【Code1 イーグル】02
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ーーー二ヶ月後。
「えー、今日からこのクラスを受け持つ事になった、担任の十河だ。これから一年間、お前達の面倒を見て行くつもりだから、よろしく」
お前、どうやったらそんな体付きになるんだよ?ってくらい、ガタイ共に身長も180cm越えの十河と言う先生が俺たち2-C組の生徒に挨拶をする。眉間にシワを寄せ、赤ら様に強く発せられる言葉には、無意識に従わせる程の威圧感を感じ取れる。
それぞれ緊張のせいか、それとも元々そういう人達の集まりなのか、皆強張った顔つきで背筋をピンと伸ばしたままピクリとも動かない。かく言う俺も、恐らくその内の1人であろう。
皆、緊張していて当たり前なのだか。
それを見抜いたのか、先生は先程とは打って変わり、優しい口調で話し始めた。
「確かに、この超能力者育成学園『PTC』に受かるのに、超能力を持っていれば誰でも彼でも受かるわけでは無い。ましてや、一年最後の試合であるグラス決めの一戦で、上位の成績を取得したA.B.Cクラスの内のCクラスのお前達には、我々教員以外にも大きな期待が掛かっている。その分プレッシャーも大きいはずだ」
十河先生の言うとおり、俺たちは一年最後の試合、クラス決めの一戦で、格上な【スパーク】というチームに当たり、苦戦しながらも1人とも犠牲を出さずに勝利を納めた。正直、格上相手に1人も犠牲を出さずにすんだのは奇跡と言っても過言ではない。恐らく、俺の目、【ファルコン】の身体、【シルフ】の狙撃、そしてそれら全てを繋ぐ【D】の『EXC』のコンボが、相手にとっては最悪な組み合わせだったのだろう。
そうやって勝ち上がってきた上位のもの達が集まっているA.B.C組の人は、教員以外、つまり政府からの期待がドット押し寄せてくるのだ。今のこの時代、『超能力者』は宝石なんかよりも数十倍もの価値がある。それは、誰もが否が応でも感じてしまうことの一つだ。
今から約50年前2036年8月16日、世界は2/3の大陸と68億人の人類を失った。
その日に何が起こったのか、それを詳しく知る者は現在一人も居ない。
単純に事を説明すると、その日に太陽系以外の流星群が『突如』地球の周回軌道上に現れた。当時、今は跡形も無くなったNASAからの情報によると、「まるで、いきなり何処からか現れた、そう、次元ホールみないなものから突然現れた。気づいた時にはもうなす術は無く、ただ地球にぶつからない事を祈るばかりだ」と記されていたらしい。
その祈りとは裏腹に、周回軌道上に乗ってしまった103という膨大な数の流星群は真っ直ぐ地球へ向かい、発見されてから僅か一時間十五分程度で86もの流星群が地球に衝突した。
そのうち40近い数の流星群はアメリカ大陸に直撃し、一瞬にして壊滅。残りは特に決まった場所に落ちず、大陸やら海やら落ちれるとこには次々に落ちていった。
流星群が衝突してから僅か五分でアメリカ大陸は地図から姿を消し、死者は35億人にも及んだ。
次に来たのは海に落下した流星群による津波だった。津波の高さは最低でも30mは超えており、聞いた話だとMAXは200mを超えていたとも言われていた。
そして、流星群が地球に衝突してから一時間、津波が発生してから四十五分、たったそれだけの時間で60億人の人類が死へと誘った。
そんな巨大津波で生き残った大陸は、中国近辺、オーストラリア、南極大陸、そして日本だ。
驚きなのは、その中で唯一無被害だったのが日本という事。島国でありながら、一番津波の被害が加わる場所でありながら、津波による被害、流星群による被害ともに0なのである。
その訳はは後にわかる事であろうが、人類の破滅への道はまだ始まったばかりだった。
「だからと言って、常にバリバリに固めてしまった緊張の糸程切れやすい物はない。何処かで一旦緩めてないと簡単に切れてしまうし、そもそも常に緊張感を持てば持つ程自然と体力も消費する。そんな事ではいざ、という時に力を発揮できずに下位クラスに落ちてしまうぞ」
十河先生が言った下位クラスに落ちるという意味はそのままで、この学園『PTC』は二年次生になると二ヶ月に一度の割合で上位クラスA.B.Cと下位クラスD.E.Fとの間でクラス入れ替えバトルが行われる。対戦相手の選び方は完全にコンピューターによるランダムで、相手の実力に左右される事は絶対に無い。だから、上位クラスの成績優秀者と下位クラスの成績劣等者という組み合わせもあるが、上位クラスの成績劣等者と下位クラスの成績優秀者との組み合わせもあるのだ。前者の場合は既に勝敗は見えてるが、後者の場合になるとクラス入れ替えの可能性が多いに出てくる。よって、この二ヶ月毎の入れ替えバトルは、単に強さだけでは無く『運』も持ち合わせてなくてはならない厳しいバトルなのだ。
因みに、これを最初に提案した人曰く、「運も味方に付けられるような人で無くては、とても上位クラスには入らせない」と言ったらしい。確かに一理あるが、この場合、単に実力だけでは勝ち上がれない仕組み故に、一度下に落ちた者は中々上がってこられない。下位クラスには非常に厳しいシステムになっている。
(だから、一年の時のクラス決めの時はみんな必死だったんだ。何たって、実質上一度下に落ちた者は基本的に上には上がれないのだから)
勿論、下位クラスが上位クラスと同じ教育受けているはずが無く、そこは普通の学園と同じように上位クラスは基本よりも応用を、下位クラスは応用よりも基本をベースに教え込まれるのだから、同じ教育時間でも、たった二ヶ月程度で実力差はかなりの差が出来てしまう。そんな環境下の元のクラス替えバトルは、下位クラスの者にとっては希望でもあり、同時に実力差を嫌と言うほど見せつけられる地獄の場とも化す。何とも酷な話だ。
こんなシステムだから、当然過去に下位クラスの者が対戦相手を指定をするという不正を行った事もある。
ランダムに決めているのはコンピューターであるからには、ハッキングしてプログラムを乗っ取りさえしてしまえば、自分の相手を指定する事など容易い。勿論、そんな事をする者は開発者も考案者も考えているのは当たり前で、対ハッキング対策には相当な力を注いだ。
具体的には、スパコンが50年は破れない程のセキュリティと聞いたような気がする。
だが、もしその下位クラスの者の中に機会を操るミディライザーがいたとしたら、それはスパコンの比ではない。それによって破られたセキュリティは、その者によって自由に操られたと聞く。
因みに、その者達は10日程で暴露てしまい、『PTC』退学と言う思い罰を受けた。それにより、今この瞬間にコンピューターにハッキングをかけて対戦相手をコントロールしてしまおうと考える愚か者は一人も居ないだろう。暴露て退学になってしまっては元も子もないのだから。
「だから、今みたいな時は緊張なんかせずリラックスしていろ。緊張感を持つのは訓練、試合、実戦の時くらいで充分だろう。まぁ、常日頃緊張感を持たないのもどうかと思うぞ、尾崎」
名指しされた尾崎という男は、指名されたという驚きよりも、何故俺が?という疑問から席を立ち上がった。
「な、何で俺だけ名指しなんですか先生!?」
「じゃあ、俺が言っていた事を簡単に説明してみろ」
「うーん」とワザとらしく唸りながら考える姿勢をとる尾崎という男は、何か閃いたように話し始めた。………え、閃いた?
「カレーうどんとは」
「いや、違うだろ」
「なにっ!?まだ冒頭すら話してないのにっ!?」
いや、さっきの会話の何処からカレーうどんを拾って来たのか聞きたいのだが。
「これからカレーうどんについて暑く、そして神秘的な会話をする予定だったのに………(しゅん)」
「カレーうどんの何処に神秘的な要素があるのか気になるが、と言うか赤ら様に落ち込むな」
「だってぇ、カレーうどんがぁ………」
「いや、知らねぇし。と言うか、お前はさっきまで一体何を考えていたらカレーうどんになったんだ?」
「え?いやぁ、女の子のパンツってどうやったら合法的な理由で見れるかなぁって」
((((カレーうどん関係ねぇぇぇえええ!!??))))
全員同じ感想を叫んでいる事は皆は勿論の事、尾崎という男も知らないであろうが、何故かこの時尾崎以外の人間はきっと皆同じ事を思っているに違いないと確信を持てた。もしかしたら、これがこのクラス初めての団結だったのかもしれない。一人省くが。
「はぁ………、俺がお前に話しかけた事がバカだった」
「それ何気に酷くねっ!?」
「煩い、黙れ、カス、人間の恥じっ!」
「俺の存在っ!?」
などと十河先生と尾崎が馬鹿なやり取りをしている内に鐘がなり、SHRの終了の知らせを教える。先生は最後に軽くまとめた後「けして、尾崎のような緊張の抜き方だけはやめろよ」と言って、重いため息を零しながら教室を後にした。あいつのようにリラックスというよりダラけている事なんてしない、と言うより出来ねぇよと思いつつ、あんな風に天真爛漫に生きられたらどれだけ楽なのやらと同時に羨ましくなる自分だが、「うへへ、褒められちまったぜ」とドヤ顔を隠す事無く周りに見せびらかすあいつを見た瞬間、自分がどれだけアホだったか思い知らさせた。
そんなこんなで2-C初のSHRが無事?終わり、それぞれ友達、と言うよりは恐らくチームメイトの所に集まり、話を始めた。