表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/110

11月12日(土) アコーダンス

 猫を連れ歩くのは勝手だが、ジレに思い切り白い毛がついたままフロントに立ってるのはよくないだろ。靴とか髪型へ気を遣う前に、ちゃんと身だしなみを整えろよ。


 サバを食ったのか。馬鹿め、引っかかりやがったな。お前が俺の部屋へ来るたびに盗み食いするから、ここのところ一番いい魚はクーラーボックスへ入れて隠してある。お前が見つけたのは囮のセール品だ。

 Netflixの設定は今日仕事へ来る前にお前の部屋に行って設定しなおしておいた。帰ったらテレビを確認しろ。


 210号室の絨毯の汚れについては、取り敢えずピサンから立て替えてある。トーピードに連絡したが返信がない、顔を合わせ次第徴収すればいいだろう。彼女はその辺り、吝嗇じゃない。

 ミスター・モナコはすっかり己の行動を恥じ入っていたが、なにせ金を持っていないからな。そして純粋だ、いわゆる箱入りって奴さ。それが今やこんな場末の、夜歩く者たちの溜まり場で逃げ隠れだからな。しかもすっかりトーピードへ翻弄されている。


 一体どこで嗅ぎつけたのか……いや、恐らく俺のスマートフォンを盗み見たんだろう。フリッパーが待ち伏せして、ホテルへきたサンジェルマンモーニに突っかかっていった。もちろんサニーは逞しい人魚だから、易々と返り討ちだ。投げ飛ばされたフリッパーがぶつかって、フロントの観葉植物の鉢が割れた。弁償金は俺が出してある。


 1309号室の客は隣がうるさいからと苦情を言ってきたので1305号室へルームチェンジ。1310号室は知っての通りミスター・イムホテップが宿泊中だが、ずっと連れの女性が啜り泣いているらしい。肉体的な暴力は受けていないようだが、だからこそ悪質だ。

 今回の相手は、あんなミイラ男、簡単にやっつけてしまえそうな健康的なハーピーだが、チェリーと同じだな。そういう男に限って、女の自立心を挫こうとする。そういう奴らだから、と言った方が正しいか。自分に自信がない男は女を虐げるものだ。


 509号室でアスピリンのオーダーがあったから薬局に行った。その時に、昼に行ったジャマイカ料理店で置いてきた手袋を受け取ってきたから、お前は退勤の時に寄らなくていい。

 言っただろう、あのフィッシュティーは絶品だ。アズールの知り合いも一時期修行していたことがあるらしい。

 

 今の時期から寒い寒いと言っていたら身体が保たないぞ。もうあの電子懐炉を使ってるのか?

 この前も俺が電話しなきゃ遅刻してただろう。そろそろ事務所へストーブを出さないかとクロックに進言したが、あいつは雑種吸血鬼だから気温に鈍感だ。ロベルタもマルキもまだ平気だと言っていた。お前も男なら気合いで何とかしろ。


 もっとも、気温が下がったからネズミやゴキブリが減っているのは助かるが。シルキー達の呼び出しを受けることも少ない。4階の廊下に、恐らく消化器と思しき何かの一部が点々と落ちていたと報告があったが、それもちゃんと掃除が完了している。内臓は404号室の前からスタートしていたそうだ。客は人狼、全く品性を疑う、嘆かわしい。しかも被害者の男は恐らく、グリーンドア・エスコート・サービスから派遣されてきたコールボーイか。話が拗れないといいが。


 涼しさのおかげでゾンビ・ウイルスの繁殖も抑えられるから、今月に入ってからはSRで復活することも少ない。久しぶりに拘束用の鎖と切断用の斧を磨いておいた。


 固いものを噛んで痛むなら肩こりじゃなくて虫歯だろう。歯医者へ行け。お前は昔から医者が嫌いで、何度か失敗してるのに、いつまで経っても学ばない。それこそガキの頃だって、頬が腫れるたびに俺の家へ逃げ込んできちゃ、お袋さんに襟首を掴まれて引きずっていかれ、挙句歯をドリルで削られてニャーニャー泣き喚いてたじゃないか。まさか今でも歯医者が怖いとか言うなよ。


$1,247.31

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ