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002- 砂漠スタート

熱。


それが、健人が最初に感じたものだった。


灼熱の空気が肌を焼き、熱い風が無限に続く砂の海を吹き抜ける。

目を開いた瞬間、視界いっぱいに広がったのは――どこまでも続く砂漠だった。


「……なんだよ、これ!?」


思わず叫んだ声は、だだっ広い空間に吸い込まれていく。


木はない。

建物もない。

人影すらない。


あるのは、砂だけ。


「なんでこんなに何もないんだ……それに、なんで俺は砂漠なんだよ!?」


気持ちを落ち着かせるため、健人はシステムを呼び出した。


半透明の画面が表示され、ミニマップを開く。


それを見た瞬間、胸が重くなった。


――砂漠のど真ん中。


目印なし。

セーフゾーンなし。

何も表示されていない。


試しに一歩踏み出すと、ミニマップがゆっくりと広がり、新しい地形が描かれていく。


「……移動しないと、地図は増えないのか」


つまり。


完全な孤立状態。


健人はインベントリを開いた。


大きなウィンドウが表示される。


中に入っていたのは、わずかなアイテムだけだった。


ナイフ。

ロープ。

そして――


「……ビキニ?」


思わず目を疑う。


「は? ビキニ? なんだよそれ……ふざけてんのか?」


だが、システムは何も答えない。


自分の体を見ると、現実世界とまったく同じだった。

防具なし。

初期装備なし。

守るものは何もない。


太陽が、容赦なく照りつける。


汗が、頬を伝って落ちた。


「……この暑さ、危険だな」


周囲に誰もいないことを確認し、健人は判断した。

シャツとズボンを脱ぎ、下着だけになる。


先のことは分からない。


今は、生き残ることが最優先だった。


その時――


砂が、動いた。


ザリッ、と嫌な音。


健人の体が固まる。


砂丘の下から現れたのは、巨大なサソリだった。

黒い甲殻が太陽を反射し、尾は高く持ち上がり、毒の滴る針が揺れている。


「……まあ、そう来るよな」


健人はナイフを握りしめ、低く呟いた。


視線は、サソリの尾に向けられる。


「毒、か……」


その瞬間、インベントリの中の“ビキニ”が目に入った。


ひらめき。


「……いけるかもな」


健人はビキニを投げつけた。


布がサソリの尾に絡みつき、毒針の動きを封じる。


「よし!」


反応する前に、ナイフを投げた。


外れた。


「チッ……問題ない」


拾って、また投げる。


もう一度。


さらにもう一度。


――十回。


サソリは悲鳴のような音を上げ、動きが鈍くなり、やがて砂の上に崩れ落ちた。


完全に動かなくなる。


健人は肩で息をしながら立ち尽くし、ぽつりと呟く。


「……楽勝だな」


その時、システムメッセージが表示された。


アイテム獲得:サソリの尾


通知を見て、健人は小さく笑った。


「……生き残った、か」


果てしない砂漠の真ん中。


ナイフ一本。


ロープ一本。


そして、ビキニ一着。


それでも――


健人は、まだ生きていた。

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