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選ばれる資格がない平民ですが、貴族の彼が世界ごと選び直しました ~婚姻制度に拒まれた私を、彼は最後まで手放さなかった~  作者: リリア・ノワール


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第13話 私は、ここに立つ

 その招集は、逃げ場のない形で行われた。


「公開評議会……?」


 通達書を見た瞬間、胸の奥が冷えた。


「そうだ」


 レオン様は、静かに頷く。


「今回は、裏で済ませる気はないらしい」


 公開評議会。

 貴族、官僚、記録官、そして一部の市民代表が傍聴する場。

 そこで議題に上げられるということは――


「見せしめ、ですね」


「ああ」


 彼は否定しない。


「君を、“例外を拒んだ平民”として晒すつもりだ」


 喉が、ひくりと鳴る。


 怖くないと言えば、嘘になる。

 でも、不思議と足は震えていなかった。


「……行きます」


 そう言った自分の声は、驚くほど落ち着いていた。


 彼が、こちらを見る。


「無理をするな」


「無理ではありません」


 私は、はっきり言った。


「逃げないと、決めたので」


 彼は、少しだけ目を伏せ、やがて頷いた。


「分かった」


 そして、低い声で付け加える。


「隣には、俺がいる」


 公開評議会の場は、重苦しい緊張に包まれていた。


 中央に設けられた円卓。

 その周囲に、評議員たちが並ぶ。


 私は、レオン様の一歩後ろに立っていた。


「議題に入る」


 議長の声が響く。


「平民リナ・エルフェルトの、制度外活動について」


 視線が、一斉に私に集まる。


「あなたは、特別顧問の提案を拒否した」


 淡々とした指摘。


「理由を、述べなさい」


 一瞬、場が静まり返る。


 私は、一歩前に出た。


 自分でも驚くほど、頭が冴えていた。


「はい」


 声は、通った。


「私は、その提案が“選ばれた形”ではないと感じたからです」


 ざわ、と空気が揺れる。


「どういう意味だ」


 評議員の一人が、眉をひそめる。


「特別な立場を与えることが、不満か」


「いいえ」


 私は、首を振った。


「私は、立場が欲しいのではありません」


 一瞬、息を吸う。


「私は、“責任を持って選ばれる”ことを望みました」


 会場が、静まる。


「例外として囲われるのではなく」


 言葉を、選びながら続ける。


「同じ基準で見られ、

 それでも必要だと判断される存在でありたい」


 評議員の一人が、鼻で笑った。


「平民が、貴族と同じ基準で?」


「はい」


 即答だった。


「結果で、示します」


 その言葉に、ざわめきが広がる。


「結果とは、何だ」


 議長が、低く問う。


「私が関わった判断で、救われた現場があります」


 私は、事前に用意していた資料を差し出した。


「災害回避、外交摩擦の未然防止、

 過去記録の再検証による政策修正」


 紙が、円卓を回っていく。


「それらはすべて、

 “制度の想定外”を拾い上げた結果です」


 評議員たちが、黙って資料を読む。


「私は、制度を壊したいわけではありません」


 視線を、真っ直ぐ前に向ける。


「制度が見落としてきた部分を、補いたいだけです」


 一瞬の沈黙。


 そして、低い声が落ちる。


「……では問おう」


 議長が、こちらを見る。


「あなたは、アルヴェイン公爵家の庇護がなくても、

 同じことができると?」


 その問いに、胸がきしむ。


 でも、逃げなかった。


「はい」


 そう答えた。


「私は、誰かの庇護下にある“道具”になるつもりはありません」


 会場が、息を呑む。


 その時だった。


「その答えで、十分だ」


 レオン様が、前に出た。


「彼女は、私のために立っているのではない」


 はっきりとした声。


「自分の意思で、ここに立っている」


 彼は、私を見る。


「それが、俺が選び続ける理由だ」


 その言葉に、胸がいっぱいになる。


 議長は、しばらく黙ってから、ゆっくりと口を開いた。


「……即断はできない」


 当然だ。


「だが」


 一拍置いて。


「あなたを“排除対象”として扱う判断も、

 本日をもって保留とする」


 完全な勝利ではない。


 でも――


 私は、確かにここに立っていた。


 選ばれない世界の中で、

 自分の足で。


 評議会が終わった後、回廊で立ち止まる。


「……怖かったです」


 正直に言うと、彼は小さく笑った。


「だろうな」


「でも」


 顔を上げる。


「逃げませんでした」


 彼は、少しだけ目を細めた。


「ああ」


 静かに言う。


「君は、もう隣に立つ人間だ」


 その言葉が、何より嬉しかった。


 だが、分かっている。


 これは、終わりではない。


 世界は今、

 選ばれない存在を、どう扱うか

 本気で考え始めただけだ。


 そして、その答えは――

 もうすぐ、出る。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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