7.犬の王国
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「……改めて,紹介するね。この子がゆっちゃんで,私はキャサリン・エストルワール。神狼国の住人」
そう言って,少女__キャサリンは『ゆめ』を撫でる。
ベリー達のことが視界に入っているのかは怪しいが,キャサリンはそのまま続けた。
「……貴女達がゆっちゃんを攫ったんじゃなくて,保護していたっていうのはわかった」
徐ろにそう告げ,謝罪の意で頭を下げる。
「気にしないで! 此方こそ,この子の飼い主さんが見つかって良かった」
ベリーが明るく答えると,キャサリンはホッとしたように笑みを浮かべた。
「……それで,お礼もしたいから,神狼国に招待しても良い?」
そう言って,キャサリンは突然現れたまま沈黙している砦に視線をずらす。
「……構いませんが,一つ質問しても?」
ベリーが頷こうとすると,リリーナがそれを遮ってそう問うた。
キャサリンが首を傾げて続きを促すと,リリーナも砦に視線を投げる。
「……地図上では,神狼国は此処からかなり離れた丘の上にある筈です。どうしてこんな所に……?」
その言葉に,キャサリンは少し困ったように眉を下げた。
「それなんだけど,あんまり部外者には話せないの。此処じゃなくて,中で話しても良い?」
リリーナがそれに頷いたのを見て,キャサリンは少し開かれた門の隙間から中に入る。
実際に開門するのは手間がかかるのだろう,と納得しつつ,ベリーは後を追った。
「わぁ……! 犬が沢山!」
目の前に広がる光景に,ベリーが歓声を上げる。
その言葉の通り,神狼国は狼を神として祀る国なだけあり,そこら中に様々な犬がいた。
歩いたり談笑したりと,思い思いに過ごしている人々も,半数以上が犬耳と尻尾を持つ獣人のように見える。
「そりゃそうでしょ。神狼国はゆっちゃんの国なんだから」
キャサリンが自慢気に胸を張る。
正確には『ゆめ』の国ではなく犬の国なのだが,興奮しているベリーはそれを軽く聞き流した。
「……キャサリンお姉ちゃん,その人達……誰?」
不意に後ろから声がかかる。
ベリー達が振り向くと,ベリーより少し年下くらいの見た目をした獣人の子供達が,警戒するような表情を浮かべていた。
それを見て,リリーナは獣人は独立不羈の精神が強い種族だということを思い出す。
僅かに焦りが浮かんだリリーナに気付いてか,キャサリンは一度視線を宙に投げた後,子供達と視線を合わせた。
「この人達は,ゆっちゃんを助けてくれたの。だからご招待したんだよ」
そう言って抱き抱えていた『ゆめ』を撫でると,子供達の顔が明るくなる。
「ゆっちゃん様だ! いなくなってたんだっけ?」
「ゆっちゃん様を助けてくれたってことは,良い人なの?」
「……ゆっちゃん様?」
ベリーがきょとんとしてそう呟くと,キャサリンが得意そうに笑った。
「……そう呼ばせてるんですよ,多分」
リリーナが小さく答えると,ベリーは納得したように頷き,視線を漂う雲に向けた。
「……神狼国の中心部を通って来たけど,どうだった?」
賑わっていた街から少し離れた森の中にある小さな家に入って,休憩しているベリー達に,キャサリンがそう問う。
出されたココアを飲みながらくつろいでいたベリーは,我に返ったように目を瞬いた。
「えーとね,犬が沢山いた」
「それは最初の方にも言ってました」
間髪入れずツッコミが飛び,ベリーは考え込むように頬に手を当てた後,リリーナを見る。
「……ベリーは『丸投げ』を使った!」
ベリーは満面の笑みでそう言って,手に持ったままだったココアを飲み始めた。
最後までご覧頂きありがとうございます。
一言:やってまいりました犬の王国。ちなみに『ゆめ』を様付けで呼んでいるのは,ほぼ実話です。




