003
ケントはゆっくりと周囲を見渡した。
前も、後ろも、右も、左も――
何もない。
果てしなく続く砂、砂、砂。
「……はは」
思わず笑ってしまった。
「すごいな。マジで何もない」
普通なら絶望する状況だ。
だがケントは肩をすくめた。
「ま、考えても仕方ないか。前に進むしかないだろ」
彼は何も気にせず、ただ前へ歩き始めた。
それから5時間後。
足は重く、喉はカラカラ。
太陽はまだ容赦なく照りつけている。
「……さすがにキツいな」
ケントはシステムを開いた。
しかし表示されたのは――
何もなし。
「え? マップも? クエストも? ……ゼロ?」
思わず叫ぶ。
「おいおい、そりゃないだろ!」
腹が鳴った。
グゥゥゥ……
「はは……腹も減ったし、もう無理だ」
ケントはその場に倒れ込むように座り、砂の上に横になった。
「少しだけ……寝るか」
……その時。
「グルルル……」
低く、不気味な音。
ケントの目が一気に開いた。
「ん?」
彼は瞬時に立ち上がる。
そして――見えた。
3匹のハイエナ。
鋭い牙、飢えた目。
明らかに“獲物”を見る視線だった。
普通なら恐怖で動けなくなる場面。
だが――
ケントは、笑った。
「ははっ……なるほどな」
ナイフを構えながら言う。
「腹減ってるのは、俺だけじゃないってわけか」
その笑い声に、ハイエナたちが一瞬たじろぐ。
「来いよ」
次の瞬間、1匹が飛びかかってきた。
ケントは軽く身をかわし――
ザクッ!
首元にナイフを突き立てる。
「キャンッ!!」
短い悲鳴。
ハイエナはその場に崩れ落ち、動かなくなった。
残りの2匹は、完全に怯えた。
「……おっと、逃げるのか?」
ハイエナたちは背を向け、全力で走り出す。
ケントは少し追いかけたが――
「はは、いいや。1匹で十分だ」
彼は立ち止まった。
砂の上に倒れた死体を見下ろし、満足そうに笑う。
「今日は運がいい日だな」
彼の目には恐怖などなかった。
この世界を――
ゲームとして、楽しんでいる目だった。




