表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

8.それは御伽噺

誤字,脱字報告受け付けております。見つけた際は遠慮なく報告して頂けると幸いです。

感想,レビュー等大歓迎です。

ブックマークも是非お願い致します。

 

 丸投げされたリリーナは呆気にとられた後,苦笑していたキャサリンに向き直る。

「……そうですね。此処の方々は,私の中の獣人のイメージとかなり違いました」

 少し思案した後そう述べると,キャサリンは小さく頷いた

「確かに他所よその人には,獣人は独立不羈どくりつふきな種族だと思われてる。でも実際は違って」

 そこで一度言葉を切った後,キャサリンは『ゆめ』を撫でてから続ける。


「……獣人って,凄く臆病なの。遠い昔,何度も人類に滅ぼされかけて,その時の生き残りの子孫だから。こんな砦みたいな国になったのも,それが理由なんだって」

 それは,リリーナは本で読んだことのある歴史だった。

 全く知らない上に興味もあまりないベリーは,目が合った『ゆめ』と部屋の隅で遊び始めている。

「……私は師に,誇り高き獣人は我々人間が気に食わなかったから戦を起こした,と習ったのですが……」

 困惑気味に述べると,キャサリンは少し首を傾げた後,慎重に言葉を選ぶように何度か頷いた。

「……もしかしたら,獣人か人間が,過去を塗り替えようとしているのかもね」

 今までみたいに距離を取って過ごしていたら,互いに伝わっている歴史の違いなんて気付かないだろうし と続けて,キャサリンは微笑を浮かべる。

「……でもまぁ,そういうことも獣人の中で軋轢あつれきを生む原因だったのかもね」

「……獣人は仲が悪いの?」

『ゆめ』と部屋の中を駆け回っていたベリーが足を止めてそう問うた。

 キャサリンは逡巡しゅんじゅんするように目を彷徨さまよわせた後,小さく頷く。

「うん。獣人には結構種類があって。神狼国ヴェステリエに住む“狼の子孫である獣人”である私達や他の数種族は,なるべく人間と関わらない生活を望んだけど,“蛇の子孫である獣人”とかは人間と敵対することを選んだの」

 そこで一度言葉を切って,表情をわずかに陰らせた。

「……異例なのは“鳥の子孫である獣人”で,彼等は魔王軍と手を組んだ」

 部屋の雰囲気が凍りつく。

 ベリーが動きを止めて,目を瞬いた。

「……魔王軍と?」

「そう。……貴女達は魔王軍と何か関係があるの?」

 無邪気な少女にしか見えないベリーが反応したことに驚いたのか,思わずそう問う。

 それを見たリリーナは小さく溜息をついた後,少し前の出来事を話し始めた。


「……つまり,ベリーはグラッセリアの王女ってこと? それで,魔王討伐の旅に出てる……?」

 若干困惑しつつ,キャサリンは内容を咀嚼そしゃくするように頷く。

 王女だと知っても態度を変えないのは,単に彼女にとっては『ゆめ』より偉い者は存在しないからだろう。

「……いや,グラッセリアっていう人間の国が魔王軍に侵略されたっていうのは聞いてたんだけど,どの辺かも知らなかったから」

 口の中で転がすように呟いた後,寄って来た『ゆめ』を撫でた。

 彼女特有の落ち着き方なのか,大きく息を吐いた後,リリーナ達に向き直る。

「貴女達の事情はわかった。けど私がどうこういう話でもないし,気にしないことにする。まぁでも,私達はあまり魔王軍のことを良く思っていないから,そこは安心してほしい」

「私達も別に神狼国ヴェステリエが敵になる,とかは考えていませんから……」

 リリーナが微笑んで答え,話に区切りをつけた。

 キャサリンは一度肩の力を抜いた後,『ゆめ』にココアを飲ませようとしていたベリーの頭をはたいてからリリーナを見る。

「……あと,何か話してないことってある?」

「……神狼国ヴェステリエの場所について,まだ聞いてません。地図上の場所と大きくズレているのは何故です?」

 リリーナが地図を広げて問うと,キャサリンは思い出したように答えた。

「さっき話してた,獣人は臆病って話に繋がっていて。この国って,動くの」

「……動く?」

 ベリーとリリーナの声が重なる。

 それに対して,キャサリンは平然とした表情で続けた。


「この国は空を飛んで動いてるの。だから何処にでも現れるし,何処を探しても見つからないの。そうやって何百年も,人間との接触を避けてきた」

「……空飛ぶ城ならぬ,空飛ぶ国……?」

 沈黙した部屋に,ベリーの呟きが静かに溶けた。


最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:最初は『ゆめ』にココアを飲ませようとしたんですが,キャサリン本人に断固拒否られました。犬はココア駄目らしいです。

追記:タイトルの漢字は「おとぎばなし」ですよ,ベリーさん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ