バトル7
「自信満々の表情を浮かべるギャロットさん!いったい彼の発言の真意は!」
実況のボルテージが上がる。何にこんなに興奮しているんだ?まあ、気になることと言えば粉塵爆発だよな……。粉塵爆発は確か宙に舞う粉体に火が付くと連鎖的に燃え広がる現象だったはず……。だけど一般的に粉体が空間に充満してないと起こらないはず……。実際こんな海辺でそんなことができるとはとても思えない。もしかしたら何の脈絡もなくただ言ってみただけということも……。……いや、それはないと信じたい。
「ところで私、無知なものですみませんがカヅワさん。彼の言っているのはどういうことでしょうか?」
あれ?違うの?じゃあ、何が引っかかったの?
「ええ!?知らないのですか。粉塵爆発は粉塵爆発ですよ!爆発というからにはそれはもうすごいもんですよ!」
いや、あいつがポケットから出した程度の小麦粉ではそうはならんでしょ……。……さてはこいつ、これも知らないな。
「粉塵爆発?粉塵爆発は知ってますよ。見くびってもらっては困りますね。粉塵爆発ってあれですよね?あの~、なんか爆発するあれのことですよね?」
それは知っているとは言わないでしょ。
「そうです。なんか爆発するあれのことです」
あれってなんだよ!まあ、俺は知ってるし、間違った情報が伝わるよりはマシか。
「あっ、そうそう。確か水を加えて練った小麦粉を乾燥しないようにしておくとそれが爆発的に大きくなるっていうあれですよね」
それは発酵!全然違うわ!何より発酵しても爆発的には大きくならないしな!結局間違った情報が広まるのな!
「へぇー、あっ、そうです。そのあれのことです」
お前は解説者の仕事を受ける前にもっと勉強して来い!なんであんな奴を解説者として雇ったんだ……。
「ああ、よかった、確認しておいて!大見栄張って間違っていたら大衆の前で赤っ恥をかくところでした」
いや、残念だけど赤っ恥はもう避けられないよ。
「……あれ?」
解説者が何かに気付いた。訂正は早い方がいいぞ。
「じゃあ、粉塵爆発のことを知っているのにさっき言った彼の発言の真意はってどういう意味?」
解説者が実況の最初に振った話に戻す。それは粉塵爆発は普通に考えてここでは起きないってことじゃ……、いや、あいつ発酵のことだと思ってるんだった。でもどうせあれだろ?水はどうするのでしょうとか言い出すんだろ?水なんか加えたら粉塵爆発はもっとしなくなるわ!
「あっ、すみません。私が思ったのはああいう質問する人ってどういうつもりで言っているのでしょうかってことです」
えっ、急に何の話?。
実況者は続ける。
「これぐらい知ってんだろという挑戦的な意図があるのか、それともただの確認のつもりなのか……。もし知らなかったら説明する気なのですかね。でも説明するくらいならせっかく知らないんだしそのまま攻撃した方がいいと思うんですよ。戦いに関しては素人なのでよくわからないですけどあまり手の内をばらさない方がいいと思うんですよ――」
お前、それ散々やってたけどな!
「――それともただのお喋りなだけで口が動いてないと我慢できないのか……。」
それはお前だ!
「……さあ、どうでしょうね。私が戦いの最中に話しかけるのは無粋だと思っているタチなので……」
こいつら言ってることとやってることが全然違うじゃねーか。何だか知らんが急に場外ブーメ乱闘が始まった。
「あっ、いえ、戦いの最中だけじゃなくていいんですけどね。そんな質問する人ってどういうつもりなのかなって……。」
まだ続くの?
「ん~、どうだろう。人間の心理的な問題はちょっと専門外だな~」
逆にお前の専門は何だ!
「その質問に昔なんかあったの?」
掘り下げんな!
「そうなんですよ。ちょっと聞いてくださいよ!」
聞かん!話すな!
「え……、でも……、ここで?」
そうだよ、仕事しろよ!
「昔、元彼に『オレンジジュース買ってきて。オレンジジュース知ってるだろ?』って言われたことがあってー」
お構いなしか!
「あっ、なんだ、コイバナね!それなら聞くよ!」
何でだよ!
「そのときは何で私がオレンジジュース買いに行かないといけないのよ!って思っただけだったので別に気にしてなかったんですけど、あとでよくよく考えたらアレどう意味だったのって思ってー」
じゃあ、問題になってねーじゃん!今もアホみたいに考え続けてろ!
「あー、そういうことか。んー、その場合のそれは、んー、良く言えば間違いないようにという意味の念押し、悪く言えばこの程度できるよなという意味の挑発だね」
良く言えばっていうのはポジティブにとらえればって意味だろ?良く言ったときと悪く言ったときで意味そのものが変わってんじゃん。
あ~、本当はいちいち反応しなければいいんだよな……。でも、この世界のこと全然わからないのに俺は謎の話しかけられないし文字も読めないから情報を得るにはいろんな人が勝手に話している内容に聞き耳を立てなきゃいけない。情報源はそれしかないし、それはやめられない……。例え、大衆向けの話の中でさえ必要な情報、正しい情報がほとんどないとしても……。
とりあえずあいつらの実のある話はこれが決着するまではないだろうからチェットたちに集中しよう。粉塵爆発には確か条件があったはず……。確か空気中の酸素と関連があって粉の濃度が多すぎても少なすぎても発生しない……。屋外でも発生しないことはないがこんなに風がある場所では……。
あれ?そういえば風がない?さっきまでゲルナによって鬱陶しいまでに吹いていた風がいつの間にか止んでいる。ゲルナの魔法の効力が切れたからにしても妙に風がない。この場所は海に近く、絶えず潮風が吹いているはずなのに……。アホどもの会話に気を取られている隙に何があった?
考えられるのは2つ。
偶然この時間帯だけは風がないか、魔法で風を止めたか……。あいつが粉塵爆発を起こそうと思ったまさにその瞬間だけ都合よく風が止まる。そんなことがあるだろうか、いやない。となるとやはり魔法……。チェットは置いておいて、魔法は基本的に一人一系統だからあいつは使えないはず……。となると……、ゲルナの方を見ると何もないところで手を動かしている。明らかに何かしている。なるほど、これで空間を作るわけか……。って感心している場合か!結構大規模で爆発を起こすのか?だとしたらここも巻き込まれる可能性が高い。
「おいチェット。俺がお前に負けてからどんな思いでいたか知っているか?」
「カヅワさん、聞きました!また言いましたよ!知っているか?ってあれは一体どういう――」
入ってくんな!それ気にしてるのお前だけだから!
「このままじゃダメだ、俺にも新しい力が必要だと……。粉塵爆発を知ったのはそんなときだった」
何?回想するの?今から?早く戦えよ!
「まあ、まずはその前にこれを見てもらおうか!ザサンダー!」
そう言って小麦粉を投げると散り散りに舞ったかと思った刹那、大きな炎が起こる。規模も小さく、一瞬で粉塵爆発というよりは粉塵爆発の原理を利用して電気で火を起こしたと言った感じだな。タイミングとか雷魔法の強さとかあると思うが確かに火が出た。肉体強化もできるし、発電もできるだろうし……、雷魔法、かなり便利だな!
「俺は雷属性にして自在に炎を操れるのだ!アチャチャチャ」
そいつは思いっきり手を振りながらそう言った。どうやら小麦粉を投げた手を火傷したらしい……。結構手に近いところで火が出たもんな……。全然炎を操れてないじゃんか……。
「まあ、まだこの技は発展途上だ。だが、これから俺様のことはこう呼んでもらおう。雷光石火のライトニングイナズマの雷~粉塵爆発もあるよ~のギャロット様とな!」
なんだそれ、粉塵爆発に関しては実績的にそんな位置づけだろうけど、その異名は長い上にダサすぎる……。
というかデモンストレーションはいいから早く戦えよ!
チェット、お前もいつまで氷漬けになっているつもりだ?




