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罪滅ぼしは終わりました。ここからは幸せになります!  作者: ミカン♬


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15 フレイヤとの再会

 黒いローブの人物が、静かにジゼルの額へと指先を当てた。


「呪いは解けている。やはり幸運だね、この子は」


「呪い? なんのことだ?」


「ジェリコム侯爵家は、この子をどうしても不幸にしたいらしい。残酷なこった」


「フレイヤ様?」


 突然、ジゼルが体を起こし、その名を呼んだ。

 聞き覚えのある声。だが今のフレイヤは7年前よりも若々しい姿をしている。


「お前! 眠っていなかったのか」

「お茶を飲んだフリをしていたの」

 握られていた手を振り払おうとしたが、クレスは離さなかった。


「その髪はどうしたんだ?」

「何でもありません、気のせいです」

「まあいい。ジゼル、お前はずっと俺に従ってきた。今回も受け入れろ」


「嫌です」

 怯えも、迷いも捨てた瞳には、きっぱりとした拒絶が浮かぶ。


「どうして? お前は俺の為ならなんだってやるはずだ。俺を愛してるんだろう?」


「いいえ。呪いが解けてから、はっきりと分かったんです。

 あなたは、愛される資格のない冷酷なクズだった」


「なっ!」


 ジゼルはそのまま、母と妹へ視線を移した。


「私の家族もクズだった。

 ミシェルの婚約の為に、私を生け贄にするなんて。

 ――でも、もう誰の為にも、私は犠牲にならない」


「生け贄だなんて! お姉様は公爵家に引き取られるんだから、私が侯爵夫人になっても良いじゃないですか!」


 両親も、同じ願いだったのだろう。

 呪いの有無にかかわらず、ジゼルが愛されることはなかったのだ。


 彼らが溺愛するのは、最初からミシェルだけだった。


 フレイヤが「フン」と鼻を鳴らす。

「うるさいねぇ。儀式が出来ないじゃないか」


「フレイヤ様、運命を入れ替える。それが前々世にも行われたんですね?」


「そうだ。先代のジェリコム夫人の元夫は呪いを受けて苦しんだ。なので呪いを移し、運命を入れ替えた。それがお前さんだ」


「やはり……自害した異母妹は私だった」

 ジゼルは一度、息を整えた。

「私は罪など犯していなかった。……それで、私以外の人は幸せになったんですか?」


「いいや」

 フレイヤは肩をすくめる。

「代償に寿命の残り半分を差し出した。誰一人長生き出来なかったさ」


「それに前々世のお前さんにも尋ねたんだよ?

 呪いを誰かに移してやるってね。でも、お前さんは断った」


「ええ。悪魔と取引なんてしないわ。

 あなたが呪いをかけ、それを利用して寿命を奪う。卑劣だわ」


「あたしはただの呪術師さ。呪いだって、頼まれたからやっただけだ」


 その会話に、クレスの顔色が一気に青ざめた。


「お前たち、一体、なにを言ってるんだ?」


「坊ちゃん」

 フレイヤがにやりと笑う。

「代償を差し出すのは当然さ。タダで幸せになろうなんて、甘いねぇ。不幸な一生より、幸福な半生の方がいいじゃないか」


「はっ!」

 クレスは鼻で笑った。

「俺は幸福な一生を選ぶ。いくらでも金は払うから、儀式を行え!」


 逃げようとするジゼルを、クレスが力ずくに押さえ込む。


 だが――


「うっ……ぐぅ……!」


 思わぬ反撃に、クレスは股間を押さえて背を丸めた。


「護衛さん! 助けて!」


 ジゼルが大声で叫んだ瞬間、廊下が騒がしくなる。

 同時に、ドアが蹴破られた。


 現れたのは、ナタリアだ。


「ジゼル、無事ですわよね?」


「はい、大丈夫です」


 次の瞬間、ニルトンが部屋へと投げ込まれ、床を転がる。


「に……逃げろ……」


「ひっ!」

 父の哀れな姿に、母と妹は抱き合った。


「あなた方の企みなど、お見通しですわ」

 ナタリアは優雅に微笑む。


「薬を入れたお茶は、入れ替えましたの。

 こちらのメイドはもう何人も買収済みですわ。ほほほほ」


 本当はアーノルドが手を回していたが、ナタリアは隠した。


「なんて恐ろしい女だ!

 ジゼル、いつかお前も酷い目にあわされるぞ! 俺の所に戻ってこい!」


「お断りです! 既に貴方とは無関係。

 私の罪滅ぼしは終わり。誰かに縋らなくても生きていけます!」


「お前……調子に乗りやがって……」


 慌ててミシェルが駆け寄る。

「クレス様! 私が婚約者ですよね?」


「お、お、俺はジゼルがいいんだ!」


「約束が違うわ……ひどいわぁああ!」

 ミシェルは泣き喚いた。


「メイナに手を出して、次はジゼルの妹?

 ホント、クズの極みね」


 詰め寄るナタリアに、クレスは慌ててフレイヤの背後へ隠れた。


「フレイヤ婆さん、あんたが何者でもいい。公女を呪え! 寿命なら、俺の為にジゼルが差し出す」


「坊ちゃん、呪っても無駄だ」


 フレイヤは淡々と告げる。


「彼女はもともと強運の持ち主。

 そして今や《幸運の星》を手に入れ、無敵となった。

 坊ちゃんが適う相手じゃないさ」


 そう言うなり、フレイヤは霞のように消えた。



 追い込まれたクレスはジゼルに縋った。


「俺は本当にお前を愛してるんだ。やり直そう、いいな?」


「お断りです」


「そんな!」



「私を呪うですって⁉ 上等ですわ」


「ち、ちが……」


 ドガッ‼


「ぐはっ!」


 パンパンと手を払い、ナタリアは護衛に命じた。

「この外道を縛り上げて、ジェリコム侯爵家に送り返しなさい」

 

「伯爵には、親子の縁を切らせました。両家は法的制裁も覚悟なさい!」



 ジゼルは実家に裏切られた事より、

 犯罪者ではなかったことの喜びのほうが大きかった。


「懺悔の必要はない。私は本当に自由になったんだわ」


 

読んでいただいて、ありがとうございました。

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