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4.初めての遠出

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 元は王宮の正門だった所に,生き残っていた国民が勢揃いしていた。

 ベリーの召使いは二人しか残っていない。


「……姫様が魔王を討伐に行かれると伺いました。くれぐれもお気をつけて……」

「姫様なら帰ってきてくださると信じています。お転婆てんば姫様なら出来ますよ!」

 口々に別れの挨拶を述べる面々に,ベリーは小さく笑う。

「大丈夫。絶対魔王を倒して帰って来るよ。また皆で,美味しいお菓子を食べよう?」


 別れの挨拶は簡単に済ませて,ベリーとリリーナは旅立つ。



「冒険〜! 楽しみだな〜!」

 先程までとは打って変わって,ベリーは跳ねながら満面の笑みを浮かべる。

 リリーナは呆れて物も言えないという表情で頭を抑えつつ,ベリーのキャラメル色の髪を掴んで止めた。

「落ち着いて。まずは色々説明したいから」

 ベリーは不満そうに口を尖らせつつ,大人しくなる。

「まず,その中に入れた物の説明ね」

 そう言いながら,ベリーの動きやすそうな膝丈のドレスにつけている袋を指差す。

 一見小さく軽いが,魔術がかけられているため,使う魔力によって内容量が変わるものの,いくらでも入れることが出来る。

 リリーナは一覧表をベリーに渡しながら,一つずつ説明していった。


 迷子になっても良いように,ベリーの居場所がわかるアクセサリーに,防寒対策のキャラメル色のコート。その他身を守る為の防具や,山のような毛布と苺の抱き枕。料理道具と料理道具と料理道具。


「……料理道具は置いていけって言わなかった?」

「聞こえなかったもん」

 リリーナは深く溜息を付いてから,「邪魔にならないなら良いけど」と呟いた。



 暫く歩いていると,ベリーはハッとしたように周囲に視線を巡らせる。

 首を傾げるリリーナに,草の茂みを指差した。

「……あの後ろに何かいる」

「……魔物?」

 リリーナが杖を構えて戦闘態勢になる。

 次の瞬間,茂みから黒い小さな影が飛び出した。

「図鑑に載ってたちっちゃい魔物!」

 ベリーが叫ぶ。それと同時に,ベリーの手から魔力が飛び出した。

「……ん?」

 リリーナがいぶかしげに眉をひそめる前で,魔力が巨大なクッキーの盾を生み出す。

 飛び出してきた魔物は派手にぶつかって転げ落ちた。

「え? あれ?」

 困惑するベリーは,咄嗟にクッキーを消す。

 最初の姿に戻った魔力は,突然棒状の飴になって,魔物に突き刺さった。

「……えー……」

 呆然とする二人の前で,魔物は黒いきりになって消えていく。

「……ベリー?」

「ごめんなさい」

 ベリーが直ぐ様土下座体制に入る。

「……ベリーの料理の才能,こっちに行っちゃってるのかもね」

 呆れたような言葉が,ベリーにかなり深く刺さった。


 のんびりとした空気が満ちている所で,またもや茂みが揺れる。

「……また魔物?」

 リリーナが警戒すると,ベリーは首を傾げて近付いた。

 その瞬間,茂みが割れてポーンと何かが飛び出してくる。

 それは茂みを覗き込んでいたベリーに直撃し,ベリーは大きく仰け反る。

「ちょっ……!? 大丈夫!?」

 リリーナが慌てて駆け寄ると,ベリーは笑ってみせた。

 その手には茶色いふわふわした……子犬が抱えられている。

「……飛び出してきたのって……その子?」

「うん。この子怪我してる。さっきの魔物に襲われたのかも……」

 ベリーが子犬の足を指差してそう言う。

 リリーナは少し困ったように眉を下げつつ,指先に魔力を集中させ,子犬の足に治癒魔法をかけた。

「わぁ! ありがとうリリーナ!」

 ベリーが満面の笑みで感謝を述べると,リリーナは苦笑する。

「……それで,この子どうするの?」

「……この子飾りが付いてるから,誰かの子犬さんだよ」

 ベリーが子犬の首元を示してそう答えた。

「……見捨てる?」

 リリーナは答えなんて分かっているが,一応問う。

「まさか。飼い主さんを探すよ。この子毛並みが綺麗だから,きっと凄く大切にされてるはず」

 当然,というように笑うベリーの瞳は,太陽の光を受けて明るく輝いていた。


最後までご覧頂きありがとうございます。

一言:一瞬で主人公達の距離感が変わりました。原案はこれなんです。

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