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むかしばなし⑨:ひみつ

ママは、

ソファにスマホを置いたまま、

洗濯物を畳んでいた。


テレビでは、

またあの番組。


変身して、走って、決めポーズ。


ひよりは、

画面の前に座っている……はずだった。


静かすぎる。


(……あれ?)


振り返ると、

ひよりがソファの端に座っている。


ママのスマホを、

両手で持って。


「……なにしてるの?」


声をかけると、

びくっと肩が跳ねた。


「……なにも」


視線は、

画面から離れない。


(怪しい)


近づこうとした、そのとき。


スマホが、

ぴこん、と鳴った。


——パパから。


ママは、

画面を見る。


〈了解!〉

〈仕事帰りに寄ってくね〉


(……は?)


ひよりを見る。


ひよりは、

ゆっくり顔を上げて、

小さく言った。


「……ぱぱに」


「……おねがい、した」


「……なにを?」


少し間があって。


「……かっこいいの」


一瞬、

頭が追いつかない。


(……まさか)


ママは、

メッセージの履歴を開いた。


そこには、

短くて、たどたどしい文字。


〈ぱぱ〉

〈ひより〉

〈へんしんするの〉

〈かっこいい〉

〈ほしい〉


要点だけ。


思わず、

小さく息を吐いた。


「……勝手に触っちゃだめでしょ」


ひよりは、

しゅんとする。


「……ごめんなさい」


「でも」


ママは、

ため息をつく。


「……ちゃんと頼む相手、

 分かってるのは、

 ずるいわね」


ひよりは、

少しだけ首を傾げた。


「……ぱぱ、

 やさしい」


それは、

否定できなかった。


その夜。


玄関の音。


「ただいまー」


嫌な予感がして、

振り返る。


「はい」


差し出された袋。


中身を見た瞬間、

ひよりが跳ねた。


「かっこいい!!」


箱を抱えて、

嬉しそうに笑う。


パパは、

スマホを構える。


「記念だから」


動画を撮る。


ママは、

腕を組んだ。


「……ほんとに」


「どっちが親か、

 分からないんだけど」


そう言いながら、

止めはしなかった。


ひよりは、

夢中で変身ポーズを真似している。


ママは思う。


(この子、

 要領いいわね……)


(誰に頼めばいいか、

 ちゃんと分かってる)


それだけ。


深く考えるほどじゃない。


ただ、

ちょっと変わった子だな、

そう思っただけだった。

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