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4月27日(水) エメラーダ

 モテる男は辛いね。でも、怖がられるよりは良かったんじゃないか。何でも803号室の子達は、毎週一回、自分達の身の回りにいる男達について人気投票を行ってるらしいけど、先週はお前の名前が第3位にランクインしたってさ。ちなみに1位は、彼女達と昔に共演したヒュー・ジャックマンが不動らしいから、気に病まなくていいと思う。

 何にせよ、初恋で胸を焦がしてる妖精を傷つけるのは止めてやれよ──お前のいう通り、妖精達の行動力と思い切りの良さは、驚嘆すべきものだから。


 ミス・メロン・ボールは、救いようのないほど迂闊だ。最後まで黙っておけば良かったのに……それに、彼氏の方も馬鹿だな。窓から飛び降りようとするなんて、芝居かかってる。しかも外へ体を出したはいいけど、思い切りがつかずに桟へしがみついてるなんて、最高にみっともない。

 あの時お前が俺の足首を掴んでくれなかったら、危なかった。助かったよ。俺は庇へ着地できただろうけど、そうなるとあの男の体を手離すことになっただろうから。ミイラ男の体は乾燥して脆弱だし、あの高さから地面へ叩きつけられていたら、ひとたまりもなかったはずだ。

 彼女のあれ、生配信だったよな? 俺達もとうとう動画デビューか。何だか気恥ずかしい。

 それにしてもあのBF、自分から彼女を寝取った男に命を救われたなんて知ったら、今度こそ本気で自殺しちゃうかも。


 この前死んだ市会議員令嬢の訃報が新聞に載ってた。ということは、ミス・バラクーダもきっと、灰になったんだろう。

 吸血鬼も大変だな。その点、CPは群れるって概念がほとんどないから気楽だ。

 デトロイトのリトル・ロムルス界隈で、俺の家族は少数派だったけど、お前のお袋さんはいつだって他の種族にも親切だった。俺が泊まりに行った日の翌朝は、いつでもトーストにバターをたっぷり塗りなさいって言ってくれてさ。

 彼女は自分の皿から減らしてでも、他者に食事を分け与えてくれた。お前も色々思うところはあるだろうけど、これがアルファの狼なのかって、俺は感心してたよ。


 キョンシーの護符、見つかって良かった。従業員総出で探し回ったからすぐ済んだけど(ベッドと壁の間に落ちてたなんて、あんまり陳腐な気がする)俺、キョンシーとはあんまりやり合ったことがないから、もしもの時は殺しちまってたかもしれない。

 連中はあの後、無事に全員で観光に出かけた。渋滞に巻き込まれたから、戻りが明け方ギリギリになりそうって連絡あり。


 613号室の客はルームサービスで、チキンスープと熟成血液のボトルをオーダー。もしかして、まだ吸血鬼に生まれ変わってないんだろうか。その割にはさっき連れ出したエスコート・ガール達、2人ともしっかり血を吸われていたけれど。


 711号室のミスター・ベラーノ、今更タピオカチーズティーにハマってて、今日だけでも2度オーダーを入れてきてる。カエルの卵だと思ってるのかも……さっきタピオカを水で戻しておいた。頻繁に注文があるけど、忘れずに支払へ付けとけよ。

 そもそもちゃんと払えるのかな、もう3回くらい、督促でドアを蹴破って脅しつけたことがあるだろう。

 というか、そんなに好きなら、自分で材料を買って作った方が安上がりなのに。

 

 気候も良くなってきたし、週末から3日ほど山へ行ってこようかと思う。寒さで縮こまっていた体を解すのに、アカディア国立公園はうってつけだ。オッター・クリークを天辺まで登りきって、北大西洋の水平線へ沈む夕陽と、それに照らされる鮮やかな桃色の花崗岩を眺め渡せば、きっと心も晴れ晴れと澄み渡ることだろう。


 まだシフトは出てないから、それを確認次第になるけど、幾つか勤務を交代してくれないかな。その代わり今度お前が何かあったら俺が代わりにタイムカードを押すから。お土産だって買ってくるよ。リストを渡してくれてもいいし……あそこってメイン州か。名物って何なんだろう?


$2,803.04

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