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敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
因縁と魔法バトル
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バトル37

 急に休憩と言われても……。ずっと休憩時間みたいなもんだったからいざ言われると何していいかわからん。

 とりあえずフィールドの真ん中にいても審判が逆立ちしているだけでやることがないのでフィールドの外で嬉々としているクレサのもとへ向かう。本当に審判が逆立ちしているだけのこの時間が必要なのか……。もしかして求刑?


 まあ、どうでもいいや。とりあえずクレサでも見ながら暇をつぶそう。

「起きてください!チェットさん!私、やりましたわ!」

 クレサがアホみたいな面して寝ていたチェットの身体を揺らしながら叫んでいる。

 さっきまでクレサが勝っていたから、この戦いで俺たちが負けて3位決定戦に出るためには俺が負けて、さらにサドンデスで負けることが必要だった。サドンデスで負けるためには俺が出れば確実に負けれるから、出る気満々だったチェットには寝ててもらいたかったが、クレサが引き分けたらそれももう関係ない。

 そんなことよりもクレサが何をやった気になっているのかの方が気になる。

「ん?ああ、クレサちゃん……ん!クレサちゃん!試合は終わったの?」

「はい、終わりましたわ」

 寝てたから知らないだろうが終わったってもんじゃなかったぞ。クリア後の世界まで終わってる。

「えっ?いつ!?もしかして俺、寝てた?」

 自分が寝てたかくらいはわかるだろ。そしたら、いつ終わったかも大体わかるだろ。

「いつと言われると……、私も寝ていたのでわかりませんわ」

 ……そういやそうだね。なんだこの会話……。

「そう言えばクレサちゃん寝てたね……。えっ、寝てる間に決着がついたってことはもしかして負けちゃったの?」

 決着がついたときに寝てたら普通は負けたと思うよな……。

「いえ、私が負けるわけありませんわ!」

 どこにそんな自信があるんだか……。クレサの勝因は寝相がよかっただけだからな。

「そうか、じゃあ、勝ったんだね!」

「いえ、一度は勝ったんですけど……、勝負は引き分けになりましたわ」

 あのとき実際に何が起こったのか見てなかったら、何を言ってんだ、こいつってなるよな。

「そっか、引き分けかー!んー、なんとかいまから判定覆んないかなー」

 残念だけど覆った結果がそれだから……。と言うかなんで普通に受け入れてんの?

「えっ!?判定を覆すのですの?」

「いや、ごめん言ってみただけ。結果は結果だし、ちゃんと受け止めないとな」

 それはクレサに言ってくれ。あとあのいい加減な審判に……。

「ええ!でもこれで引き分け狙いのチェットさんのお願いに一歩近づきましたわ!」

 やっぱ、それが狙いか。

 俺とクレサの2戦で1勝1敗にすることでサドンデスにし、チェットの個人的な因縁につなぐ作戦だったのだが、クレサの余計な一手でかなり遠のいたよ。

 クレサの行動を見て確信したけど、俺に戦いを引き分けにできるだけの力はない。


「よくわかったよ。なあ、相棒!ちょっといいか?」

 クレサと面と向かって話していたチェットが俺を手招きしつつクレサと距離を取る。その表情はいつになく真面目だ。

 最初に言っておく。無理だ。

「相棒なら受け止めてくれるよな?アミンの仇もクレサちゃんの結果も俺の願いも、そして、青龍の……、えーっと、青龍の……。俺たちの思い!」

 青龍ないなら無理して入れるな!

「なんでクレサちゃん引き分けちまうんだよー。これで戦えなかったらどうしたらいんだよー。相棒、頼むよー」

 気持ちはわかるけども人に頼む前にお前が受け止めろよ、現実を!

 最初に言ってきたときはチェットの願いを聞いてやらんでもないかなってちょっとだけ思っていた。だからすぐに言い訳並べてラインアウトしなかったんだけど……。

 引き分けは無理!方法がわからん!

 時間制とかポイント制とかならやりようはあるかもしれないがこれは無理だろ……。

 まあ、できるだけ考えてやるけど、それでも引き分けにできなかったら3決に出るために負けるからな!


 控えの場所にいるとチェットの弱音がうるさいのでフィールドに戻り、立ち尽くしたまま考えを巡らせる。

 そもそもこの方式で引き分けになる状況って――。

「見てください!フォルゼさんが逆立ちしていますよ!」

 実況の楽しそうな声が聞こえてくる。うるせーな!

「10分間の逆立ちというのも大変ですからね。氷魔法で支えをつくったり、風魔法で自重を軽くできれば少しは楽なんですけどね」

 それはありなの?それは逆立ちしてるって言うの?

「フォルゼさんは炎魔法使いですからねー」

「炎魔法は汎用性が高く、多彩な攻撃を仕掛けることができるのが魅力ですが、こう言ったサポートが必要な場面では少し使用が難しいですよね」

 いや、知らんけど。

「そうなんですか?では炎魔法使いの場合はこういったサポートに徹しなければならないときにどういった立ち回りが必要なのでしょうか?」

 なんでこのタイミングで仕事し始めた?

「実際の戦闘では劣勢になって逃げようとする敵の退路を断つことで打ち損じを防ぐことができます」

 炎で敵を取り囲むってことか。というかなんでこいつは真面目に解説してんだ?今は休憩時間だろ?


「ん?すみません、討ち損じることがないというのはどういういいことがあるんですか?逃げるということは敵にはすでに戦意がないのではないですか?なら逃げられても大丈夫なような気がするんですが……」

「討ち損じた場合のデメリットとしては戦意を失っても他の仲間と合流すれば再び戦意を取り戻すことがあります。いや、その前に負けたという劣等感からタイプによっては最初の戦闘よりもさらに戦意がある場合もあります。死に物狂いで来る相手は何をするかわからないので対策を立てづらく、対応が後手に回る可能性も出てきます」

 そうだね。

「なるほど!それならあのときちゃんと倒しておけばってなりますね」

「ええ、それだけではありません。逃げられる前には必ず全部とはいかないまでもこちらの手の内をさらしてしまっています。次にそれに対して何らかの対策を練られた場合、非常に厄介です」

 そうだね。

「時間を与えれば相手は考えてしまうということですね。なるほどそういうことですか」

 わりとツッコむ余地がない。始めからちゃんと解説しろよな!

 まあ、これなら聞かなくてもわかるし、俺は引き分け作戦についてちゃんと考えられそうだ。


「ん?キュネさん、そういうことってなんですか?」

「あっ、すみません。昔祖父に言われた怒られる前に怒れっていう言葉の意味がわかりました」

 ……ん!?今なんかすごいこと言わなかった?

「怒られる前に怒る……ですか。どういう作戦かはわかりませんが音の響きはいいですね。食べられる前に食べろみたいで」

 いや、その言葉はそんなにいい響きじゃないだろ。卑しさが隠しきれてない。

「はい。だから気に入ってるんです」

 意味も大事にして!

「それで言葉の意味とは?」

「怒っていれば口調も早くなりますから相手はそれだけ言葉を選ぶ時間が無くなります。そうなれば墓穴を掘る可能性が出てきて結果的に短く済むということですね」

 火に油を注ぐだけだろ、それ。絶対に長くなるうえに疲労感も半端ないだろ。自分が墓穴掘る可能性もあるし、愚策もいいところだ。

「そうですね。怒られる前なら逆ギレというわけではないですね」

 お前は何の心配してんだ?

 やっぱり謎すぎるバカな話が出てきた……。それにいちいち反応してしまう俺も悪いけどさ、もう少し必要なことを考えてから喋れ!


「はい。大体炎魔法のサポートのいいところがわかりました。炎魔法って便利ですね」

 いや、さっきの話を聞いた感じ、まったく理解しているようには思えませんが……。

 いや、いいや。引き分け作戦について――。

「いや、その考えは危ないですよ。先ほどのもいつでも使えるというわけではありません。常に魔法の効果と言うのはいいところと悪いところが表裏一体なのです」

「そうなんですか?でも、その場で討てた方がいいんじゃないんですか?」

「まあ、それをお話しする前に炎魔法の特徴についてお話しします。炎魔法の最大の特徴は炎は酸素があれば自然に燃えるということです」

 ん?どういうこと?

「あー、なるほど。炎は酸素があれば自然に燃えるということですね」

 同じこと言っただけじゃねーか!

「はい。つまり他の属性魔法の場合ではその効力を維持するために魔力を消費し続けなければなりませんが、炎魔法の場合は大きさや規模、スケールなどをコントロールする場合を除き、魔力を使うのは発動時のみです」

 つまりあれか、魔力消費はマッチ棒を擦るときに使うけどもマッチが燃えている状態なら魔力を使わなくていいということか……。

「つまり、炎魔法の場合は大きさや規模、スケールなどをコントロールする場合を除き、魔力を使うのは発動時のみということですね。わかります」

 わかるんだったらさっきは流したんだが大きさと規模とスケールの違いを説明してくれ!

「ええ。有能な魔法使いならば炎をコントロールするためだけの最小の魔力で済むため、4属性でもっとも魔力効率がいいと言えます」

「いいことずくめですね」

 まあ、いいことかはともかく魔法は確かに奥深いな。もっといろいろわかればたぶんもっといい使い方がわかるんじゃないか?

 俺は魔法の使い方が未だにわからないんだけどね!俺は4つのうち何が使えるんだ?


「いえ、魔力の燃費を抑えようとすると炎魔法は近くにあるものを燃やしてしまうのであれが出てしまうんですよ。煙です」

「煙ですか?」

 煙か……。まあ、何かを燃やしてたら出てくるよな。

「ええ。それで仲間を呼ばれたこともあります」

 狼煙を挙げたってことか?それにしても本当に使い方に可能性があるよな、魔法って。

 マッチとかで火をつけて狼煙を上げられなくもないけど、すぐに火を大きくすることはできないし、マッチをこの世界で見たことがない。火の大きさを自在に操れるという能力は確かに便利だ。

「それはなかなか知恵が回るようですね」

「ええ。あの時はまさか我々に魔法を使わせて自分の退路を断つことで仲間を呼ぶという策を看破できませんでした」

 ん?魔法使ったのお前らかよ!敵を持ち上げて自分の愚かさを隠す作戦か?

「それじゃあ、あまり使いやすくはないですね」

「ええ。サポート向きではないですね」

 使ってるやつがポンコツなだけだと思う……。


「はい。そんなこんなで休憩時間は終了です。選手と審判はフィールド中央にお集りください」

 ってそんなこと考えてる場合じゃねー。

 何も思いついてない!

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