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もしもの話⑥:ふたりの挙式

ソファに並んで座りながら、

ひかりは雑誌をぱらぱらとめくっていた。


表紙も、中も、白。

レースと光と、幸せそうな笑顔。


「……ねえ、見て」


ひよりに向けて、雑誌を少し傾ける。


「私さ」

「こんなウェディングドレス、着てみたい」


海が見える教会。

高い天井。

光が差し込むステンドグラス。


「で、そこで式あげるの」

「ベールは長めで」

「指輪の交換して……」


夢の話は、止まらない。


ひよりは、雑誌とひかりを交互に見てから、ぽつり。


「……ベタだね」


「ベタでいいの!」


即答だった。


「王道って、安心するじゃん」

「人生で一回くらい、ちゃんと夢見たい」


ひよりは少し考える。


「……まあ」

「ひかりは、そういうの好きそう」


「でしょ?」


ひかりは満足そうに頷いてから、

ふと真顔になる。


「……で」


「相手は?」


ひよりの一言で、

ひかりの動きが止まった。


「…………」


ページをめくる指が、宙で止まる。


「……あれ?」


「……あれ、だね」


ひよりは淡々と続ける。


「相手、浮かんでないでしょ」


「うぐっ……」


ひかりは言葉に詰まる。


「い、今はそういう話じゃなくて……」

「式の話で……」


「でも」

「式には、相手いるよ」


正論だった。


ひかりは視線を泳がせてから、

苦し紛れに言う。


「ひよりだって」

「結婚したい相手、いないでしょ」


「……いない」


即答。


「じゃあ、同じ」


「同じ、かな」


「同じ同じ」


そこで、ひかりがふっと顔を上げる。


「……じゃあさ」


「だったら」

「ふたりで式あげよっか」


ひよりが瞬きをする。


「……は?」


「ふたりで」

「ウェディングドレス着て」


さらっと言った。


「相手いない同士だし」

「一緒にいるし」

「式だけなら、別にいいじゃん」


「よくないと思う」


即答だけど、声は強くない。


「……ドレス、二着?」


「そう」

「色違いでもいいし」


「……誰が、見るの」


「私たち」


ひよりは、しばらく黙った。


想像してしまったのが、

ちょっと悔しい。


白いドレス。

並んで立つ二人。

なぜか、違和感がない。


「……変だよ」


「今さら?」


ひかりは、にやっと笑う。


「ひよりが言う?」


「……それは、そう」


ひよりは小さく息を吐く。


「でも」

「私は、ドレス似合わないと思う」


「似合う」


即答。


「絶対」


「……根拠」


「ひよりだから」


意味はない。

でも、ひかりは本気だった。


ひよりは、雑誌にもう一度目を落とす。


「……考えとく」


「ほんと?」


「考えるだけ」


「進歩!」


ひかりは嬉しそうに笑った。


結婚も、相手も、

まだ現実味はない。


でも。


「……ひかり」


「なに?」


「ふたりで式あげるなら」

「私は、後ろでいい」


「なんで?」


「目立つの、苦手」


「じゃあ私が前」

「ひよりは、隣」


「……それは、まあ」


完全否定は、できなかった。


夢みたいな話を、

冗談みたいに話せる距離。


それだけで、

今は十分だった。

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