むかしばなし⑥:いちばん後ろ
その日は、三人だった。
ひより。
ひかり。
それから、少しだけ年下の、しずく。
公園の端で、
ひかりが元気よく言った。
「きょうは、みんなであそぼ!」
「……なにするの?」
「かくれんぼ!」
「……また?」
ひよりはそう言ったけれど、
止めはしなかった。
しずくは、
二人の少し後ろに立っていた。
「しずくも、やる?」
ひかりが振り返る。
「……うん」
声は小さいけれど、
ちゃんと聞こえる。
鬼は、ひかり。
「いーち、にー、さーん……」
その声を背中に聞きながら、
ひよりは、周囲を一度だけ見回した。
高いところは見ない。
木にも近づかない。
代わりに、
遊具の影。
植え込みの奥。
色が重なって、目に残りにくい場所。
「……ここ」
遊具の裏。
影がいちばん濃いところに、
身体をすべり込ませる。
音は立てない。
動かない。
しずくは、
少し離れたところから、それを見ていた。
ひよりが、
さっきまでそこにいたはずなのに、
もう、いない。
(……きえた)
しずくは、
真似をしなかった。
ベンチの影に腰を下ろして、
足を引き寄せる。
「……ここでいい」
小さく言って、
動かない。
やがて。
「もー!
ひより、どこー!?」
ひかりの声が、近づいてくる。
しずくは、
息を止めた。
ひかりは、
遊具の周りを回る。
「……いない」
植え込みを見る。
「……いない」
フェンスのほう。
「……いない」
少し、困った顔をする。
「……ぜったい、
ちかくにいるのに……」
その間も、
ひよりは動かなかった。
見えないところで、
ただ、そこにいる。
しばらくして。
「……あ」
ひかりが、
影の重なりに目を留める。
「みーつけた!」
ひよりが、
ゆっくり姿を現す。
「……ばれた」
その声と同時に、
しずくもベンチの影から立ち上がった。
「……しずくも、いた」
「えっ!?」
ひかりが振り返る。
「いつから!?」
「……さいしょから」
「ずるい!」
そう言いながらも、
ひかりは笑っていた。
少し考えてから、
にっとする。
「じゃあさ」
「しずくは、
いちばんうしろね」
「……うしろ?」
「うん!」
「ひよりが前で、
わたしがまんなかで、
しずくがうしろ!」
しずくは、
少しだけ間を置いて、
頷いた。
「……うん」
それだけだった。
それから。
三人で歩くとき、
しずくは自然と後ろになった。
前にひより。
真ん中にひかり。
その少し後ろ。
理由は、
はっきりしていない。
ただ、
そこにいると、
二人がちゃんと見えた。
それで、
落ち着いた。
しずくは、
それ以上のことは考えなかった。
その場所が、
そのときの自分には、
ちょうどよかった。




