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むかしばなし③:あまいとからい

その日のおやつは、

テーブルの真ん中に置かれた、大きな箱だった。


「じゃーん」


ひかりが、誇らしげに言う。


「ケーキ!」


箱のふたを開けると、

生クリームたっぷりのケーキが並んでいる。


「いちご!」

「チョコ!」

「これ、ぜったいおいしいやつ!」


ひかりの目が、きらきらしていた。


「……」


ひよりは、

一歩だけ、下がった。


「ひより?」


「……」


「たべないの?」


ひよりは、

少し考えてから言った。


「……あまいの、にがて」


「えっ!?」


ひかりが、思わず声を上げる。


「ケーキだよ!?」


「うん」


「クリームだよ!?」


「……うん」


ひよりママが、苦笑いしながら言う。


「ひより、甘いのあんまり得意じゃないの」


「ええぇ……」


ひかりは、

信じられない、という顔で

ひよりを見る。


「おいしいのに……」


「……においが、もう、だめ」


「におい!?」


ひかりは、

自分のケーキをじっと見てから、

フォークを持った。


「……じゃあ」


少し考えて、

ひよりの前に差し出す。


「ひとくちだけ!」


「……え」


「ちっちゃいの!」


ひよりは、

しばらく迷ってから、

ほんの先っぽを口に入れた。


――次の瞬間。


「……っ」


顔が、固まる。


「……むり」


「え!?

 もう!?」


「……あまい」


「ケーキだから!!」


ひかりは、

半分怒っている。


「おいしいのに!!」


「……あまい」


ひよりは、

真顔で繰り返す。


ひかりは、

少し考えてから、

ひよりの皿を見る。


そこには、

袋に入った煎餅があった。


「……じゃあ」


ひかりは、

それを手に取って、首をかしげる。


「これ、なに?」


「からいやつ」


「……からい?」


「うん」


ひかりは、

警戒しながらも、

小さくかじった。


「……っ」


一拍。


「……からっ!!」


「でしょ」


ひよりは、

当たり前みたいに言う。


「唐辛子せんべい」


「なんでおやつに

 そんなの食べてるの!?」


「おいしいよ?」


ひよりは、

もう一枚、ぱりっと食べる。


ひかりは、

ケーキと、せんべいを

交互に見た。


「……ひよりさ」


「なに?」


「ほんとに、

 味覚どうなってるの……」


「そう?」


「そう!!」


ひかりは言い切って、

ケーキをもう一口食べた。


「……でも」


少し間を置いて。


「それでも、

 ひよりは、ひよりだね」


ひよりは、

よく分からないまま、

唐辛子せんべいを、

もう一枚かじった。

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