第14話 私が選ぶ未来
公開評議会から三日後。
王都は、妙な静けさに包まれていた。
否定も、称賛も、はっきりとした声は聞こえない。
まるで世界が、次にどう転ぶべきか、息を潜めているようだった。
「……嵐の前、ですね」
執務室の窓から外を見下ろしながら、私は呟いた。
「そうだ」
レオン様は、机に置かれた一通の書簡を指で叩く。
「評議会は、結論を先延ばしにしている」
「決められない、ということですか」
「決めたくない、が正しい」
彼は、苦く笑った。
「君を認めれば、制度を変えなければならない。
だが、排除すれば……現場が黙らない」
私の胸に、静かな決意が芽生えた。
「……だから、最後に」
顔を上げる。
「選択を、こちらから差し出すんですね」
彼は、私を見つめた。
「分かっているな」
「はい」
息を吸う。
「このままでは、私はずっと“判断待ちの存在”です」
選ばれるか、切り捨てられるか。
そのどちらかを待つ立場。
「それは、もう嫌です」
はっきりと言えた。
「私は、私の未来を――私自身で選びます」
その日の午後、私は評議会へ、正式な書簡を送った。
内容は、短い。
私は、特例・例外・庇護のいずれも求めません。
私が望むのは、
資格の有無ではなく、責任の明確化です。
私は、結果に対して責任を負う立場として、
正式に職務を請け負います。
それが認められない場合、
私は王都を離れ、
制度の外から人々を支える道を選びます。
それは、事実上の最後通告だった。
受け入れるか。
それとも、失うか。
世界に、選択を突きつけた。
「……行くつもりか」
書簡を送った後、レオン様が静かに尋ねた。
「はい」
私は、頷いた。
「もし、拒否されたら」
一瞬、言葉を切る。
「私は、あなたの隣に“いられない場所”を選びます」
胸が、少しだけ痛んだ。
「あなたを縛る存在には、なりたくありません」
彼は、長い沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。
「……それが、君の選択なら」
声は、低く、穏やかだった。
「俺は、止めない」
胸が、きゅっと締め付けられる。
「だが」
一歩、近づく。
「忘れるな」
私の目を、まっすぐ見る。
「君がどこへ行こうと、
俺が選ぶ未来に、君はいなくならない」
その言葉に、思わず息が詰まった。
「……ずるいですね」
小さく笑うと、彼も僅かに笑った。
「今さらだ」
翌日。
評議会から、返答が届いた。
封を切る手が、少し震えた。
「……どうだ」
レオン様が、静かに問う。
私は、書簡を読み終え、顔を上げた。
「……受理、されました」
声が、かすれる。
「正式職務として、期間限定の試行採用。
結果次第で、制度を再定義する……と」
一瞬、沈黙。
そして――
「やったな」
彼が、心から安堵したように息を吐いた。
「いいえ」
私は、首を振る。
「まだ、始まっただけです」
でも、その表情は、晴れていた。
「それでも」
一歩、彼に近づく。
「私は、自分で選びました」
選ばれることを、待たなかった。
自分の未来を、自分で掴みにいった。
彼は、静かに微笑んだ。
「それでこそ、俺が選んだ人だ」
その夜、私は一人、窓辺に立っていた。
王都の灯りは、以前よりも少し違って見える。
怖さは、まだある。
不安も、消えてはいない。
それでも。
「……進める」
小さく、呟く。
選ばれない世界で、
それでも――
私は、私の未来を選んだ。
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