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選ばれる資格がない平民ですが、貴族の彼が世界ごと選び直しました ~婚姻制度に拒まれた私を、彼は最後まで手放さなかった~  作者: 水城ルナ


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第6話 公の拒絶

 王都評議会は、いつもより静まり返っていた。


 貴族たちが一堂に会し、国家の未来を決定する場。

 婚姻登録の最終確認は、形式的な儀式に過ぎない――はずだった。


「では次に、アルヴェイン公爵家嫡男、レオン・アルヴェイン様の件に移る」


 議長の声が響く。


 私は、その場にいない。

 地方行きの準備を理由に、すでに記録院を離れていた。


 だから、この瞬間を知るのは、ずっと後になる。

 けれど――ここで、すべてが動き出した。


「候補者は、東方伯家の令嬢、エステラ・ローレン嬢。

異論がなければ、仮登録とするが――」


「異論がある」


 その声は、はっきりとしたものだった。


 ざわり、と空気が揺れる。


「アルヴェイン様?」


 議長が、驚きを隠せずに問い返す。


「これは既に――」


「理解している」


 レオンは、一歩前に出た。


「理解したうえで、異論を唱える」


 貴族たちの視線が、一斉に集まる。


「俺は、この仮登録を拒否する」


 一瞬、時間が止まった。


「……理由を」


 議長の声が、低くなる。


「簡単だ」


 レオンは、迷いなく答えた。


「俺が選ぶ相手は、別にいる」


 会場が、どよめいた。


「ば、馬鹿な……」

「まさか、あの噂は本当だったのか」


 議長が、慎重に言葉を選ぶ。


「その相手は……登録対象者か?」


 それは、最後の確認だった。


 ここで「はい」と言えば、制度の中で処理できる。

 だが――


「いいや」


 レオンは、首を振った。


「登録資格は、ない」


 一気に、騒然となる。


「正気か!?」

「平民だとでも言うのか!」


 怒号が飛ぶ中、レオンは一歩も引かない。


「その通りだ」


 はっきりとした肯定。


「平民で、資格がない。

だからこそ、この制度は間違っている」


 議長が、机を叩いた。


「感情論だ!

婚姻登録は国家制度だぞ!」


「だからこそだ」


 レオンの声は、冷静だった。


「国家制度が、人を排除する理由になっているなら、見直す必要がある」


「戯言を!」


 貴族の一人が叫ぶ。


「未来を予測できぬ者を、どうして国の中枢に置ける!」


「予測できぬから危険だというのか」


 レオンは、鋭く問い返す。


「では聞こう。

これまでの予測は、すべて正しかったか?」


 沈黙。


 誰も答えられない。


「多くの災害、失政、外交の失敗。

それらはすべて、“正しい未来予測”のもとに起きた」


 淡々と、しかし確実に突き刺す言葉。


「それでも君たちは、予測不能な存在を切り捨てる」


 レオンは、視線を巡らせた。


「俺は、その“予測不能”を選ぶ」


 議長の顔色が変わる。


「……それが最終判断か」


「そうだ」


 即答だった。


「ならば、処分は避けられない」


 議場の空気が、重く沈む。


「地位の一部凍結。

婚姻登録権の一時剥奪。

それでも、拒否するか」


 普通なら、ここで折れる。


 だが、レオンは微笑った。


「問題ない」


 その笑みは、どこか晴れやかだった。


「俺は、すでに選んでいる」


 そして、最後にこう言った。


「選ばれない存在を切り捨てて成り立つ未来など、俺はいらない」


 ――その日。


 王都に、一つの噂が広がった。


 アルヴェイン公爵家嫡男は、

 平民の女のために、未来を捨てた。


 だが、それは真実ではない。


 彼は、未来を捨てたのではない。

 選び直したのだ。


 その頃、私は王都の外れで、馬車に揺られていた。


 何も知らずに。


 ただ一つ、胸の奥に残る不安だけを抱えながら。


「……嫌な予感がする」


 理由は分からない。

 でも、心臓が、やけに強く脈打っていた。


 ――このまま、終わるはずがない。


 そんな気がしてならなかった。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


次の投稿からは、1日1回の更新になります。


ブックマークをして、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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