8.それは御伽噺
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丸投げされたリリーナは呆気にとられた後,苦笑していたキャサリンに向き直る。
「……そうですね。此処の方々は,私の中の獣人のイメージとかなり違いました」
少し思案した後そう述べると,キャサリンは小さく頷いた
「確かに他所の人には,獣人は独立不羈な種族だと思われてる。でも実際は違って」
そこで一度言葉を切った後,キャサリンは『ゆめ』を撫でてから続ける。
「……獣人って,凄く臆病なの。遠い昔,何度も人類に滅ぼされかけて,その時の生き残りの子孫だから。こんな砦みたいな国になったのも,それが理由なんだって」
それは,リリーナは本で読んだことのある歴史だった。
全く知らない上に興味もあまりないベリーは,目が合った『ゆめ』と部屋の隅で遊び始めている。
「……私は師に,誇り高き獣人は我々人間が気に食わなかったから戦を起こした,と習ったのですが……」
困惑気味に述べると,キャサリンは少し首を傾げた後,慎重に言葉を選ぶように何度か頷いた。
「……もしかしたら,獣人か人間が,過去を塗り替えようとしているのかもね」
今までみたいに距離を取って過ごしていたら,互いに伝わっている歴史の違いなんて気付かないだろうし と続けて,キャサリンは微笑を浮かべる。
「……でもまぁ,そういうことも獣人の中で軋轢を生む原因だったのかもね」
「……獣人は仲が悪いの?」
『ゆめ』と部屋の中を駆け回っていたベリーが足を止めてそう問うた。
キャサリンは逡巡するように目を彷徨わせた後,小さく頷く。
「うん。獣人には結構種類があって。神狼国に住む“狼の子孫である獣人”である私達や他の数種族は,なるべく人間と関わらない生活を望んだけど,“蛇の子孫である獣人”とかは人間と敵対することを選んだの」
そこで一度言葉を切って,表情を僅かに陰らせた。
「……異例なのは“鳥の子孫である獣人”で,彼等は魔王軍と手を組んだ」
部屋の雰囲気が凍りつく。
ベリーが動きを止めて,目を瞬いた。
「……魔王軍と?」
「そう。……貴女達は魔王軍と何か関係があるの?」
無邪気な少女にしか見えないベリーが反応したことに驚いたのか,思わずそう問う。
それを見たリリーナは小さく溜息をついた後,少し前の出来事を話し始めた。
「……つまり,ベリーはグラッセリアの王女ってこと? それで,魔王討伐の旅に出てる……?」
若干困惑しつつ,キャサリンは内容を咀嚼するように頷く。
王女だと知っても態度を変えないのは,単に彼女にとっては『ゆめ』より偉い者は存在しないからだろう。
「……いや,グラッセリアっていう人間の国が魔王軍に侵略されたっていうのは聞いてたんだけど,どの辺かも知らなかったから」
口の中で転がすように呟いた後,寄って来た『ゆめ』を撫でた。
彼女特有の落ち着き方なのか,大きく息を吐いた後,リリーナ達に向き直る。
「貴女達の事情はわかった。けど私がどうこういう話でもないし,気にしないことにする。まぁでも,私達はあまり魔王軍のことを良く思っていないから,そこは安心してほしい」
「私達も別に神狼国が敵になる,とかは考えていませんから……」
リリーナが微笑んで答え,話に区切りをつけた。
キャサリンは一度肩の力を抜いた後,『ゆめ』にココアを飲ませようとしていたベリーの頭を叩いてからリリーナを見る。
「……あと,何か話してないことってある?」
「……神狼国の場所について,まだ聞いてません。地図上の場所と大きくズレているのは何故です?」
リリーナが地図を広げて問うと,キャサリンは思い出したように答えた。
「さっき話してた,獣人は臆病って話に繋がっていて。この国って,動くの」
「……動く?」
ベリーとリリーナの声が重なる。
それに対して,キャサリンは平然とした表情で続けた。
「この国は空を飛んで動いてるの。だから何処にでも現れるし,何処を探しても見つからないの。そうやって何百年も,人間との接触を避けてきた」
「……空飛ぶ城ならぬ,空飛ぶ国……?」
沈黙した部屋に,ベリーの呟きが静かに溶けた。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:最初は『ゆめ』にココアを飲ませようとしたんですが,キャサリン本人に断固拒否られました。犬はココア駄目らしいです。
追記:タイトルの漢字は「おとぎばなし」ですよ,ベリーさん。




