むかしばなし⑦:すきなもの
床に、
いろんなおもちゃが広がっていた。
箱から出されたばかりの、
変形ロボ。
腕が伸びて、
脚が折れて、
がしゃん、と音を立てて形が変わる。
ひよりは、
その前に正座していた。
「……ここが、こうなって」
カチ、と音がする。
「……つよい」
満足そうに、
ロボを立たせる。
その横で。
ひかりは、
ぬいぐるみを抱えていた。
丸くて、
やわらかくて、
目が大きい。
「ねえねえ、みて」
ひかりが、
ぬいぐるみを持ち上げる。
「かわいくない?」
ひよりは、
ロボから目を離さずに言った。
「……うごかない」
「えー?」
「……たたかえない」
ひかりは、
一瞬だけ考えてから言う。
「でも、かわいいよ?」
「……かわいくても、
まける」
ロボを持ち上げて、
ひよりは言った。
「……こっちは、
まけない」
ひかりは、
ロボとぬいぐるみを見比べて。
「……ひより、
へん」
「……そう?」
「だって、
それ、ぜんぜん
かわいくない」
「……でも、
かっこいい」
「かっこいいの、
どこ?」
ひよりは、
少しだけ考える。
「……つよいとこ」
ひかりは、
ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
「わたしはね」
「つよくなくても、
かわいいのが、すき」
「……ふーん」
しばらく、
それぞれのおもちゃで遊ぶ。
ロボが、
がしゃがしゃ音を立てる。
ぬいぐるみが、
ころん、と倒れる。
ひかりは、
ふとロボに目を向けた。
「……それ、
あそばせて」
ひよりは、
一瞬だけ手を止めてから、
ロボを差し出した。
「……こわれない?」
「だいじょうぶ!」
ひかりは、
慎重にロボを持つ。
「……へんなかたち」
「……へんじゃない」
「へんだけど、
なんか、
かっこいいかも」
ひよりは、
少しだけ嬉しそうだった。
今度は、
ひよりがぬいぐるみを見る。
「……それ」
「なに?」
「……やわらかい?」
「うん!」
ひかりは、
ぬいぐるみを差し出す。
ひよりは、
そっと触って。
「……あったかい」
それだけ言って、
返した。
「……すき?」
「……きらいじゃない」
ひかりは、
にっと笑う。
しばらくして、
ひよりがぽつりと言った。
「……でも」
ロボとぬいぐるみを、
交互に見る。
「……へんけいできる
ぬいぐるみが、あればいい」
ひかりは、
一瞬きょとんとしてから。
「……は?」
「……やわらかくて」
「……つよくて」
「……たたかえる」
ひかりは、
ぬいぐるみを抱いたまま固まる。
「……それ」
少し間があって。
「へんだよ、それ。
ぜったい」
「……へん?」
「へん!」
ひかりは、
大きく首を振る。
「だってさ、
ぬいぐるみは
ぎゅーってするものでしょ?」
「……うん」
「なのに、
ガシャってなって
ドーンってなるの、
おかしい!」
ひよりは、
少しだけ考える。
「……でも」
「……まもれる」
「まもる?」
「……かわいくて」
「……つよい」
ひかりは、
しばらく黙ってから言った。
「……それ、
かわいそうじゃない?」
「……え」
「だってさ」
ひかりは、
ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。
「かわいいのに、
たたかわされるんでしょ?」
ひよりは、
言葉に詰まる。
「……」
「……たしかに」
ひかりは、
勝ち誇った顔になる。
「でしょ!」
「だから、
へんけいぬいぐるみは、
だめ!」
ひよりは、
ロボを見てから、
ぬいぐるみを見る。
「……じゃあ」
「……ロボが
やわらかくなればいい」
「それも、
へん!!」
ひかりは、
思わず笑った。
ひよりは、
少しだけむっとする。
「……ひかりのほうが、
へん」
「なにー!」
二人の声が重なって、
部屋が少し賑やかになる。
その横で、
ロボとぬいぐるみは、
並んで転がっていた。




