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5.迷子の子犬さん

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 長く果てしなく続く道を少し進んだ頃。

 ベリーの腕の中で,子犬は安心しきった顔で眠っていた。

 時々小さな鼻を動かし,尻尾を振っている。

 ベリーはそっと頭を撫でながら呟いた。

「楽しい夢でも見てるのかなー? ……この子,本当に何処から来たんだろう?」

「今考えているところだから待ってください」

 リリーナはそう答えながら,子犬の首元をそっと持ち上げて確認した。


「……ほら、見てください」

 ベリーは首を傾げながらリリーナの指先に視線を向ける。

 小さな宝石で彩られた,雷型の金属プレートのついた首輪があった。

 プレートは少し泥で汚れていたが,丁寧に磨かれた跡が残っている。

「わぁ……可愛いね!」

 リリーナは頷きながら,土を払う。文字が見えるようになった。


『ゆめ』


 名が刻まれていた。


 子犬__『ゆめ』は目を覚ましてベリーを見上げ,心細げに鳴いた。

「……やっぱり,この子……誰かに大切にされてたんだね」


 リリーナは頷き,ベリーの肩に手を置く。

「……飼い主さんに何かあったのかもしれないし,この子は現に怪我をしていたけど……」

「……返してあげたい」

 ベリーはリリーナの言葉を遮るように言った。


 蜂蜜色の瞳が,迷子の子犬を優しく見つめる。


「きっと飼い主さんも泣いてる。……そんなの悲しい」

 飼い主,という言葉に,『ゆめ』がピクリと揺れた。


 リリーナはそれを見て,仕方なさそうに微笑む。

「魔王領に向かいつつ,飼い主さんを探しましょう」

 ベリーは嬉しそうに笑って,尻尾を揺らす『ゆめ』を優しく撫でた。



 更に歩き続けること数日。

 『ゆめ』は二人の旅路にすっかり馴染んでいた。

 突然爆音__ベリーが食材を爆発させた音__が聞こえても微動だにしない。

 ある意味鉄の精神を身に着けていた。


「……ベリー,この辺りの地図は覚えてますか?」

 ふと自分で作った朝食を食べながら,リリーナが呟く。

「……ほぁ?」

 コテンと可愛らしく首を傾げるが,明らかに考える気すらない態度だった。

「……この辺りに《神狼国ヴェステリエ》があるのは?」

 呆れたように質問を変えると,ベリーはあからさまに考え込むような仕草を見せてから,ぽんと手を打つ。

「犬が沢山いる国?」

「そうです。何が言いたいかはわかります?」

 ベリーはまた少し考え込むような仕草を見せ,『ゆめ』を見た。

「…………この子の飼い主さんが,いるかも知れないってこと!?」

「そういうことです」

 ベリーが納得したというように頷き,リリーナが満足そうに答える。

「……ただし,一つ問題があります」

 リリーナが思い出した様にそう告げると,ベリーは頭上に疑問符を浮かべた。

「……神狼国ヴェステリエは,国民の殆どが獣人,又はその血を継いでいる“獣化出来る人”なんです」

「? それは凄いね」

 いまいち問題点がわからないのか,首を傾げたままのベリーに,リリーナは困ったように続ける。

「……獣人やその子孫は,独立不羈どくりつふきの精神が強く,他所よそからの来訪者はあまり歓迎されない国として有名なんですよ」

「……えーと……つまり,私達が行ったら警戒されちゃうかもってこと?」

「そういうことです」

 リリーナが頷くと,ベリーが僅かに青褪めた。

「……じゃあ飼い主さんに会わせてあげられない!?」

 リリーナが重々しく頷く。

「ど,どうしよう……」

 あからさまに慌て始めたベリーに,『ゆめ』は不安そうな表情を浮かべた。

「……子犬さんが可哀想ですよ。責任持って飼い主さんの所に届けますからね」

『ゆめ』の表情に折れたのか,リリーナが呆れたように笑う。

 ベリーは何度か瞬いた後,挑戦的に笑った。

「勿論。入れないかどうかなんて,その時考えれば良いんだから」

 ポジティブ思考に任せて,二人は神狼国ヴェステリエに向かう。


 長く平坦な道には終わりが見えない。

 飽きてきたのか,ベリーが振り返ってリリーナに何かを問おうとする。


 次の瞬間,目の前に巨大な雷が落ちた。



最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:『ゆめ』の飼い主探しの旅の始まり。……終わりそうですけどね。

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― 新着の感想 ―
やっとゆっちゃん出てきた!! 次はキャサリンだな( •᷄ᴗ•́) 面白かったざます! コテン?って我ながらかわいい♡ 漢字読めたよ!【完】
2026/01/14 19:23 ベリー本人
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