表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敵よりもミカタがやっかい!  作者: 気分屋
因縁と魔法バトル
101/275

バトル8

「俺がお前との戦いでまず最初に痛感したのは手数の少なさだった……」

 対戦相手は語り始めた。これまた長くなりそうな予感……。そして、何の収穫もなさそうな予感……。

「あれは学院時代にバイト先の製粉工場で働きながら新しい技のヒントになるものがないかと考えていたら、倉庫で誰かが喧嘩を始めてそれが原因で大爆発が起きた、そんな日のことだった」

 ……もしかしてお話終わった?

「あの時は驚いたよ。倉庫も事務所も吹っ飛んでいたからな」

 そんなわけないか。というかよく無事だったな!

「あのときは頭が真っ白になって……」

 まあ、そうなるよな……。いや、そうなるよなじゃねーよ!お前の当時の心情はどうでもいいから起こったことだけを淡々と説明してすぐに戦いを再開しろ!

「あの時は誰を恨めばいいのかわからなかった……。」

 ん?恨む?これ、粉塵爆発を知った話じゃないの?その状況に対してはかなり不謹慎だがそこは感謝するところなんじゃ?

「今月の家賃はどうすんだ、学費だってまだ納め終わってないのにこれじゃあ……ってね」

 そこかよ!当時のお前の経済状況なんざどうでもいいわ!

 おい!ここまで来たら回想は聞いてやるから粉塵爆発を知った経緯以外は喋んな!

「これは後でわかったことだが、喧嘩していたのは工場長と配送業者だった……。なんでも喧嘩していた原因は工場長が奥さんに買った高価な宝石を間違って小麦粉の中に入れてしまったらしくて、それが見つかるまで待ってくれと言っていたら揉みあいに……。いや、今は関係なかったな」

 そうだな!関係ないな!

「すまない、この話は忘れてくれ。頼む。絶対だ。絶対に忘れてくれよ!」

 何でそんなに必死なんだよ……。チェットを倒すことにもっと必死になれよ!


「それから数か月後、俺は無事に退院した」

 入院してたのかよ!全然無事じゃなかった!というか入院しないといけないような状態でよく学費の心配ができたな!

「しかし、退院したとは言っても最後のバイト代も入って来てないし、入院中は働くと言っても看護師さんへのちょっとしたイタズラ、要するに悪知恵しか働いておらず、手持ちの金は底をついていた」

 そういうのがいらないって言ってんの!

「食うにも困っていた俺はとりあえず工場に向かった。あのときの小麦粉がまだ落ちてないかと思ってね。そこで俺はあるものを見つけたおかげで俺は金の問題が解決した。それは何だと思う?」

 何?なんで急にクイズ形式?誰に聞いたの?チェットは氷漬けで聞いているように見えないし……。というか今絶好のチャンスじぇねーか!なんで攻撃しない?

 それにその答えは例の宝石だろ?そういうのいいから!誰もお前の話に食いついてねーから!話を早く終わらせろって!


「うーん、ノーヒントだと難しいですわね~、青龍はどう思いますの?」

 いや、隣に食いついている奴がいた。

「ん~、いんや、これはそんなに難しくねーべ」

「何言ってますの。私にも思い当たることくらいありますわ。ちょっとあなたを試しただけですわ!」

 何でこいつらこんなに楽しんでるの?あいつのトークショーになっていることに対してイライラしてるのは俺だけなの?


「俺があれだけ強く言ったからみんなはもう忘れているかもしれないな」

 対戦相手はフィールドを見回すとさも誰もわからないだろと言わんばかりの顔で言った。

 だから宝石だろ?というか忘れてくれって強く言われたら逆に忘れられなくね?

「青龍は何だと思いますの」

「んなの決まってんべ。話の流れがらどう考えでもあの日渡せなかっだ最後の給料袋だべ。もう一度ここさ来っことがあっだらこれだけは持っていげ的な話だべ」

 そんないい話じゃねーよ!別に事故の日が給料日ってわけでもないしな!

「え~、私てっきり工場長が新しい工場で働いていて雇ってもらうのかと思ってましたわ」

 ……それはもっとなくね?工場長は良くてまだ入院中だよ……。


 対戦相手はフィールド中央で大きく息を吸う。

「答えはー!ドゥルルルル」

 溜めんな!

「とその前に……」

 そう言ってチェットに近づいていく。なんだ?チェットの答えを聞くのか?たぶん「ん!」しか言わないと思うけどな。

「すまん、チェット。氷もらうぞ。思っていたよりも手が痛い」

 そう言うとチェットの体を覆っている氷に手を当てる。なんだこの光景……。その氷はそいつの雷魔法対策に出したんだものだよな?なんで手当に使われてんだ!なんでそれを目の前にいて何もしないんだ、お互いに!バカか!

「ああ、言い忘れていたが工場で見つけたのは宝石だ。あの工場長が残していったな」

 ああ、そう言えば正解発表の途中だったな……。というかそれは知ってんだよ!

「ほうせき?すごい偶然ですわね。元は鉱山だったのかしら……」

 あれ?クレサさん、本当に忘れてる?いや、きっと聞いてなかっただけだよな……。

「ずるいべ!さっき忘れてぐれって言ってだべ!」

 お前は夢中になりすぎだろ!青龍、お前は黙ってろ!

 まあ、奴の話もこれで金はできたしこれで……、いや、金ができただけだ。全然先が見えない!


「そして、俺はその宝石を売ったお金でパン屋を開いた。小麦粉はいっぱいあったしな」

 じゃあ、何でパン屋になったところから話さなかった……。工場の件全部いらねーじゃねーか!

「パンなんて作ったことがなかったが試行錯誤の末に究極のパンができた。生地に大量のキャベツと動物の肉を入れて鉄板で焼くという新しいパン……」

 それお好み焼きじゃね?試行錯誤した結果最初からパン屋じゃなくなったな。

「うちの主力商品はそれだけじゃない。」

 聞いてませんが……。

「究極に水を使わないパンを作った。細かい作り方は企業秘密だがエビに小麦粉をまぶして油で揚げるという全く新しいパン、通称エビパン!」

 それは天ぷらだ、海老の天ぷら!まずはパンなんだから揚げる前に焼けよ!何屋かは知らないがとりあえずパン屋ではないことはわかったわ。

「その年に学院も無事卒業。経営も順調だった。たぶん俺が書いた看板の文字がよかったのだろう」

 看板の文字?そう言えば字がきれいなんだったか、この人……。というか商品じゃねーのかよ。なら二つも紹介すんな!

「しかし、そんな順調な経営も長くは続かなかった……」

 だろうな。じゃなきゃ今こうして盗賊やってないもんな。

「まさかこの俺が、新しく始めた配達サービスの業者と喧嘩している最中に放った雷魔法が宙に舞った小麦粉に当たり、自分の店を吹っ飛ばすことになろうとは……」

 ああ、ここでやっと……。マジでさっきまでの話は何だったの?

「そのときは肉体強化魔法を使っていたから俺とそいつは何とか逃げられたが店はもうどうしようもない状態だった」

 まあ、一番残念なのはお前が自分の店でそんな能力全開で戦っていたことだけどな。

「そのときの、爆発を目の当たりにした俺はとても幸せな気持ちだった」

 ……いや、なんで!?

「この爆発をものにできれば俺はチェットを越えられると!長年探し求めてきた新しい力はこんなに近くにあったのかと……」

 どうなってんだ、こいつの頭は……。でもまあようやく話に終わりが見えた。

「しかし、そんな幸せはそう長く続かなかった」

 幸せ?何言ってんだ?家がないんだろ?

「爆発の原因を調べていた警備隊の連中にうちの店で使っていた小麦粉があの工場からの盗品だということをバレてしまい、その小麦粉はすべて国が没収。俺は気軽に練習することができなくなってしまった」

 練習している場合か!

「家を失い、仕事を失い、金もなく、身寄りもないだけでなく小麦粉まで……」

 そこに小麦粉を並べるな!

「そんな途方に暮れていた俺が、そうだ、工場から盗めなくなったのなら別のところから盗めばいい、いつでも練習ができる!と思うようになるのは自然な流れだった」

 いや、異常だよ!まず家と仕事を探せよ。安定した収入があれば小麦粉なんていくらでも買えるから!

「各地でパン屋や工場に忍び込んでは小麦粉を盗んだ。その噂がいつしかゲルナ様の耳に伝わり、俺はこうしてゲルナ盗賊団の一員となったわけだ」

 どんなわけだ!とりあえずお前は最初の工場とか店の前から一般的な思考が吹っ飛んでいたということはわかった。


「おっと、関係ないことまで話してしまったな……。」

 言いたいこと言い切ったよな。もはや関係あるところがどこなのかわからん。

「要するにだ。この粉塵爆発があればお前なんか屁でもないってことだ」

 さっきそれで火傷しただろ。今も手を冷やしてるし……。

「覚悟しろ!チェット!」

 いいんだよな?もう覚悟していいんだよな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ