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選ばれる資格がない平民ですが、貴族の彼が世界ごと選び直しました ~婚姻制度に拒まれた私を、彼は最後まで手放さなかった~  作者: リリア・ノワール


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第16話 選ばれる資格の、その先で

 評議会の最終決定は、静かに、しかし確実に下された。


「――以上をもって、

 婚姻登録制度および、

 制度外人材の登用基準を改定する」


 議長の声が、円卓の中央に響く。


 私は、レオン様の隣に立っていた。

 今回は、一歩後ろではない。

 並んでだ。


「血統・家格のみを基準とする旧制度を廃し、

 責任と実績をもって評価する新基準を導入する」


 その言葉に、ざわめきが広がる。


 誰もが分かっていた。

 これは、一人の平民のためだけの決定ではない。


 けれど――

 始まりは、確かに私だった。


「なお」


 議長が、視線をこちらに向ける。


「リナ・エルフェルトを、

 正式に“記録監理官”として任命する」


 一瞬、息が止まった。


「婚姻登録においても、

 資格の有無は、本人の責任能力をもって判断する」


 それは、制度が私を認めた瞬間だった。


 ――ようやく、追いついた。


 評議会が終わった後、回廊に出ると、空気が軽かった。


「……終わりましたね」


 私がそう言うと、レオン様は小さく笑った。


「ああ」


「長かったです」


「短かったとも言える」


 彼は、こちらを見る。


「君が逃げなかったからな」


 胸が、少しだけ熱くなる。


「……逃げなかったのは」


 一歩、近づく。


「あなたが、選び続けてくれたからです」


 彼は、首を振った。


「違う」


 低く、穏やかな声。


「俺が選び続けられたのは、

 君が立ち続けたからだ」


 一瞬、言葉を失った。


 その評価を、ずっと欲しかったわけじゃない。

 でも――


 心の奥で、何かが静かに満たされた。


 数週間後。


 王都は、少しずつ変わり始めていた。


 制度はすぐには変わらない。

 反発も、戸惑いも、当然ある。


 それでも。


「……この判断、助かりました」

「前例ができたのは、大きい」


 そんな声が、少しずつ増えていく。


 私は、机に向かい、記録をまとめながら思った。


 選ばれない世界だったからこそ、

 見えたものがあった。


 排除されていたからこそ、

 拾えた声があった。


 それは、もう――

 “資格がない”という言葉では、切り捨てられない。


 夕暮れ時、屋敷の庭で、彼と並んで歩く。


「……結婚は」


 ふと、彼が言った。


「急がなくていい」


 私は、驚いて彼を見る。


「え?」


「制度は変わった」


 穏やかな声。


「だが、選ぶのは俺たちだ」


 胸が、じんわりと温かくなる。


「君が、今の仕事を大切にしたいなら、

 俺は待つ」


 その言葉に、思わず笑ってしまった。


「……本当に、待つのが得意ですね」


「君相手なら」


 少しだけ、照れたように視線を逸らす。


「いくらでも」


 私は、立ち止まって、彼を見る。


「……では」


 はっきりと言う。


「一緒に、歩いてください」


 結婚という形でなくても。

 役割に縛られなくても。


「選び続ける、という形で」


 彼は、驚いたように目を瞬かせ、

 そして、ゆっくりと微笑んだ。


「ああ」


 迷いのない声。


「それが、俺の望んだ未来だ」


 夜、窓辺に立ち、王都の灯りを見下ろす。


 かつては、遠く感じていた光。

 今は、足元に続いている。


「……選ばれる資格がない世界、か」


 小さく呟き、首を振る。


 そんな世界は、もうない。


 少なくとも――

 私たちは、そこから一歩、外へ出た。


 隣を見ると、彼がいる。


 変わらない。

 けれど、確かに変わった。


 選ばれない世界で、

 それでも、選び続けた恋。


 その先で、

 ようやく、二人は同じ場所に立った。


 ――これからも。


 選ぶのは、私たちだ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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