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第22話 雨の中で

雨が降っていた。


細かく、

でも止む気配のない雨。


ひよりは、

傘も差さずに歩いていた。


濡れていることは分かっている。

寒いことも、分かっている。


でも、

それを気にする余裕はなかった。


名前を、

何度も呼ぶ。


返事はない。


通り過ぎる人は、

一瞬だけこちらを見るが、

すぐに視線を逸らす。


誰も、

止めない。


誰も、

一緒に探さない。


――当たり前だ。


これは、

自分たちの問題だ。


ひよりは、

足を止めずに進む。


駅前。

商店街。

学校の近く。


思い当たる場所を、

片っ端から。


息が切れる。

喉が痛い。


それでも、

立ち止まらない。


頭の中で、

しずくの声が何度も響く。


なんで、

ひよりねぇは、

それに気づかなかったの……!!


胸の奥が、

きしむ。


――違う。


言い訳が、

浮かびかけて、消える。


違わない。


自分は、

気づけなかった。


気づこうとしなかった。


「大丈夫」という言葉を、

信じる方を選んだ。


その方が、

楽だった。


ひよりは、

歯を食いしばる。


雨が、

視界を曇らせる。


それでも、

前を見る。


――まだ。


まだ、

間に合う。


そう言い聞かせる。



気がつくと、

足は自然と、

川沿いの道に向かっていた。


街灯が、

雨に滲んでいる。


人通りは、ほとんどない。


ひよりは、

走り出した。


心臓が、

耳の奥で鳴る。


――お願い。


――まだ、

そこにいて。


名前を、

喉が裂けそうになるまで呼ぶ。


そのとき。


遠くに、

人影が見えた。


街灯の下。


動かない影。


ひよりは、

一瞬だけ、足を止める。


怖さが、

胸を掴む。


でも、

次の瞬間には、

また走っていた。


近づく。


距離が、

縮まる。


――ひかり。


確信が、

胸に落ちる。


ひよりは、

息を吸い込んだ。


大きな声で、

名前を呼ぼうとする。


その瞬間、

空から落ちてくる雨粒が、

どこか、

違って感じられた。


冷たさが、

刺さるように変わる。


ひよりは、

それに気づく余裕もないまま、

前へ進む。


そこに、

確かに、

ひかりがいた。

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