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むかしばなし⓪:はじめての日

公園のすみで、

ひよりは一人、うずくまっていた。


遊具のそばでは、

同じくらいの年の子どもたちが集まっている。


「なにそれー?」


「へんなみみ!」


「しっぽある!」


笑い声が重なって、

手が伸びてくる。


耳を引っ張られる。

しっぽを掴まれる。


「……やめて」


声は小さかった。


「やだー」


「だって、おもしろいじゃん!」


もう一度、

強く引っ張られる。


ひよりは、

身を縮めた。


「……やめて」


言葉は出る。

でも、止まらない。


そのとき。


「ちょっと!」


高い声が、

空気を切った。


「なにしてるの!」


子どもたちが、

一斉に振り返る。


そこに立っていたのは、

ひかりだった。


「やめなよ!」


「いやがってるでしょ!」


勢いだけじゃない、

まっすぐな声。


一瞬の間。


子どもたちは、

顔を見合わせてから、

そそくさと離れていった。


「ちぇー」


「つまんないの」


足音が遠ざかる。


公園に、

静けさが戻る。


ひかりは、

ひよりの前にしゃがんだ。


「……もう大丈夫だよ」


少しだけ、

距離をあけて。


ひよりは、

すぐには顔を上げなかった。


でも。


「……だいじょうぶ?」


もう一度言われて、

ゆっくり顔を上げる。


その瞬間。


ひかりは、

目を見開いた。


耳。

ふわっと揺れるしっぽ。


それから、

涙で濡れた目。


(……かわいい)


理屈じゃなかった。


「……すごい」


思わず、声が漏れる。


「みみも、しっぽも……」


「かわいい!!」


ひよりは、

きょとんとした。


今まで言われた言葉と、

まるで違う。


「……?」


ひかりは、

にこっと笑って言った。


「わたし、ひかり!」


「あさくらひかり!」


胸を張る。


「あなたは?」


ひよりは、

少しだけ迷ってから。


「……ひより」


「ひより?」


「……ひより」


ひかりは、

その名前を口の中で転がして。


「いいな!」


「ひより、だね!」


そう言って、

当たり前みたいに隣に座った。


距離は、

一歩分。


でも、

ひよりは逃げなかった。


それから。


二人が仲良くなるのに、

時間はかからなかった。

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