ会員じゃないとか?」

『はい』

「なんだよ、会員じゃねーのかよ!じゃあ、非会員のくせにその格好すんなよな!」

 その会も非公式だろ?


 そう思った矢先、その男の後ろからこれまた俺と同じ格好をしていた知らない女が近づいてきてその男の頭を軽く殴った。その男に向かって強い口調で言葉を放つ。

「なにやってんの、あんたは!?何偉そうにしてんの!1000番台のくせに!」

 男が申し訳なさそうに頭を下げるのを見るとその女は俺に向き直った。

「すみません。コイツはまだ人間ができていないばっかりにご迷惑をおかけしました」

 殴られた男は少し涙目で「ごめん、ネェちゃん。あとは任せるよ」と言うと走ってどっかへ行ってしまった。

 男はどこかへいったが俺の苦難はまだ終わらなさそうだ。


「先ほどは身内がとんだ失礼をしました。私は先ほどのものの姉でバフモッティ様ファンクラブ会員No.00999です」

 さっき1000番台のくせにとか言ってたのにほとんど変わんねぇじゃんか!

「ところで非会員といえどその格好、あなたもバフモッティ様に興味がお有りのように見受けられますが……。いかがですか?会員などに興味はございませんか?」

 何?勧誘されてるの?そのファンクラブに?そのファンクラブのことは知らんがこれだけは言える。

『いいえ』

 そんなものに興味がある……訳が無い!


 朗らかだったその女の顔がさらに少し険しくなる。

「おやおや、興味がないだなんてご謙遜を!バフモッティ様というのは1000年前にこの世界に実在した大盗賊で、多くの警備隊を前にしても風のように姿を消し、捕らえることができた者はいないとされるほどの人物ですよ。バフモッティ様はそれからも――」

 ……バフモッティって1000年前の人だったの?じゃあ、俺がバフモッティなわけがないじゃん!

 まあ、これでこの試練の最中に会うことはなくなったな。

「――そして現在になり、彼は蘇ったのです!」

 いや、完全に人違いだろ!何を寝ぼけたことを言ってんだ、こいつも他の連中も!


「彼はあの時のように多くの近衛兵の前から風のように姿を消すという離れ業をやってのけた……。」

 いや、今回はともかくお前はあの時をしらねぇだろ!1000年前だぞ!

「しかもそれだけではなく現世に蘇ったバフモッティ様は盗賊としてではなく、牢に囚われた友を助けるために身代わりになる覚悟で現れた!そう、新聞に書かれていたのを見てバフモッティ様に対する国民の想いが変わり始め――」

 なんで新聞に載ってるんだろうねぇ……。

 まぁ、それは知っててもおかしくはないのか。チェットを公開処刑にしようとしてたくらいだからな。

「そして、我々の国の女王になりすましてこの国を牛耳ろうとしていた魔物の存在を暴き、そして、少ない手がかりから本物の女王様まで見つけ出した御方ナのです!」

 いや!それ!なんで知ってんだよ!秘密事項じゃなかったのかよ!

 俺の知る限りそれを新聞社にリークした可能性がある容疑者は二人いる!しかも結構軽いノリで、雑談のつもりで……。

 

 そういや王宮内でもなんか有名人みたいな感じの扱いだったような……。

「これほどのことを成し遂げる素晴らしき、知能、行動力を兼ね備えたものはほかにいません!まだ会員ではないあなたもこの会員になれば必ずバフモッティ様が我々を正しき道へ導いてくれるはず!今こそあなたもバフモッティ様ファンクラブに入り、その先にある我々の明るい未来に共に行きましょう!」

 行かねぇよ!もはやそれファンクラブじゃねぇから!バフモッティに人の道を正す力なんてないから!何をどう転んだらそういうことになるわけ!

 そもそもそのファンクラブの会員誰ひとり本人にあったことないじゃん!


「ねぇ、手続きは簡単だから!5分もあれば会員証発行できるから!年会費とかそんなのないから!あなたも会員になりましょう!」

 アホか!

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