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もしもの話④:なんとかならなかった

休日。

三人で、ショッピングモールに来ていた。


「必要なものだけね」


そう言いながら、

結局いちばん長く足を止めたのは、玩具売り場だった。


「……あ」


ひよりが、小さく声を出して立ち止まる。


棚に並んだプラモデル。

箱いっぱいに描かれたロボット。


「……これ」


指差すだけで、視線は離れない。


「……作るの?」


ひかりが、半歩引いた声で聞いた。


「……作れたら、いいなって」


「それ……できそうなやつ?」


ひよりは少し考えてから答える。


「……たぶん」

「ゆっくりやれば……」


ひかりは箱を手に取る。

ランナーの数。

対象年齢。


「これ、結構細かいよ?」


「……細かいね」


認めるのは早い。


それでも、買った。


帰宅後。

テーブルいっぱいに広げられるパーツ。


「えっと……」

「最初は、ここから?」


ひかりが説明書を覗き込む。


「……たぶん、そこ」


ニッパーを持つひよりの手が、途中で止まる。


「……ここ、切っていいのかな」


「そこじゃない気がする」


「……じゃあ、こっち?」


切った。


パーツが一つ、明らかに足りなくなる。


沈黙。


「……戻せない、よね」


「戻らないね」


ひかりも挑戦する。


「じゃあ、私もやってみる」


結果は、似たようなものだった。


パーツは合わない。

向きが違う。

なぜか余る。


「……これ」

「思ってたより、難しいね」


「……うん」

「なんとかならなかった」


二人で説明書を見つめたまま、動かなくなる。


その横で、

黙って様子を見ていたしずくが、静かに口を開いた。


「……貸して」


ひよりとひかりが、同時に顔を上げる。


「え?」


「しずく、作れるの?」


「……作れるよ」


淡々と、

ニッパーを取る。


無駄のない動き。

迷いがない。

説明書は一度見るだけ。


「え、そこから?」


「順番、違わない?」


「……合ってる」


数十分後。


テーブルの上には、

きれいに組み上がったプラモデル。


ひよりは、じっと見つめてから言った。


「……すごい」

「きれい」


ひかりは目を瞬かせる。


「……なんで、そんなにできるの?」


「小さい頃、よく作ってたから」


「聞いてない」


「……聞かれてなかったし」


正論だった。


ひよりは少し考えてから、ぽつりと言う。


「……最初から」

「しずくちゃんに、聞けばよかったかな」


「それは違う」


ひかりが、すぐに返した。


「え?」


「それは違うよ」


ひかりは、未完成のパーツとひよりを見る。


「“できるか分からない”のを」

「一回やってみたのが、大事」


「……壊れた」


「うん」


「……失敗した」


「うん」


「でも」


ひかりは少し笑う。


「楽しかったでしょ」


ひよりは、一拍置いてから頷いた。


「……うん」

「楽しかった」


しずくは、完成品をそっとテーブルの中央に置く。


「次は、最初から手伝おうか?」


ひよりは、首を振った。


「……次は」

「最初に、聞く」


「それでいい」


ひかりは、満足そうに笑った。


得意なことも、

できないことも、

三人とも、きれいにずれている。


でも、

一緒に失敗した時間は、

ちゃんと楽しかった。

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